並んで歩くなら、あなたと
***


「世菜」

「なんですか、部長」


 由紀さんの背中を見送っていたら、部長に声をかけられた。


「花菜、どう?」


 どうってなんだ……どうもこうもない。


 卑屈になりがちで、自信のない俺の背中を叩いてくれる、しっかりした女の子だ。

 顔はすれ違ったら振り返っちゃうくらいきれいなのに、話し出すと男前で『引かぬ、媚びぬ、顧みぬ』みたいな女の子。

 かっこよくて、まぶしくて、つい甘えたくなるけど、あんまりかっこ悪いところを見せると、たぶんあの子は俺のことなんてすぐに見限ってしまうんだろう。


 そんな重くてぐちゃぐちゃしたことを、部長に言いたくないから、結局俺は無難な言葉で誤魔化した。


「……しっかりした子だと思います」

「あいつ、俺様だし、好き勝手やっちゃうけど、世菜は迷惑してない?」

「そんなこと、絶対にないです。俺、由紀さんに好き勝手されたことなんてないですよ」


 そう言うと、部長は切れ長の瞳を丸くした。


「マジ?」

「え、はい。ないです。何かするときは、必ず聞いてくれますし」

「そうなんだ」


 部長はなぜか嬉しそうな顔になった。


「じゃあ、ゴールデンウィーク明け以降の花菜の担当、世菜と同じ裏門でいい?」

「俺はいいですけど、由紀さんに聞かなくていいんですか?」

「だいじょーぶ。花菜はずいぶん世菜に懐いてるから」

「懐いてますか……?」

「俺にはそう見える。あいつは、はっきりしてるから好きじゃない相手と一緒に花の世話なんかしない」

「……そうですか。はい、わかりました」

「よろしくね」


 部長はきれいな顔でニコッと笑って、スマホを取り出した。


 ……部長があの子のことをわかったように言うのはあんまり嬉しくない。

 それでも、あの子のことをよくわかっている部長が「花菜はずいぶん世菜に懐いてるから」と言ったことはすごく嬉しくて、やっぱり俺はぐちゃぐちゃだ。

 だから、黙ったまま頷いて、片付けの手伝いに加わった。
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