並んで歩くなら、あなたと
 角を曲がるまで見送ってから、門を抜けて自転車を止めた。

 玄関前の水道で柚希(ゆずき)が長靴を洗っていた。


「おかえり。家の前でいちゃつくなよ」

「い、いちゃついてたわけじゃないし……!」

「同じやり取りを俺が女の子としてたら、姉ちゃんどうすんの」

「詳しく聞く。出会いから、好きになったきっかけから、どっちが告ったかまで吐かせる」


 弟に彼女ができたら、聞くでしょ。

 一から十どころか、百まで聞き出すと思う。


「そう見えるんだって」

「うっさいな……」


 笑う柚希を放って家に入ると、洗面所にパパがいて、私の顔をまじまじと見つめた。


「なんかいいことでもあった?」

「……あった」

「なんでそんな渋々なんだよ」


 パパは笑って、私の頭をかき混ぜてから洗面所を出て行った。

 ……私、そんなにわかりやすいかなあ。鏡に答えが書いてありそうだったから、見ないようにして手を洗った。


 そのまま晩ごはんとお風呂を済ませて、ベッドに倒れ込んだ。

 そこでふと、気がついた。


 ……つまり、世菜は今、私の彼氏ってことかな?

 私は逆に、世菜の彼女……?

 彼女か……なんていうか、改めて考えると照れるなあ。

 あれ、でもお互いに好きとは言ったけど、付き合うって話はしてないような?


 明日は文化祭だから、さっさと寝て体力を回復しないといけないのに、世菜のことを考え始めたら、ちっとも寝られなくなった。

 それが嫌じゃないのが、本当に我ながら単純だと思う。
 
< 78 / 89 >

この作品をシェア

pagetop