MR(医薬情報担当者)だって恋します!


 深呼吸を三度した。橘先生の部屋をノックするのとは違う緊張感が私を支配する。
 大丈夫。出禁にはしないと橘先生は言ってくれた。
 私は謝罪をまずはすること。

 三回ノックする。

「はい?」
「千薬の鈴木です」
「……どうぞ~」

 やる気のない塩屋先生の声が返ってきて、私は恐る恐るドアを開けた。塩屋先生の部屋に入った私は慌ててドアを閉める。塩屋先生はテレビゲームをしていた。

「塩屋先生」
「おう?」
「あの、先程は申し訳ございませんでした。出過ぎたことを言いました」

 私が深々と頭を下げると、塩屋先生はゲームの画面から目を離さずに、

「別に~。俺は言いたいこと言っただけ。鈴木さんもさ、頭下げにくんだったらさ、これに懲りて処方に口出しはしない方がいいよ」

 と言った。 

「はい。本当にすみませんでした」
「もういいよ。それより、鈴木さんさ、結婚したら?」

 塩屋先生の言葉に私は意味が分からず少し考えてから、

「相手がいません」

 と答えた。

「だったら見つけてさ。鈴木君とかさ」
「彼女持ちです」
「そーなの? 鈴木君?」

 今度弄ってやろうと塩屋先生は笑って、その後急に真面目な顔になった。

「MRはさ、やめた方がいいよ。鈴木さんいい大学出てるらしいじゃん。なんでなったの?  もったいない。今からでも遅くないから実家帰んなよ」

 私は塩屋先生の言葉に怒りが沸々と湧いてくるのを感じた。でも、冷静にならなければ。

「先生はどうしてそのようなことおっしゃるんですか?  私には帰る家なんかありません」
「……まあ、そこはあえて聞かないけど。それならさ、考え方変えた方がいいよ」
「え?」

 私はいつのまにかこちらを見ている塩屋先生を見た。
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