MR(医薬情報担当者)だって恋します!


「僕は日本のMRはドクターに対して弱すぎると思うんです。もっと海外のMRのように対等に意見が言えるような関係だったら、色んな提案をMRさんからしてもらえるのではないかなどと思うのですよ」

 私はそんな関係が理想だなと思ったが、日本では難しいだろうと思った。

「僕はMRさんとそんな関係になれたらいいなと思っています」

 沢野先生はまだ若くて、そしてやさしさと責任感があって、自分のやりたいことがはっきりしている。
 患者の前だけいい顔のドクターと違って、沢野先生は本当に医療業界を進展させたいと思っているのだ。
 こういうドクターに、行く行くは教授になってもらいたいと思わずにはいられない。

「本当にそんな関係になれたらいいなと私も思います」

 思わずそう頷いて、しまった、と思った。

「え、えっと。すみません。おこがましいことを申しました」

 慌てて付け加えると、

「謝らないでください。他のドクターには難しいかもしれませんが、僕には大丈夫です」

 と沢野先生は柔らかく微笑んだ。本当にやさしい。

「鈴木さんもお仕事があるのに、僕ばかりが独占してはいけませんね。今日も有意義な情報をありがとうございました」

 沢野先生はそう言って席を立った。私もその言葉を合図に席を立つ。

「聞いてくださってありがとうございました! 失礼致します」

 深く一礼して、私は沢野先生の部屋を出た。
 不思議だなと思う。橘先生も沢野先生もやさしいけれど、橘先生の前ではMRの顔が剥がれてしまうのに対して、沢野先生の前ではMRのままリラックスが出来る。それが恋愛感情のあるなしなのかもしれないな、と私は思い、少し切なくなった。
 ダメだ。橘先生もドクターの一人にしないと。特別じゃダメなんだ。
 私は気持ちを切り替えるために背筋を伸ばしてエレベーターホールの方へ足を踏み出した。
< 75 / 238 >

この作品をシェア

pagetop