離れた後の恋の仕方
水瀬のマンションにお泊り保育をした週明け、四つ葉に行くとビルの前で仁に会い、ロビーの所にあるソファに対面で座る。

「この間はご免」
「風呂場で倒れたって三斗から聞いた時は驚いた」
「空腹のままお風呂に入ったから、それが理由」

仁が倒れた理由を話し、成る程ねぇ。空腹のままお風呂は倒れるだろ。

「一美と三斗が駆けつけてくれて良かったね」
「帰りに後頭部をお見舞いされたけど」
「2人に心配かけたんだから、当たり前だろ」
「稔だって、その痣の原因は稔が悪いんだろ」
「綴じファイルの角はマジで痛いと思ったし、仁の右手のお見舞いの方がマシだと思った」

仁が高坂さんじゃなくて稔って呼ぶのは一美が関係する時や、俺と2人きりの時になる状態だ。

「それと…、三斗から聞いたよ。俺と一美のこと、ずっと気にかけてくれてありがとう」
「男に礼を言われると、気持ち悪い」
「そう?御礼は素直に受け取って欲しいな」
「もう一美から離れないで」
「勿論。離れてもずっと好きでいたんだから、そうならないよ」
「それなら良いけど」

仁がソファから立ち上がったので、俺も立って2人で階段を上がる。

「6月号の表紙は亮二が引き受ける」
「三輪っちの表紙は久しぶりだけど、あの“自分の目”で撮るアングルは秋山が相当へこむ気持ちは分かるよ」
「俺も自分にはない目を持っている亮二が羨ましい」
「仁が三輪っちに出会ってくれて良かったよ」
「俺の隣が空席じゃなかったら、亮二は座らなかった」
「へぇ、俺と一美の場合と一緒だ」
「そうなの?」

仁が珍しく興味を向ける。

「そうだよ。あれがなかったら一美と仁達に出会えなかったから、今でも鮮明に覚えている」

3階で別れ、俺は専務室に入り、まだ橘が来ていないから椅子に座り、ふぅと息を吐いて椅子の向きを外側にして一美との出会いを思い出した。
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