並んで歩くなら、あなたと
 台車に昨日仕分けした苗を積み、一緒に運んだ。

 まずは、今植えてある花を抜かないといけない。


「チューリップの球根の引き上げ、先輩にお任せしていいですか?」

「もちろん」

「先輩は鈍くさいですけど仕事が丁寧なので、お願いします。傷つくとうまく発芽しなくなるので」

「今、褒められた?」

「いえ、事実しか言っていません。それに、そのチューリップは先輩が大事に育ててきたものじゃないですか。だから、先輩にお願いします」

「……うん」


 世菜先輩にスコップと軍手、球根を入れるカゴを渡し、私はそれ以外の花と雑草を抜いていった。その後、土に落ち葉を混ぜて柔らかくしておいた。

 どちらも一時間くらいで終わったから、次は新しい苗を植えていく。


「ホスタとベゴニアですね」

「うん、どうかな」

「いいと思いますよ。裏門は日当たりが悪いですけど、育ちやすいと思います」

「由紀さんのお墨付きがあるなら大丈夫だな」

「そんな大したものじゃないですけど。私が運びますから、先輩は並べてください」


 先輩は苗を並べて私を見た。


「どうかな」

「いいんじゃないですか? 少しだけ間隔を空けましょうか」

「由紀さんは『こう置きたい』みたいのないの?」

「世菜先輩が並べたのでいいんじゃないですか。だってこの苗、先輩が植えたくて選んだんですよね。なら、先輩がしたいようにするのがいいと思います」

「そっか」

「それに私、先輩のセンス好きですよ。まだ春の花壇しか見ていませんけど。だから、今後も苗を植える場所は先輩が決めてください」

「……そっかあ」


 先輩は顔を赤くして頷いた。

 その後は二人で手分けして植えて、たくさん水をやっておしまいだ。


「よし、今日はここまで。片付けようか」

「はい。私が運びますから、先輩は台車に積むのをお願いします」

「俺に運ばせると転ぶから?」

「そうです」

「由紀さんは優しいなあ」

「そうかなあ」


 転んでほしくないし、ホースやスコップを落とされたくないから、私がやりたいんだけど、それって優しさなのかな。

 その感覚って、私には普通のことだけど、先輩を侮ってると思われたら怒られても仕方ないのに、この人は笑って受け入れる。

 変な人だ。


「由紀さんに心配かけたくないから、気をつけるよ」

「私が心配してなくても気をつけてください」

「そうだけどさ。俺、由紀さんに心配されるの好きなんだよね」


 ほんと、何言ってるんだろう、この人。

 持ってきた道具とカゴを全部台車に積んで、中庭に向かった。

 台車を押すのも私がしたかったけど、それは断られた。


「これくらい、見栄張らせて」

「誰にですか?」

「んー、由紀さんと、ぶちょ……いや、なんでもない」


 世菜先輩は、ときどき藤也に対抗したがったり、嫉妬したり、ひがんだりする。

 何があったのか私は知らないし、別に知りたくもないから、台車を押すのは任せて、その後をのんびりついていった。
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