鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
「立花」

「んー……」

「おい、立花。……そろそろ起きろ、美颯」

「うえ……?」

「起きろって。どんだけ寝る気だよ」


 目を覚ますと、長谷川が呆れたように苦笑していた。

 ……なんか甘い匂いがする。


「いい匂いがする」

「本当に食いしん坊だよな。焼きマシュマロ作ったんだよ」

「最高」


 勢いよく起き上がったら笑われたけど、しょうがないじゃん。

 焼きマシュマロ! 話には聞くけど、実物を見るのは初めてだ。


 長谷川と一緒に外のソファに座ると、目の前の焚き火台にはマシュマロを刺した串が立てかけてあった。ソファ横のミニテーブルにはクラッカーとチョコまで並んでいて、本当に至れり尽くせりだ。


「調べたら、ソーセージやきりたんぽを焼いてもいいし、焼き芋とか焼きおにぎりも美味いらしいぞ」

「次回はぜひ!!」

「次があったらな。今日はそこのクラッカーとチョコとマシュマロ食って帰ろう」

「はーい」


 間違いのないおいしさだった。

 不味いわけがないじゃん!!


 炭の焦げる香ばしい匂いに、溶けたマシュマロの甘ったるい香りが混ざって食欲をそそる。


「はわー……おいしー」

「だなあ。焼いただけなんだけど、うめーな」


 美味しすぎて、マシュマロはあっという間になくなっちゃった。

 残念だけど仕方ない。今度自分でもやってみようかな。


 焚火の片付けは長谷川に任せて、私はベッドを整え、お弁当箱を洗い場でさっと洗って片付けておく。

 帰りもバスと電車を乗り継いで帰った。


「今日はありがと。すごく楽しかった」


 そう言うと、長谷川が目を細めた。その表情に、なんだかそわそわする。


「こちらこそ。……また、行こう」

「うん。えっと、また明日」

「ああ、おやすみ、立花」

「……おやすみ」


 ひらひらと手を振って自分の部屋に戻った。

 扉を閉めて、弁当箱をシンクで先に洗っておく。

 シャワーを浴びて、晩ごはんも食べないままベッドに倒れ込んだ。


 ……昼寝から起こされたとき、名前を呼ばれた気がしたけど、気のせいかな。

 気のせいじゃなかったら、あれはどういうつもりだったんだろう。散歩中に手をつないでいたのは、どうして。

 もし、気のせいじゃなかったのなら、長谷川はどういうつもりなの。


 昼寝したせいか、全然眠れない夜だった。
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