MR(医薬情報担当者)だって恋します!

 今野さんに電話をすると、今野さんは支店に戻ろうとしているところだった。

『塩屋先生を怒らせた?』

 今野さんの焦った声に私の心臓が冷たく痛んだ。

『そ、それはまずいな。……とりあえず支店に帰っておいで。午後一緒に謝りに行こう』

 今野さんに言われて、私は一瞬考えた。午後からでは遅い気がした。

「あの。私一人でまず謝らせてください。今から行ってきます」

 今野さんはしばらく黙っていたが、

『謝罪だけにできるかい? さらに怒らせることはないようにね』

 と言ってくれた。

「わかりました。行ってきます」

 私は塩屋先生の部屋に急いだ。一度深呼吸して、ノックする。
 返事がない。
 もう一度だけノックしたが、塩屋先生はいないようだった。
 ああ。
 力が抜けた。安堵からか失望からか分からない溜息が出る。
 その時だった。橘先生の部屋のドアが開いた。
 どきりとして見ると、橘先生と目が合った。

「どうした? 珍しいな。塩屋の部屋の前にいるなんて。塩屋は今、病棟だと思うぞ」
「そう、ですか……」
「何かあったのか?」

 橘先生に言われると涙腺が壊れそうになる。でも、泣いてはいけない。
 橘先生はそんな私を見て、

「どうぞ」

 と、再び自室のドアを開いた。私は、

「先生、お忙しいんじゃ……」

 と少し躊躇う。

「少しなら大丈夫だ」

 橘先生の言葉に、私は久しぶりに甘えることにした。
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