MR(医薬情報担当者)だって恋します!

「エクサシールWの臨床試験のデータをもっと見てみたいですね。どんな患者さんに適してるかも知りたいし」

 こんなときはMRになって本当に良かったと思える。

「分かりました。お持ちします」

 沢野先生は、

「よろしく」

 とまたにっこり笑った。

「寝不足ではあるみたいだけど、表情に迷いがなくなったような気がしますね」

 沢野先生の言葉に私は目を瞬かせた。

「そんな風に見えますか?」
「ええ」

 沢野先生にはそんな風に私が映るんだ。

「どうしても処方して頂きたいドクターと上手くいかず、毎日悩んでいました。それどころか怒らせてしまって」
「鈴木さんがドクターを怒らせたんですか? 僕には信じられませんね」
「実は気が強いんです。私。理不尽に思えて、それをドクターにぶつけてしまいました。MR失格ですよね」

 自嘲気味な笑顔を私は浮かべた。

「でも許してもらえたようですね?」
「はい。今回はなんとか」

 沢野先生は「良かったです」と微笑んでから、

「MRの皆さんはやはり営業ということで、我慢を強いられることも多いのでしょうね」

 と複雑な声音で言った。私は曖昧に笑って返事をぼやかした。
< 74 / 238 >

この作品をシェア

pagetop