鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
月曜の朝、メールを確認していたら、よれよれの戸部先輩が出勤してきた。
「おはようございます。チョコいります?」
「いる……嬉しい……私を労ってくれる人がいる……」
「労りますよ、お疲れさまです」
「家だと誰も労ってくれない……っ」
「ちょ、先輩!」
戸部先輩が半泣きになってしまった。
まだ朝礼まで時間があったので、互いにメールを確認しつつ愚痴を聞いた。
お子さんが吐いて熱を出し、ご主人にうつり、二人の看病を終えたかと思えば今度は自分にうつったのに、誰も看病してくれなかったという悲しい話を聞いて、こっちまでしょんぼりするというか、なんというか。
「しょうがないのはわかるよ? 旦那だって出勤しないといけないもの。土日は私が寝ていられるように子供を連れ出してくれたけどね? でも帰ってきたら『昼飯何?』とか言うわけよ。熱が! あるんですけど!!」
「おお……」
「それくらいなら子供と外で食べてきてさ、帰りにスポドリの一つでも買ってきてくれればいいじゃん。そう頼んだんだよ。なのに『昼時で混んでるし、風邪なんだから栄養のあるもの食べた方がいいよ』つってえ」
「わあ……」
「じゃあそれをお前が用意しろよ~~~って、キレ散らかしました」
「お疲れさまです。えっとココアと抹茶ラテとカフェオレだとどれがいいですか?」
「ココアで……」
ココアとカフェラテのスティックを持って給湯室に向かう。棚から私と戸部先輩のマグカップを出して二人分を淹れ、湯気の立つマグカップを持って戻ったら、私の席で長谷川が愚痴を聞いていた。
「あ、悪い」
「いやいいけど、何してんの」
「戸部さんが休んでた間の進捗を伝えに来たら捕まった」
「なるほど。先輩、ココアどうぞ」
「ありがと~」
「私、丹沢先輩と打ち合わせあるから、長谷川は私の席使ってていいよ……って、先輩来てないな。朝礼前にって言ったのに」
まあ、いいか。マグカップとパソコンを持っていって、丹沢先輩の席の隣で仕事をしていたら、朝礼ギリギリになって先輩がやって来た。
「なんでそこにいるんだ?」
先輩は訝しげに私を見ている。これは完全に約束を忘れてたやつ!
「朝礼前に話しましょうって言ったじゃないですか」
「……あ、忘れてた。ごめん。出るの何時だっけ」
「昼過ぎだから別に大丈夫ですけど。もー、朝礼終わったらお願いしますね」
「ごめん。ちょっとバタバタしてた。通勤中に葉山さんに会ってさあ。ぶつかりおじさんからかばってたんだよ」
先輩は苦笑しながら荷物を置き、パソコンを開いた。
さらっと言ってるけど、それ事故? 事件? じゃないですか。
「えっ。先輩も葉山さんもお怪我はないですか?」
「大丈夫。こう見えて体力あるんだ、俺は」
「それは知ってますけど」
一緒に外回りに行くと、一駅や二駅なら普通に歩かされるし。
丹沢先輩が重たい書類箱や機材を私の代わりにガンガン運んでくれているのも知ってるし。
「そう? じゃあもうちょい頑張っとけばよかったかな。んで、葉山さんを経理部までお送りして、あっちの課長に事情説明してたら遅くなっちまいました。すまんね」
「いえいえ、そういう事情でしたらやむ無しです。お二人が無事でよかったです」
「……俺に笑顔を向けないでくれる?」
「何言ってるんですか?」
「あっちで立花の同期が恐ろしい顔で睨んでるんだ。俺はまだ死にたくない」
先輩が指さした方を見ると、戸部先輩と長谷川が話していた。
どっちもこちらは見ていないけど?
でも先輩に聞き返す前に課長が手を叩き、朝礼が始まったので、結局何のことかは分からずじまいだった。
***
「おはようございます。チョコいります?」
「いる……嬉しい……私を労ってくれる人がいる……」
「労りますよ、お疲れさまです」
「家だと誰も労ってくれない……っ」
「ちょ、先輩!」
戸部先輩が半泣きになってしまった。
まだ朝礼まで時間があったので、互いにメールを確認しつつ愚痴を聞いた。
お子さんが吐いて熱を出し、ご主人にうつり、二人の看病を終えたかと思えば今度は自分にうつったのに、誰も看病してくれなかったという悲しい話を聞いて、こっちまでしょんぼりするというか、なんというか。
「しょうがないのはわかるよ? 旦那だって出勤しないといけないもの。土日は私が寝ていられるように子供を連れ出してくれたけどね? でも帰ってきたら『昼飯何?』とか言うわけよ。熱が! あるんですけど!!」
「おお……」
「それくらいなら子供と外で食べてきてさ、帰りにスポドリの一つでも買ってきてくれればいいじゃん。そう頼んだんだよ。なのに『昼時で混んでるし、風邪なんだから栄養のあるもの食べた方がいいよ』つってえ」
「わあ……」
「じゃあそれをお前が用意しろよ~~~って、キレ散らかしました」
「お疲れさまです。えっとココアと抹茶ラテとカフェオレだとどれがいいですか?」
「ココアで……」
ココアとカフェラテのスティックを持って給湯室に向かう。棚から私と戸部先輩のマグカップを出して二人分を淹れ、湯気の立つマグカップを持って戻ったら、私の席で長谷川が愚痴を聞いていた。
「あ、悪い」
「いやいいけど、何してんの」
「戸部さんが休んでた間の進捗を伝えに来たら捕まった」
「なるほど。先輩、ココアどうぞ」
「ありがと~」
「私、丹沢先輩と打ち合わせあるから、長谷川は私の席使ってていいよ……って、先輩来てないな。朝礼前にって言ったのに」
まあ、いいか。マグカップとパソコンを持っていって、丹沢先輩の席の隣で仕事をしていたら、朝礼ギリギリになって先輩がやって来た。
「なんでそこにいるんだ?」
先輩は訝しげに私を見ている。これは完全に約束を忘れてたやつ!
「朝礼前に話しましょうって言ったじゃないですか」
「……あ、忘れてた。ごめん。出るの何時だっけ」
「昼過ぎだから別に大丈夫ですけど。もー、朝礼終わったらお願いしますね」
「ごめん。ちょっとバタバタしてた。通勤中に葉山さんに会ってさあ。ぶつかりおじさんからかばってたんだよ」
先輩は苦笑しながら荷物を置き、パソコンを開いた。
さらっと言ってるけど、それ事故? 事件? じゃないですか。
「えっ。先輩も葉山さんもお怪我はないですか?」
「大丈夫。こう見えて体力あるんだ、俺は」
「それは知ってますけど」
一緒に外回りに行くと、一駅や二駅なら普通に歩かされるし。
丹沢先輩が重たい書類箱や機材を私の代わりにガンガン運んでくれているのも知ってるし。
「そう? じゃあもうちょい頑張っとけばよかったかな。んで、葉山さんを経理部までお送りして、あっちの課長に事情説明してたら遅くなっちまいました。すまんね」
「いえいえ、そういう事情でしたらやむ無しです。お二人が無事でよかったです」
「……俺に笑顔を向けないでくれる?」
「何言ってるんですか?」
「あっちで立花の同期が恐ろしい顔で睨んでるんだ。俺はまだ死にたくない」
先輩が指さした方を見ると、戸部先輩と長谷川が話していた。
どっちもこちらは見ていないけど?
でも先輩に聞き返す前に課長が手を叩き、朝礼が始まったので、結局何のことかは分からずじまいだった。
***