離れた後の恋の仕方
荒木と知り合って数カ月、今日も学食へ行って荒木の姿を探す。

講義は一緒の時もあればそうじゃないのもあって、会えない時間は早く終われよって思いながら講義を受けていた。

学食の窓側のテーブル席の方へ顔を向けたら荒木と祐一が対面で座りながら学食を頬張っていて、何だよ、俺だって荒木と食べたくて探していたのにと悶々としながら学食の炒飯を注文して、学食のおばちゃんから受け取って足早で2人の所に行く。

祐一の隣にドカっと座り、2人はきょとんとした。

「2人で楽しそうにして、俺も混ぜてよ」
「良いわよ」
「あの教授の講義って長いよな」
「おかげでこんな時間だよ」

せっかく荒木とご飯をゆっくり食べたかったのにとムスッとしながらレンゲで炒飯をバクッと食べ、祐一は俺の態度に苦笑する。

「教授の単位は必須だから、今年は受けておかないと」
「そうだけどさ。長すぎるって」
「高坂君は経営者を目指しているの?」

荒木が俺の進路に興味を持って、パスタをひと言パクっと食べる。

「親父が出版社に勤めていてさ、ゆくゆくは自分の出版社を作りたいらしく、俺も跡を継ぐし、大学で学ぶべき物はどんどん知りたくて。あと、本を作ることの経験をしたいから、大学でもテニスサークルの他に自分で本を作るサークルを立ち上げようかなと思っているんだ」

俺も炒飯をバクッと食べ、もぐもぐと口を動かして飲み込んだ。

「俺が親父の会社に入ったら、祐一の力が凄く必要だし、一緒にどう?」
「そうなの?就職活動くらいはさせてよ」
「え〜、祐一と一緒なら親父よりも会社をデカく出来るし、祐一ってすげぇ居心地がいいんだよね」

俺が祐一に笑顔を向けると、祐一はやれやれとした表情でいる。

「稔が役職に就いたら給与をはずんでよ」
「勿論。めっちゃ給与を良くする」

俺達が将来のことを話していると、荒木は温かく見守っている。

「荒木の将来はどうなの?」
「ん〜、私も親が不動産屋を経営していて、その跡を継ぐかなぁ」
「わぉ。1人暮らし用に部屋を探しているんだけど、良い物件ってありそう?」
「友情価格は出来ないわよ」

荒木がゆっくりとカフェラテを飲む。

「それは残念」
「これでも商売をしているんだし、紹介はするけど契約はうちのお父さんが担当者だから頑張って交渉してね」
「ハードルが高いほど燃えるし、任せてよ」
「その自信が凄いね」

荒木も祐一と同じ様にやれやれとして、カフェラテを飲んだ。

そっか、お互い親の仕事を継ぐのか。1つ目の共通点を見つけたと心の中で嬉しい自分がいて、ニヤけるのを誤魔化すために炒飯を頬張る。

「次の講義に行くから、またサークルでね」
「おう」

荒木が先に食器を下げて学食の出口を出て行き、俺も炒飯を平らげようとバクバク食べる。

「1人暮らしって、相変わらず親御さんと仲が悪いんだね」

祐一の言葉に俺は炒飯をゴクッと食べ、コップに入った水をゴクゴク飲むんで、ぷはっと唇を離す。

「毎日母親の小言に付き合うのも疲れるし、夫婦仲も少し悪いし、自分だけの空間が欲しい」

両親の仲も悪いと家に帰ったって空気が沈んでいるし、好きな音楽だってゆっくり聴けないし、本だって落ち着いて読めやしない。

ふと俺の隣に座る祐一の顔を見たら何とも言えない表情でいて、あー、しまった。

「……ご免、空気悪くした」
「俺こそ稔の家の事情を知っているのに無神経だった」
「いーや。祐一のせいじゃない。ま、1人暮らししたら、遊びに来てよ」
「兵藤達と遊びに行くよ」
「喜んで。次の講義の後さ、さっき話した本を作るサークルの立ち上げ、早速やろうと思う」
「良いね。俺も将来稔の会社に入ったら役に立てるように、そのサークルの立ち上げメンバーに入りたいな」

嬉しい事を言ってくれちゃって、稔、嬉しい。

「すげぇ嬉しい。教授の承認も必要だからさ、一緒に行こうよ」

俺は右手を握り拳で差し出すと、祐一も右手でゴツンと拳をぶつけ合い、2人でニカッとした。
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