鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
 今度こそスーパーに来た。休日のスーパーは家族連れでなかなか混んでいて、買い物かごを提げた人たちがあちこち行き交っている。カートを押す旦那さんや、お菓子を強請る子ども、夜ごはんの惣菜を選ぶ若いカップル。

 もしかして、私たちも若いカップルとか夫婦っぽく見えてたりするんだろうか。残念ながら実態はオカンと手伝いの子どもなんだけど。


 長谷川がカートを押してくれて、まずは野菜コーナーに向かった。


「今日は何作るの?」

「ごはん炊いて、魚焼いて、小松菜はレンチンでおひたし。味噌汁はレトルト」

「それくらいなら私でもできるかなあ。味噌汁は自分で作らないの?」

「作れるの?」

「作れるわけないじゃん」

「最初からなんでもかんでもやる必要ねえから」


 長谷川は小松菜をカゴに入れて、そのまま生鮮コーナーで鮭を選び始めた。

 私にはよくわからないけど、長谷川は一つ一つ確認しながらカゴに入れていく。選ばれなかった小松菜と今カゴに入ってる小松菜の違いなんて、私にはさっぱりわからない。


 それからレトルト味噌汁と液体出汁もカゴに入れた。


「とりあえず出汁があればどうにかなる」

「ふうん。出汁って鰹節とか昆布とかのイメージだわ」

「面倒だろ」

「……うん」


 それはそう。私にできるわけがない。

 長谷川は責めることもなく、さっさと次に向かう。


「俺は休みの日にまとめて取ったりするけどさ。立花は慣れてないんだから、ハードルはできる限り下げるに越したことねえよ。大事なのは続けることだし」

「長谷川、できる人だよね」

「立花もできない人じゃないと俺は思ってる」


 もしかして今、褒められた?

 悪い気はしない。できれば定期的にお願いしたい。私、褒められて伸びるタイプだから。


「お酒とお菓子買っていい?」

「三百円以内な」

「ビール一缶しか買えないじゃん」

「禁煙ガムってあるけど、禁酒ガムってねえの?」

「ないんじゃないかな」

 結局お菓子は買わなかったけど、代わりに入り口近くに戻ってブドウを買った。

「デザートがあったらモチベーション上がるだろ?」

「なんか、分かってる感がすごい」


 最後にお米を選びに、レジ横の米売り場へ向かった。銘柄がずらっと並んでいて、正直どれも同じに見える。


「お米っていっぱいあるけど何が違うの?」

「生産地と品種」

「それが違うと、何が変わるの?」

「味と食感。甘みが強いとか、粘り気があるとか」


 呆れられるかと思ったけど、長谷川は普通に教えてくれた。

 内容的に、説明の仕方が仕事の延長っぽい。


「俺の所感として、女性っぽい名前の米は甘い。あと柔らかい」

「あきたこまちとか、つや姫とか?」

「そうそう。戸部さんは、そういう米は旦那の弁当箱にこびりつきやすいから選ばないって言ってた」


 何の話をしてるのさ。

 でも、おもしろい。そういう基準で米を選ぶんだ。


「とりあえず有名どころを食ってみて、好みを探せばいいと思うが、今回はこれ」


 長谷川が手にしたのは小さい無洗米の袋だった。


「立花はそんなしょっちゅう米炊かないだろ? それなら鮮度が落ちるから少しでいいし、手間は少しでも減らしていけ」

「なるほど?」


 たしかに、現段階の私はお米の研ぎ方すらよく分かっていない。

 なら、研がずに炊けるほうが圧倒的に楽でいい。


 米をカートに積んで、そのままレジへ向かう。教わるのは私なんだから、ここは財布を出させてもらった。

 長谷川はちゃんとエコバッグを持ってきていて、袋詰めの手際までいい。

 しかも帰りは荷物を当たり前みたいに持ってくれた。


 な、なんだかなー。オカンっていうか、スパダリっていうかあ……。

 いや、単純に私ができなさすぎるだけか?

 オカンの買い物についてきただけの子ども状態で、長谷川のあとをついていった。
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