MR(医薬情報担当者)だって恋します!
しばらく待っていると、沢野先生が教授の部屋から出てきた。そして、エレベーターホールの方をわざわざのぞいてくれる。
私は軽く会釈をして、沢野先生の後ろに続いた。
「どうぞ」
ドクターに自室に招かれるのは本当に珍しいことだ。腰の低い沢野先生ぐらいだろう。こんなことをしてくれるのは。そんな沢野先生だからこそ、外来でも人気なドクターなのだ。
「鈴木さんのこと、よく見かけてたんですが、いつも余裕のない表情をしていましたね。気になっていたんですよ」
やさしく語尾をあげて言われて、私は、
「ありがとうございます」
と深く頭を下げた。
沢野先生の部屋は橘先生の部屋と違っていつも綺麗にしてある。机にも必要最低限のものしか乗ってない。そして、橘先生の部屋では私は立ったままなのだが、沢野先生の部屋はMRの座る席まである。ドクターによって本当に違うなあと、口が綻ぶ。
「どうしました? 思い出し笑いですか?」
「いえ、沢野先生の部屋はいつも綺麗に片付いてあるなと思って」
「そうですか? そんなことを言ってくれるのは鈴木さんだけだなあ」
にっこり笑って席を勧められて私は遠慮なく座らせてもらった。
「今日は何を聞かせてくれますか?」
「ではエクサシールWについてを」
「W?」
私は利尿剤との合剤なので、降圧効果が単独よりも高くなることを説明した。臓器保護効果は同じようにエビデンスがあることも伝える。
「初めて聞きました。もっと早くに教えてくれれば良かったのに」
「すみません。使い分けして頂けるとありがたいです」
「循環器内科では心臓保護の効果から術後にエクサシールを出すことが多いけど、血圧がやや高めの患者さんにも出してみようかな」
「試してみてください」
頭を下げ、お願いする。