鬼同期が家だとオカンだったし、その後スパダリに進化した
 ――長谷川紫月は苦手な同期だった。

 辛辣で、言葉がキツくて、仕事ができて偉い人たちからの覚えがいいから、なかなか言葉遣いを指摘できなかった。

 でも実際は家庭的で、料理が得意で、面倒見もいい。気付けば私は生活を立て直されて、ごはんを食べさせられて、実家にまで連れて行かれて……。


 顔を上げたら長谷川がこっちを見ていた。下がった目尻と緩んだ口元が、何も言わないのに雄弁で、ああもう恥ずかしい。


「なにくねくねしてるんだ」

「や、なんか恥ずかしくて」

「何が?」

「この状況が」

「嫌?」

「ううん。ぜんぜん」


 そう答えたら、紫月が吹き出した。

 なんなのさ。


「俺、美颯のそういう潔いところ、すごく好き」

「そっ、そうかな……」


 目を逸らして歩くけど、逆に紫月の声が耳元で聞こえるようになっちゃってそわそわして仕方ない。


「うん。好き」


 さっき手加減してって言ったのに!!

 でも、できないって言われたね……。


 紫月を見上げたら、街灯に照らされた顔で、やっぱり目を細めて私を見ていて、もうって感じ。


「危ないから前向きなよ」

「さっきから百面相してて、面白いからさ」

「面白い言うなし」

「なら、かわいい」

「もー!」


 恥ずかしいから早足で歩いた。

 手は繋いだままだから、紫月も当たり前みたいについてきてるんだけどさ。


「美颯って誕生日いつ?」


 紫月が「そういえば」とこちらを見た。


「六月」

「過ぎてるじゃねえか」

「そっちは?」

「一月。俺ら、同期なのにそんなことも知らないんだよなあ」

「入社してから部署も一緒なのにね」

「本当だよ。だから、美颯のこと教えてくれ」

「うん。私にも紫月のことたくさん教えてね」


 途中でコンビニに寄ってコーヒーを買い、空を見上げたら星がたくさん見えた。ぼんやり眺めていたら、紫月が隣に並んで同じように空を見上げた。


「さっきの返事さ、勢いとかじゃないよな?」

「どうだろう」


 紫月がギョッとした顔で私を見た。

 いや、そういう意味じゃないんだけど。


「あのね、私、結婚とか考えたことなくてさ。だから親云々は流れで言っちゃったんだけど、でも紫月がそうしたいって言うなら、私もちゃんと考えるよ」

「……そっか」


 また手が重なって、私たちはゆっくり歩き出した。

 そんな話をしながら歩いているうちに、マンションの最寄り駅までやってきた。

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