並んで歩くなら、あなたと
 射的は最初からそこそこ混んでいた。

 今日は校内発表だから来るのは生徒だけだけど、部活の先輩や兄弟姉妹が遊びに来ている人が多い。

 私にも園芸部の先輩たちが声をかけてくれた。


由紀(ゆき)ちゃん、かわいい! 写真撮ろうよ」

「ぜひぜひ、お願いします!」

「撮ったやつ、園芸部のトークに流していい? 坂木くんに自慢する」

「止めてください。さっき写真送ったら会いに来るってうるさかったんで」

「ウケる」


 先輩はげらげら笑って、私たちで撮った写真を園芸部のグループトークに上げていた。

 すぐに世菜から『ずるいです!』とメッセージが飛んできて、先輩はまた笑っていた。

 少しすると、部長も来た。


「あの双子、なんとかなんない? 従姉妹だろ?」

「なんともなんないですよ。藤也(とうや)はなんとかしてくれなかったんですか?」


 そう言うと部長の顔が暗くなった。


「してくれたけど、『お兄ちゃんが卒業するのが楽しみですね』ってさ」

「いったい何を言ってそこまで怒らせたんですか」

「言えない……どう考えても俺が悪い」

「じゃあしょうがないじゃないですか」

「そうだけどさあ」

「まあまあ、射的していってくださいよ」


 部長はぶつくさ言いながら、射的でヘアゴムとお菓子を二つずつ当てて教室から出ていった。

 こっそり後ろから見ていたら、桔花(きっか)蓮乃(はすの)のクラスに入っていったから、まあ、まんざらでもないんだろう。


 昼過ぎ、午後の店番の子たちが帰ってきたので、交代する。

 廊下に出ると、世菜が待っていた。


「花菜ちゃん! かわいい、俺よりずっとかわいい。写真撮らせて」

「一緒に撮ろうよ。桃ー、撮ってー」

「おまかせー」


 教室の前で呼び込みをしていた桃に、世菜との写真を撮ってもらった。


「ありがと。あ、この子、友達の桃です」

「ど、どうも」

「桃です。花菜の王子ですよね。須藤先輩とは違うタイプだ」

「そりゃそうよ。私、藤也はタイプじゃないもの。じゃあ、行ってくるね」


 桃に見送られて、歩き出した。

 世菜の手を取ると、顔を覗き込んできた。


「王子って?」

「四月にナンパからかばってくれたでしょ。その話をしてから、桃が勝手に世菜のことを『王子』って呼んでるだけだよ」


 頷く世菜を見上げて、シャツを引っ張った。

 背伸びをして耳元に顔を寄せる。


「今は、名実共に王子だと私は思ってるけど、どう?」

「ど、どうって!? ……そう、ありたいと思っております……」


 世菜は顔を真っ赤にして、小さな声で言った。


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