初恋は、終電の先に
 ……ここに、入ってもいいのかしら。

 再び寝室に戻ってきて、私は先輩の寝顔をじっと見つめていた。

 オレンジの常夜灯に照らされて、相変わらず青白い顔で、先輩は静かな寝息を立てていた。

 私は屈んで、先輩の顔を覗き込んだ。


「……先輩、山田、尚也先輩」

「……ん」


 先輩の目が薄っすら開いた。

 メガネをかけていないからか、焦点の合わないぼんやりした顔で、私を見ている。


「あきや」


 手が伸びてきたので、体を起こしてその手に自分の手を重ねた。

 力強く引っ張られて、そのまま布団の中に引きずり込まれる。


「先輩?」

「秋谷……よかった、本物だ」


 先輩は私を抱きしめながら、ぽつりと呟いた。

 その低い声に、胸が締めつけられて、無性に泣けて仕方なかった。
< 79 / 90 >

この作品をシェア

pagetop