並んで歩くなら、あなたと
 世菜に送ってもらって教室に向かうと、桃が大きく手を振っていた。


「花菜ー、仲直りしたー?」

「仲直り?」


 まだ手をつないでいた世菜が首をかしげた。


「うん。昨日、世菜と喧嘩してくるって言って教室を出たんだよね」

「したかな」

「どうかな。喧嘩っていうか、すり合わせっていうか。まあ、言い方は何でもいいんだ。また後でね。……手、離して。そんな顔してもダメ」


 甘えた顔の世菜から手を引き離して、背中を押して二年の教室へ向かわせた。

 階段までずっと振り返りながら歩いていて、かわいいやら危なっかしいやら。


「王子と仲直りできたみたいだね」

「うん。大丈夫。……ところで、あの人今、私の彼氏なんかな?」

「なんで私に聞くのさ。本人に聞きなよ」

「いや、ちょっと恥ずかしくて」

「そこを恥ずかしがる意味がわかんないな。さっきまでのやり取りの方がよっぽど恥ずかしいよ」


 すぐに担任の先生が来て、朝のホームルームが始まった。

 それが終わったら、射的屋さんの準備ということで、男女に分かれて着替えた。


「花菜、黒い浴衣、めっちゃ似合うね」

「元がいいから。桃の浴衣もかわいいね」

「ピンクって子どもっぽくない?」

「全然。桃に似合っててきれいだよ」

「……それは王子にだけ言いな。破壊力ヤバいから」

「何言ってんの?」


 着替えたら、互いに髪をそれっぽく結んで完成した。

 私は浴衣に似合うかは微妙だけど、世菜がくれたプルメリアの髪飾りをつけた。


「花菜、写真撮ってあげる。王子に送りなよ」

「ありがとう。送ったら飛んでくるかも」


 桃に撮ってもらった写真を送ったら、一瞬で既読がついて、そのまま電話がかかってきた。


『今すぐ行く』

「ダメだから。昼に約束してるでしょ」

『やーだー』

「先輩、今どこで電話してるの?」

『廊下。俺、午前中は受付だから。あ、宣伝係と交代してもらって、見に行っていい?』

「ダメ」

『やだーっていうか先輩って言うなよ、寂しいから』

「もー、いいから午前中はちゃんとクラスの仕事して! デート楽しみにしてるから」


 スマホの向こうで世菜がごちゃごちゃ言っていたけど、そのまま電話を切った。


「しょうがない人だな」

「とか言いつつ嬉しそうだけど」

「そ、そんなことないよ。ほら、準備しよ」


 桃の背中を押して、射的屋さんの準備をする。

 スマホが震えたので見ると、世菜が受付で青いクラスシャツを着てニコニコしている写真が送られてきた。


(みどり)が撮ってくれた』


 とメッセージ付きだ。


「人類一かわいい」


 とだけ送り返したところで、教室のスピーカーがガサガサと鳴り、文化祭実行委員からのお知らせが流れる。

 注意事項やタイムテーブルがざっくりと説明され、文化祭が始まった。

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