並んで歩くなら、あなたと
 保健室を出て職員室に行くと、教頭先生と藤也が話していた。


「……須藤と由紀は今度は何をやらかしたんだ?」


 今度は?

 何もしたことないけど?

 藤也がムスッと教頭先生を睨んだ。


「花菜は何もしてません。俺だってあれから揉めずにやってるじゃないですか」

「本当に……? わたしは、もう須藤親子を叱りたくないんだ」

「だからー、俺も何もしてません! こいつが花菜をナンパして……」


 藤也が事情を説明して、私と世菜先輩も補足した。

 最後まで話を聞いた教頭先生は、渋い顔で私を見た。


「すまんな、由紀。濡れ衣だった。ちょっと、君のお父さんに苦労させられてな」

「はあ」

「ちょ、俺にも謝ってくださいよ!」


 藤也がムスッとした顔で教頭先生に食って掛かった。


「はいはい、悪かったって」

「おざなり! いいんですよ、俺は。内申に傷がつかず、大学の推薦さえくれたら」


 パパはいったい何をしたんだ。そのあとは教頭先生が相手にお説教するというから、私と世菜先輩は返された。藤也は付き合って残るらしい。

***

 私は世菜先輩と、自転車で一緒に帰った。


「世菜先輩、もしかして私の家と、先輩の家って近い?」

「そうかも」


 世菜先輩はよくわからない顔で自転車を漕いでいた。

 結局、家の前まで先輩はついてきて、


「じゃあ、また明日ね」


 と手を振って戻っていった。

 もしかして、送ってくれた? 家はそんなに近くないのかな?

 首をかしげながら家に入ると、柚希が風呂から出てきたところだった。


「ただいま」

「おかえり、姉ちゃん。なんかいいことあった?」

「ないけど」

「ふうん。機嫌よさそうに見える」


 靴を脱ぎながら、ナンパされた話をしたら、柚希は「ああ」と頷いた。


「助けてくれる頼もしい先輩がいて、よかったね」

「頼もしいかな」


 私は世菜先輩のことを、頼もしいなんて思ったことなかった。


「頼もしいでしょ」


 なのに、先輩に会ったこともない弟はパパそっくりの顔で笑った。


「ナンパ野郎に逆ギレされた後輩女子を、自分がビビってるくせに庇って怒る男は、めちゃくちゃ頼もしいし、かっこいいと思うよ。たぶん、親父も同じことするだろ。まあ、そもそもナンパなんかさせないけど」

「……そうかも」

「ちゃんとお礼言った? 守られたことにも気づいてないくらいだから、姉ちゃん、お礼も言ってないだろ」

「柚希、言い方がママそっくりだよ」

「姉ちゃんはガサツなところが親父にそっくりだ」


 でも、確かにそうだ。

 先輩は震えながら私をかばってくれたのに、私はそのことに反発ばかりして、お礼も言っていない。

 ……園芸部のグループトークから、連絡先を辿っていいのかなあ。それも藤也に確認した方がいいかな。よし、ごはん食べてから考えよう。
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