鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
13.鬼同期と汚部屋
その日の朝、部屋を出たら長谷川もちょうど出てきたところだった。
「おはよ」
「おはよう」
長谷川は手にゴミ袋を提げていて、朝から妙に所帯じみていた。
いや、長谷川には彼女もいないはずなんだけど。
私が仕事用のカバンしか持っていないのを見て、長谷川は首を傾げた。
「そういえばここのゴミ捨て場って、いつ捨ててもいいんだっけ」
「大丈夫だよ。七階の一号室に管理人さんが住んでて、毎日掃除や手入れしてくれてるからね。ゴミもいつでも大丈夫」
「へー、詳しいな」
エレベーターに乗って、一階まで降りる。
長谷川のあとについて、そのままゴミ捨て場まで向かった。
「マンションの裏手に戸建てがあるでしょ。あれが大家さん。んで、管理人さんは大家さんの次男夫婦」
「いや、本当に詳しいな」
「休みの日に立ち話してるんだよ。たまにだけどね」
「……そういうコミュニケーション能力の高さ、素直にすごいと思う」
「ありがと」
そのまま並んで会社まで向かった。前ほど気まずくなく、なんとなく話しながら歩く。
私は会社の前でコンビニに寄って、長谷川は先にビルに入っていった。
***
数日後の夜。
駅前のコンビニで晩ごはんを買って外に出たら、ちょうど長谷川が帰ってきたところだった。
「おつかれー」
「おう、おつかれ」
並んでマンションまでやってくると、長谷川は郵便受けから抜いたチラシをそのままゴミ箱に放り込んだ。
そういえば、私もたまには確認するか。
「待て」
郵便受けを開けて、溜まっていたチラシを適当に抜いて捨てていたら、長谷川がドン引きした顔でこっちを見ていた。
「なに?」
「『なに?』じゃねえよ。溜め込みすぎだろ!」
「つい」
「これ、どんだけ溜めたんだ?」
「どうだったかな。月一くらいでは開けてると思うけど」
「毎日開けろよ……」
長谷川は顔をしかめた。
見てなくていいですけど。
「ガスの紙が二枚入ってる!」だの、「溜め込みすぎて地層じゃねえか」だの、やたら騒いでいた。
「いやだらしなさ過ぎるだろ。……もしかして、この前ゴミ捨てしてなかったのも、ゴミ溜め込んでるんじゃ……?」
「まあそうなんだけど」
「捨てろよ!」
マンションのエントランスで普通に怒られた。
仕事中じゃあるまいし、そんな本気のトーンで怒らないでほしい。
でも自業自得すぎて反論できなかった。
「俺にはコミュニケーションについて指摘しておいて、そのだらしなさはなんだ!」
「ぐう、正論すぎる。あのね、人には得手不得手があると思うの。そんなに気になるなら、長谷川が郵便受け確認して、私の部屋も掃除すればいいじゃん」
「アホか!」
はいはい、アホですよ。
長谷川は呆れたような、引いたような顔で深いため息をついた。
「郵便受けはともかく、女性の一人暮らしの部屋に、彼氏でもない男が上がるわけにはいかないだろ」
郵便受けはいいんだ?
