並んで歩くなら、あなたと
数日後、部活に顔を出すと、花菜ちゃんが駆け寄ってきた。
「先輩、お疲れさまです。今日はクラスは大丈夫ですか?」
「……うん、大丈夫」
「じゃあ一緒に水やり行きましょう。他のところも人手不足で、私もあんまり手入れができてないんです」
花菜ちゃんは俺の隣で、最近の部活の様子やクラスのことなんかを話していた。
景品が足りなくて花菜ちゃんも用意を手伝っているらしい。
「世菜先輩?」
「ん?」
裏門に着いて、蛇口にホースを繋いだところで、花菜ちゃんが俺を見上げた。
「なんか、元気ないですか?」
「そんなことないよ」
全然大丈夫。
君に心配をかけるようなことなんて、なんにもない。
俺は須藤先輩みたいに頼れる男じゃないけど、これ以上、大好きな女の子に迷惑をかけたくなかった。
水やりをして雑草を抜く。
その後はそれぞれ違う場所に応援に行った。
今は、一緒にいるのが辛かったから助かった。
全員の作業が終わったあと、花菜ちゃんを探したらスマホをいじっていた。
声をかけようか迷っていたら、彼女は顔を上げて、須藤先輩に声をかけた。
「藤也ー、私も藤也と帰る。パパが藤也の家にいるってさ」
「そうなん?」
「なんかねー、おじいちゃんが松の手入れするの手伝ってたって」
「ああ、ホテルの松を入れ替えるっつってたわ」
花菜ちゃんは須藤先輩と歩き出した。
でもパッと振り返って俺を見つけると駆け寄ってきた。
「先輩、明日は部活に来れますか?」
「たぶん。遅くなるかもだけど」
「そっか。私は明日からあんまり顔を出せないかもなんです。でも寂しかったら連絡くださいね。すぐ来ますから」
今、寂しい。
そう言いたかったけど、堪えた。
だって、須藤先輩が花菜ちゃんのことを待っていたから。
「……ありがと、由紀さん」
「また明日の朝に、世菜先輩」
「うん、またね」
花菜ちゃんは手を振って、夕焼けの中、須藤先輩と帰っていった。
一人残された俺は、何も言えずに立ち尽くした。
須藤先輩と話す花菜ちゃんの横顔は、やっぱりかわいくて、きれいで、なんていうか、それで良かったと思った。
徐々に暮れていく中で立っていたら、ふと去年のことを思い出した。
園芸部で、ちょっといいなって思っていた女の子。
その子も須藤部長に憧れていて、よく友達と一緒に話しかけに行ったり、盛り上がったりしていた。
そうだった。
俺があの人に敵うわけがないんだ。
「坂木?」
翠が、心配そうな顔で俺を覗き込んだ。
「なに?」
「顔が死んでるけど」
「そんなことないよ」
全然ない。
もしかしたら、ちょっとはあるかもしれないけど。
でも、それを翠に言う気にはならなかった。
「だいじょぶ」
それだけ言って、俺は一人で帰った。
俺は、あの子に笑っていてほしい。負担になりたくなかったし、これ以上甘えたくなかった。
本当に、それだけだった。
「先輩、お疲れさまです。今日はクラスは大丈夫ですか?」
「……うん、大丈夫」
「じゃあ一緒に水やり行きましょう。他のところも人手不足で、私もあんまり手入れができてないんです」
花菜ちゃんは俺の隣で、最近の部活の様子やクラスのことなんかを話していた。
景品が足りなくて花菜ちゃんも用意を手伝っているらしい。
「世菜先輩?」
「ん?」
裏門に着いて、蛇口にホースを繋いだところで、花菜ちゃんが俺を見上げた。
「なんか、元気ないですか?」
「そんなことないよ」
全然大丈夫。
君に心配をかけるようなことなんて、なんにもない。
俺は須藤先輩みたいに頼れる男じゃないけど、これ以上、大好きな女の子に迷惑をかけたくなかった。
水やりをして雑草を抜く。
その後はそれぞれ違う場所に応援に行った。
今は、一緒にいるのが辛かったから助かった。
全員の作業が終わったあと、花菜ちゃんを探したらスマホをいじっていた。
声をかけようか迷っていたら、彼女は顔を上げて、須藤先輩に声をかけた。
「藤也ー、私も藤也と帰る。パパが藤也の家にいるってさ」
「そうなん?」
「なんかねー、おじいちゃんが松の手入れするの手伝ってたって」
「ああ、ホテルの松を入れ替えるっつってたわ」
花菜ちゃんは須藤先輩と歩き出した。
でもパッと振り返って俺を見つけると駆け寄ってきた。
「先輩、明日は部活に来れますか?」
「たぶん。遅くなるかもだけど」
「そっか。私は明日からあんまり顔を出せないかもなんです。でも寂しかったら連絡くださいね。すぐ来ますから」
今、寂しい。
そう言いたかったけど、堪えた。
だって、須藤先輩が花菜ちゃんのことを待っていたから。
「……ありがと、由紀さん」
「また明日の朝に、世菜先輩」
「うん、またね」
花菜ちゃんは手を振って、夕焼けの中、須藤先輩と帰っていった。
一人残された俺は、何も言えずに立ち尽くした。
須藤先輩と話す花菜ちゃんの横顔は、やっぱりかわいくて、きれいで、なんていうか、それで良かったと思った。
徐々に暮れていく中で立っていたら、ふと去年のことを思い出した。
園芸部で、ちょっといいなって思っていた女の子。
その子も須藤部長に憧れていて、よく友達と一緒に話しかけに行ったり、盛り上がったりしていた。
そうだった。
俺があの人に敵うわけがないんだ。
「坂木?」
翠が、心配そうな顔で俺を覗き込んだ。
「なに?」
「顔が死んでるけど」
「そんなことないよ」
全然ない。
もしかしたら、ちょっとはあるかもしれないけど。
でも、それを翠に言う気にはならなかった。
「だいじょぶ」
それだけ言って、俺は一人で帰った。
俺は、あの子に笑っていてほしい。負担になりたくなかったし、これ以上甘えたくなかった。
本当に、それだけだった。