鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
 翌朝、お腹が鳴って目が覚めた。

 顔を洗って歯を磨いて、財布を手にしたところで我に返った。


 時計を見ると、もう昼前だ。

 つい流れでコンビニに向かおうとしちゃったけど、そういえば昨日は食材を買ってきたんだった。


 少し迷ってから、長谷川に『包丁貸して』とメッセージを送ったら、


『うちで使うか、調理ばさみ買え』


 と、すぐに返ってきた。ついでにネット通販の調理ばさみの商品ページのアドレスまで送られてきた。


 相変わらずオカンなんだから。

 でもそうだよねえ。

 調理ばさみがあれば、包丁がなくてもある程度なんとかなりそうだ。


「……やるか」


 お米は無洗米だから、炊飯器に水と一緒に入れてスイッチを入れるだけでいい。

 着替えてスーパーに向かって、調理ばさみを買ってきた。


「長谷川も『最初からなんでもかんでもやる必要ねえから』って言ってたし」


 そう呟いて包丁とまな板は今度にする。


 帰ったら電気ケトルでお湯を沸かして、調理ばさみで小松菜を切って洗った。お弁当箱代わりの容器に入れてレンチンし、出汁と醤油をかけて冷蔵庫に入れる。

 昨日買ってきた冷凍唐揚げを温めて、その間にレトルト味噌汁を用意しておく。

 唐揚げと味噌汁を机に並べ、はさみを洗ってから冷蔵庫の小松菜を取り出したところで、ごはんが炊けた。

 蒸らすとか面倒なことはできないから、さっくりほぐして茶碗によそい、お箸と一緒に机へ運んだら完成!


「すごい、自分でできた!」


 スマホで写真を撮って長谷川に送った。

 返事はすぐに来て、


『やればできるじゃん』


 だって。偉そうでウケる。まあ、私に料理を一から教えてくれたんだから、偉そうなんじゃなくて本当に偉いんですけどね。


「いただきます」


 小松菜はちょっとしょっぱかった。醤油入れすぎた。

 ごはんが進む味ってことにしておこう。

 唐揚げと味噌汁は間違いのない味だ。


「……もしかして、これを詰めたら明日のお弁当になるんじゃん? ヤバい、私ってば天才!」


 小松菜とごはんは明日の分に取っておいて、それ以外は全部食べた。

 すごい。自分で作って、ちゃんと食べられるおいしいものができた。


 嬉しいなあ。


 部屋を見回すと床はちゃんと見えるし、ゴミも落ちていない。

 週に一回か二回くらいだけど、掃除機もちゃんとかけてるし。

 なんか、私がすごくまともな人になったみたいだ。



 時計を見るとまだ夕方には早い。

 お腹もいっぱいだし、ちょっと肥えてもちもちしてるし、散歩にでも行こう。

 んで、スーパーの冷凍コーナーももうちょいしっかり見てこよう。

 なんかラーメンとかあった気がする。……でもラーメンがあっても、うちには鍋も丼もないんだよなあ。あれだ、アルミ鍋のラーメンなかったっけ? 酒のつまみになればなんでもいいし、せっかくだから開拓してこよう。

 食器を洗って干した。


「よし、行くか」


 ウォーキング用のスニーカーを履いて部屋を出た。

 ついでだし長谷川を誘おうかと思ったけど、呼び鈴を押しても出なかった。どこか出かけているのかも。

 メッセージを送るほどでもないし、まあいいか。

 連絡先を交換しても、相変わらず私と長谷川のやり取りは昭和みたいだ。


 近くの公園をぶらぶら散歩してからスーパーに向かった。

 なんと、この土日で四回目だ。

 いい加減エコバッグとかあった方がいいかも。でもビニール袋はゴミ袋にもなるし、まあいいか。


 いつもよりずっと気分良く、夕方のやわらかな空気の中を歩いた。
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