MR(医薬情報担当者)だって恋します!
「塩屋先生、シルビルナもお願いします」
私は怒りを殺して言った。
「シルビルナ? さっき原口君と約束したからねえ」
私は抑えていた何かがプツンと切れるのを感じた。
「先生、私は患者さんのためになると思って営業をしています。いい薬だと自負してます。なぜ処方していただけないんですか? 一日4カプセル飲むより一錠の方が飲みやすいのに、なぜうちの薬より大川製薬さんのばかり処方するのですか?」
「なぜっていろいろあるんだよ」
私の口は止まらない。
「大川社の原口さんとは個人的に仲がいいですよね? だからですか? おかしいと思います」
私の言葉に塩屋先生が私の方を向いた。
「薬の良さでなく……」
私の言葉を塩屋先生が遮る。
「お前ね、誰にものを言ってるのかわかってんの? MRが医師の処方に口出しできると思ってんのか! いい加減にしろ!」
塩屋先生の大きな声が医局に響いて、医局に入ろうとしていたドクターとMRが医局の入り口で立ち止まる。
私は塩屋先生の剣幕に呆然と立ちつくしていた。
「ふん」
塩屋先生は私の方を見ずに医局から出て行き、残された私は、大きな失敗をやらかしたのだけは分かった。