しかも気にするのそこなんだ。律儀か。
「……たしかに、私の部屋は汚いんだよ」
「お、おう」
「とはいえ、一日二日でどうにかなる汚さではない」
「うん」
「そういうわけで応援してほしい」
「それくらい、するけどさ」
長谷川は呆れ半分で笑って、また歩き出した。
私も一緒にエレベーターに乗る。
「ゴミ袋はあんの?」
「あるはずだよ」
「それはねえって言うんだ。ちょっと待ってろ」
長谷川は部屋に入ると、すぐに市の指定のゴミ袋を持って戻ってきた。
「これやるから、がんばって掃除してくれ」
「……すみません」
「あはは、いいよ」
急に笑い出した長谷川に見送られながら、隣の自分の部屋に戻った。
なんだかなあ。長谷川のこと、パワハラ同期だと思ってたのに、気づけばオカンになっちゃった。
「おはよ」
「おはよう」
長谷川は手にゴミ袋を提げていて、朝から妙に所帯じみていた。
いや、長谷川には彼女もいないはずなんだけど。
私が仕事用のカバンしか持っていないのを見て、長谷川は首を傾げた。
「そういえばここのゴミ捨て場って、いつ捨ててもいいんだっけ」
「大丈夫だよ。七階の一号室に管理人さんが住んでて、毎日掃除や手入れしてくれてるからね。ゴミもいつでも大丈夫」
「へー、詳しいな」
エレベーターに乗って、一階まで降りる。
長谷川のあとについて、そのままゴミ捨て場まで向かった。
「マンションの裏手に戸建てがあるでしょ。あれが大家さん。んで、管理人さんは大家さんの次男夫婦」
「いや、本当に詳しいな」
「休みの日に立ち話してるんだよ。たまにだけどね」
「……そういうコミュニケーション能力の高さ、素直にすごいと思う」
「ありがと」
そのまま並んで会社まで向かった。前ほど気まずくなく、なんとなく話しながら歩く。
私は会社の前でコンビニに寄って、長谷川は先にビルに入っていった。
***
数日後の夜。
駅前のコンビニで晩ごはんを買って外に出たら、ちょうど長谷川が帰ってきたところだった。
「おつかれー」
「おう、おつかれ」
並んでマンションまでやってくると、長谷川は郵便受けから抜いたチラシをそのままゴミ箱に放り込んだ。
そういえば、私もたまには確認するか。
「待て」
郵便受けを開けて、溜まっていたチラシを適当に抜いて捨てていたら、長谷川がドン引きした顔でこっちを見ていた。
「なに?」
「『なに?』じゃねえよ。溜め込みすぎだろ!」
「つい」
「これ、どんだけ溜めたんだ?」
「どうだったかな。月一くらいでは開けてると思うけど」
「毎日開けろよ……」
長谷川は顔をしかめた。
見てなくていいですけど。
「ガスの紙が二枚入ってる!」だの、「溜め込みすぎて地層じゃねえか」だの、やたら騒いでいた。
「いやだらしなさ過ぎるだろ。……もしかして、この前ゴミ捨てしてなかったのも、ゴミ溜め込んでるんじゃ……?」
「まあそうなんだけど」
「捨てろよ!」
マンションのエントランスで普通に怒られた。
仕事中じゃあるまいし、そんな本気のトーンで怒らないでほしい。
でも自業自得すぎて反論できなかった。
「俺にはコミュニケーションについて指摘しておいて、そのだらしなさはなんだ!」
「ぐう、正論すぎる。あのね、人には得手不得手があると思うの。そんなに気になるなら、長谷川が郵便受け確認して、私の部屋も掃除すればいいじゃん」
「アホか!」
はいはい、アホですよ。
長谷川は呆れたような、引いたような顔で深いため息をついた。
「郵便受けはともかく、女性の一人暮らしの部屋に、彼氏でもない男が上がるわけにはいかないだろ」
郵便受けはいいんだ?
しかも気にするのそこなんだ。律儀か。
「……たしかに、私の部屋は汚いんだよ」
「お、おう」
「とはいえ、一日二日でどうにかなる汚さではない」
「うん」
「そういうわけで応援してほしい」
「それくらい、するけどさ」
長谷川は呆れ半分で笑って、また歩き出した。
私も一緒にエレベーターに乗る。
「ゴミ袋はあんの?」
「あるはずだよ」
「それはねえって言うんだ。ちょっと待ってろ」
長谷川は部屋に入ると、すぐに市の指定のゴミ袋を持って戻ってきた。
「これやるから、がんばって掃除してくれ」
「……すみません」
「あはは、いいよ」
急に笑い出した長谷川に見送られながら、隣の自分の部屋に戻った。
なんだかなあ。長谷川のこと、パワハラ同期だと思ってたのに、気づけばオカンになっちゃった。