鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
「立花、ちょっと聞きたいことあるんだけど」


 ある日の昼前、長谷川が近寄ってきた。


「午後、この店に顔出すんだけど、お客さんの好きなお菓子とか知ってる?」

「しょっぱい系がいいよ。エビセンがおすすめ」

「……いつも助かってるんだけどさ。なんでそんな詳しいんだ?」

「営業事務内で共有してるから」

「マジで?」

「マジで。秦野ちゃんに聞いてみなよ」


 長谷川が目を丸くして秦野ちゃんの席に向かっていった。

 そしてすぐに戻ってきた。


「同じ事言ってた」

「でしょー?」

「おすすめのメーカーまで教えてくれたんだけど、店の場所わかんなくてさ。飯がてら付き合ってくれねえかな」

「秦野ちゃんに頼みなよ」

「弁当持って来てるって断られた」

「あらら。『頼れるのは君だけなんだ美颯♡』って言ってくれたら行くけど」

「自分で探すわ」

「あはは、つきあうよ、それくらい」


 長谷川が本気で嫌そうな顔をしたから、つい吹き出してしまった。

 紫くんなら笑いながらさらっと言ってくれるけど、長谷川がこのセリフを吐く姿はどうにも想像つかない。別に言わなくていいし。


 机を片付けて戸部先輩に声をかけた。


「ちょっと早いですけど、お昼行ってきます」

「はい、行ってらっしゃい。……長谷川くん、ずいぶん懐いたわねえ」

「そうでしょうか?」

「うん。立花さんに対してだけ、丸くなった感じ」

「できれば全方位に向けて丸くなってほしいんですけどね……」

「まあ、そういうのは少しずつだから」

「ですね」


 席を立って廊下に出る。

 長谷川はもう待っていて、スマホをいじっていた。


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