離れた後の恋の仕方
佐々木とスマホのメッセージで待ち合わせ時間を決め、最近俺が気に入っているもつ煮の上手い店で合流した。

テーブル席に通されて対面で座り、アルコールの瓶を一本、つまみとなる一品料理を幾つか頼んで俺が瓶を持って佐々木のグラスにアルコールを注ぐと、佐々木も俺のグラスにアルコールを注ぎ、乾杯をしてグビッと飲むと、仕事終わりのアルコールは美味しいね。

「まさか佐々木に会うとは」
「俺もだよ。入って来た瞬間、全く見た目が変わってないと思った」
「そう?格好いい男は健在でしょ?」
「その言い方、大学時代からだな」

そっちも一美と同じ言い方だな。

出された料理をバクバクと食べたり、飲んだり、卒業後の進路の話になる。

「稔は何処で働いているんだ?」
「親父が創った出版社で、今は専務。雑誌の編集長もしていたよ」
「へぇ、本を作ることを叶えたのか」
「叶えたというか、親父の打診だけどね。いや〜、売り上げを気にしないと行けないし、メンバーのケアもするから、想像以上に毎日が忙しかった。専務になっても会社全体というか、3雑誌の事で頭いっぱい」

食事をしながら四つ葉の話をし始め、佐々木も転職して今の職業に就いたとのこと。

「俺も和菓子って想像以上に繊細で作られているし、今でも師匠に駄目だしされまくっているけど、『美味しい』の言葉で報われる」

佐々木は目を細めながらアルコールを飲む。

「因みに仁が俺の後任でスポーツ部の編集長をしている」
「ええ?!そうなの?」
「ああ。履歴書とエントリーシートを送っていたのを知らなくて、面接の部屋にリクルートスーツを着て入って来た瞬間、驚きすぎて人事に後で滅茶苦茶怒られた」
「いや、驚くでしょ。仁君ももう大人かぁ」
「俺が初めて仁に出会ったのは本人が高校生だけど、もう30過ぎてるよ」
「そうか、そうだよな」

俺と仁が初めて会ったのは佐々木と一美を介してだけど、まさか就職先を四つ葉出版社にするとは思わなかった。

「今も一美と一緒?」

佐々木の何気ない言葉に、手に持った箸がピタっと止まる。

「あー…、俺の家の都合で5年前に離れた」
「はぁ?何だよそれ」

俺の言葉に佐々木の眉間のシワが深く寄る。

「でも“社会科見学”がきっかけで、もう一度会いに行った」
「復縁って事?」
「確実に復縁とは言えない。『離れた分を上書きするから覚悟して』っては言った」
「マジかぁ」

佐々木は箸を置いて、腕を組む。

「俺さ、大学時代にお前にすげぇライバル心を持っていたぞ」
「わぉ。俺もだけど」
「幼馴染みの腐れ縁という縁に安心しきってたけど、どうして会ったばかりの奴に一美が心を向けるんだよって」
「それを言われるとなぁ。俺だって大学で出会う前の一美を沢山知っている佐々木に滅茶苦茶嫉妬したけど」

俺は豆腐を食べて、アルコールも飲んでグラスをコトンと机の上に置いた。

「稔と話すようになったのって、仁君の家庭教師の代理を任せたときだっけ?」
「そう。一美ともっと話せるかもってラッキ~と思ったね。実際そこで一美と仲良くなるきっかけになったし」
「任せるんじゃなかった」
「何処にチャンスが転がっているか、分かんないもんな」

そこから佐々木と大学時代の話に盛り上がった。
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