鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
 鮭を盛り終えたところで炊飯器が鳴った。

 長谷川はしゃもじでさくっとごはんを混ぜて、また蓋をした。湯気と一緒に炊きたての匂いが広がって、すぐ食べたいけど五分ほど蒸らすらしい。

 その間に鮭の皿を運んで、お椀にお湯を注ぎ、味噌を溶いておく。


 蒸らし終えたごはんをお茶碗によそってテーブルへ運べば完成!


「すごい。一時間でちゃんとしたごはんができた」

「だろ? 要は慣れだし、立花は手際が悪いわけでも不器用なわけでもねえから、続けてればもっとちゃんとできるようになる」

「なるかな」

「なるに決まってんだろ。俺が教えてるんだぞ」

「ふふ、そうだね」


 自信満々な言い方がおかしかった。でも、それだけちゃんと実家で教わって育ってきたんだろう。

 なんか、いいな。そういう家庭。

 ついニヤけちゃって、長谷川に不思議そうな顔をされた。


 ともかく、ごはんの支度が整ったので、手を合わせていただくことにする。


「いただきます」


 箸を取って、まずはお味噌汁。湯気と一緒に味噌の香りがふわっと広がって、おいしい。今どきのレトルト味噌汁っておいしいんだなあ。簡単だし、これくらいなら家に置いておいてもいいのかも。ケトルも買わなきゃだけど、それくらい買えって話だし。

 次に小松菜のお浸し。レンチンして出汁と醤油をかけただけだけど、ちゃんとお浸しになってるんだろうか。


「わ、おいしいねえ」

「な。簡単なのにちゃんと美味いの助かるよな。あ、鰹節出すの忘れてた」


 長谷川が小分けの鰹節パックを出してきた。半分こしてぱらぱらとかけて食べたら、すごい、さっきよりもっとおいしい。

 鮭もほぐして食べる。


「日本酒ほしい……!」

「この飲兵衛が。白飯を食え」

「そうだけどさあ。ごはんも進むねえ、おいしいねえ」

「残ったら茶漬けにしてもうまい」

「間違いないやつじゃん。ごはんも炊きたてほかほかでおいしい。長谷川、教えるの上手だね」

「今回のメニューは昔、親父に教わったんだ。……俺が小学校上がったばっかのころだけどな」


 長谷川は目を細めて、自分で焼いた鮭の皿を見ていた。

 ……なんか、かわいいな。あのモラハラ俺様同期をかわいいと感じる日が来るなんて予想外だけど、別に悪くはない。


「二十年経っても覚えてるくらい、大事な思い出なんだねえ」

「嫌みだっての。調子狂うな……」

「そう? 美味しかったし、また一緒に作ろうねえ」

「……気が向いたらな」

「楽しみにしてる」


 その後は職場の雑談をしながら箸を進めた。


「紫くんに結婚願望あるか聞かれてさあ」

「あんの?」

「ないよ。私がだらしないの知ってるでしょ。隣の部屋ってだけで長谷川にこれだけ世話かけてるんだよ。同じ部屋に住んだら、一時間で愛想尽かされる自信あるね」

「俺は迷惑かけられてるなんて思ったことねえけど」


 長谷川が真顔で私の顔を見た。


「そうなの? 長谷川、見かけよりも心が広いんだね」

「……立花、そういうところあるよな」

「なに?」

「何でもねえよ」


 首をかしげたけど、長谷川は苦笑するだけで、結局何のことかは教えてくれなかった。


 食べ終えたら片付けは一緒にやった。

 私だって、皿くらい洗える。


「今日はごちそうさまでした。ありがとう、楽しかった」

「それは何よりだ。また月曜日に」

「うん、またねー」


 お腹いっぱいで、気分良く自分の部屋に戻った。
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