鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
 そのまま何駅か先で電車を降りて、長谷川のあとについて歩く。

 そして着いた先は、黒塀と立派な門構えが目を引く、恐ろしく格式高そうな料亭だった。


「……長谷川さん?」

「うん?」

「あの、『行きたい飯屋』って、まさか、ここ……?」


 涙が引っ込んだ。

 ここ、あれだ。政治家とかが会談するような、ドレスコードのありそうな料亭なんだけど!?


「うん。うまいぞ」

「お、美味しいだろうけどさ!?」


 そら美味しかろうよ!

 でも急にこんな高級店に連れて来られても、心の準備なんてまるでできていない。

 ストッキングに穴開いてないよね? なんて場違いなことを確認したくなるくらい、私はテンパっていた。


「ここで揉めると店に迷惑だし、客に見られたら店のイメージ下がるから黙ってついてこい」

「あの、ドレスコード!」


 長谷川は肩を竦めて、私を上から下まで眺めた。


「大丈夫だろ」


 そりゃ長谷川はスーツだからいいけどさ、私はかなりカジュアル寄りのオフィカジだ。でも私が反論する間もなく、長谷川はさっさと門をくぐって行ってしまった。置いて行かれそうになって、私は慌ててあとを追う。


 門を抜けた先には、灯籠と手入れの行き届いた低木に挟まれた薄暗い小道が続いていた。

 さっきまで都会の喧騒の中にいたのに、門をくぐった途端に空気が静まり返る。その落差が怖いくらいだ。

 小道の先、数十メートルほど奥に、やわらかな灯りを漏らす建物の入口が見えた。


「よくぞお越し下さいました。こちらへ」


 その建物の手前で、着物姿の女将さんが頭を下げていた。

 そのまま玄関を上がり、磨き込まれた廊下を奥へと進む。庭園が見渡せる小部屋に案内されると、女将さんは丁寧に頭を下げて去って行った。

 私と長谷川の間には黒塗りの座卓が鎮座している。


「料理は俺の方で予約の時に頼んでおいたから、待っとけ」

「う、うん……」

 待って、いくらすんの、ここ……。

 財布の中身を確認させてほしい。できれば口座残高も確認したい。いや、確認したところでどうにもならない気もするけど。それくらいのお店だよね、ここって。


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