離れた後の恋の仕方
あー、役員会議ではつまんない話ばかりで早く終わらないかと我慢し続け、親父の話で終わり、おっさん達は出て行き、この後はこの会議室で水瀬達との話しをすることになっている。
「一旦、橘を呼びに行くか」
俺も会議室を出て行き、専務室に行って橘を呼び出し、また会議室に入る。
「お留守番中は何か連絡とかあった?」
「総務課の星野さんから郵便物を受け取り、伝票の送り主は先日参加した創刊号パーティーでお会いした後藤編集長からでした」
「そうか、中身は何だと書いてあった?」
「“書籍”とありました」
「きっと創刊号かな。後で読むよ。教えてくれてありがと」
俺達はドア近くの席で座っているとドアが開き、水瀬と副編集長が入って来て対面に座る。
「お忙しい中、時間をありがとうございます」
「いーって。水瀬達との話しは好きだし、早速だけどどんな話?」
水瀬はプライベートだと友人の様にするけど、四つ葉では“編集長モード”に切り替えるので、敬語が多くなる。
「最近、副編集長と話しているのが読者アンケートの声で『カップルの着回しコーデ』の声があり、現在男性のモデルは起用してこなかったので、このタイミングでどうかなと思っています」
「メンズかぁ。読者層とマッチするメンズっている?芸能人枠になると先方からの要望というか、細かい制約があるから慎重にしないとだよ」
水瀬達が新しい形を模索するのは分かるし、芸能人だとイメージ戦略があるから慎重になるざる得ないんだよね。
「いきなり芸能人より現在起用している女性モデルの事務所にメンズ枠があって、うちの副編と一緒に提案してみよう思うので、この資料を読んで貰えますか?」
水瀬は事前に準備をしていたのか俺に数枚束になった資料を差し出し、どれどれとじぃっと読む。
資料にはここ半年の『Clover』と他社のファッション雑誌のモデルの違いを比較したもので、確かにうちはほぼ女性だしメンズって昨年の季刊でちょろっとしか出てないな。
「メンズを起用したとして、それはレギュラー?それと単発?」
「単発で考えていて、レギュラーですと企画に合わない場合もあるので、其々のページにあったモデルをどうかなと。副編も同じ意見です」
「そうなの?」
水瀬の意見を聞いて、俺は副編に顔を向ける。
「ええ。1人に絞るよりも、スーツが似合う、カジュアルが似合う等、男性も合う合わないがありますので、其々を推しています」
「成る程ねぇ。ね、橘はここまで聞いてどう思った?」
今度は橘に顔を向けると、俺以外の3人はえっ?!という顔をする。
「わ、私の意見ですか?」
「そっ。橘も四つ葉の一員だし、聞かせてよ」
「相変わらず巻き込むのが大好きですね」
橘は動揺し、水瀬は俺の他人を巻き込む術を知っているから苦笑する。
「いいじゃん。俺よりも橘が読者層の年齢が少し近いんだから」
「そうですね…、私は自分の着回しコーデに役に立つページなら読みますけど、もしお付き合いする人が出来たら、相手の服装がどんなかを知っておくと自分はどんな服装にしたらいいかの参考にはなると思います。ー…で、いいでしょうか?」
橘が意見を伝えると副編は直ぐ様メモを取り、ニコッと微笑む。
「ありがとうございます!次の部数会議迄にもう少し内容を見つめ直します」
「そうだね。こうして意見を聞くともっとアプローチが出来そうなので、凄く助かりました」
「こちらこそ…」
副編と水瀬の2人は前向きにとらえ、橘も少しホッとしたような表情でいる。
「次の部数会議は夏に向けて6月号と7月号について話し合うし、あの経理課のおっさんに負けないようにね」
「すんなりいかないのが辛いですよ」
「まー…あの性格はね。他に話すことはある?」
「そうですね。7月号は浴衣の特集なので、久しぶりに屋外での撮影予定です」
「お、良いねぇ」
水瀬も経理課のおっさんに対して愚痴る気持ちが分かるし、浴衣か…、一美の浴衣姿を久しぶりに見たいなと思った。
「俺達からの話は以上です」
「オッケー。色々聞けて良かったし、あ、水瀬はここに残って。橘は先に戻っていいよ」
「分かりました」
「俺も失礼します」
橘と副編は先に出て行き、会議室は俺と水瀬だけになった。
「次はどんな無茶振りの話を?」
「そんなに警戒しないでよ。無茶振りじゃなくてさ、この前はお泊まり保育をさせて貰ってありがとう」
「ううん。高坂さんとじっくり話すのってBar以外で無かったし、凄く新鮮だったよ」
今は2人だけだから口調も友人モードになる。
「水瀬の部屋ってお洒落な家具があって、流石ファッション部の編集長だと思った」
「ちょっと背伸びしてソファは拘ったよ。次は姫川達も一緒にね」
「そうだな。クッション投げの対決はしたいし、次は美味しいワインと、水瀬が好きそうな和菓子系のお店を知ったから楽しみにしてよ」
「楽しみにする」
「あ、今日の夜に“凄く大切な人”と5年ぶりのデートなんだ」
「良いね。楽しんでね」
「おう」
デート前のわくわくさが我慢できなくて、水瀬に話すと本人は嬉しい様に微笑んでくれて、俺もニカッとする。
2人で会議室を出て行き、俺は専務室に戻り、昼食を食べて午後の仕事も張り切った。
営業と新しい書店に挨拶周りをし、何処の書店もうちみたいな規模の出版社を置いてもらうには売り上げの実績を見られるので営業も俺も資料を見せつつ売り込みを頑張る。
数店舗を周り、時間は夕方になって四つ葉に戻り、橘と明日のスケジュールを確認して先に橘を上がらせた。
俺は次の部数会議で書店周りの事や6月号と7月号の事をどうやって聞けていくか考えるけど、おっさんがなぁ、編集長3人組に部数会議でのおっさんの事をメッセージで送ると、返事が届いたので開く。
『あのおっさん、早く退職しねぇのか?』
『ネチネチ言うのは流石に飽きるよ』
姫川と水瀬はこう言った返事だけど、仁は既読だけで返事がない。また会議が終わるのをただ待つだけか…、たまにはあのおっさんに反抗してみろよって思うけど、仁は感情をあまり出さないからあのおっさんに言われっぱなしになるんだよ。
あー、経理課の若手に交代させたい。
腕時計を見るとそろそろ行かないと、待たせたら駄目だし、行くか。
俺は改めて荷物を纏め、専務室に置いた自分用の衣装棚の鏡でスーツに皺がないか、髪も手ぐしで整えて5年ぶりのデートに向けて専務室を出て行った。
「一旦、橘を呼びに行くか」
俺も会議室を出て行き、専務室に行って橘を呼び出し、また会議室に入る。
「お留守番中は何か連絡とかあった?」
「総務課の星野さんから郵便物を受け取り、伝票の送り主は先日参加した創刊号パーティーでお会いした後藤編集長からでした」
「そうか、中身は何だと書いてあった?」
「“書籍”とありました」
「きっと創刊号かな。後で読むよ。教えてくれてありがと」
俺達はドア近くの席で座っているとドアが開き、水瀬と副編集長が入って来て対面に座る。
「お忙しい中、時間をありがとうございます」
「いーって。水瀬達との話しは好きだし、早速だけどどんな話?」
水瀬はプライベートだと友人の様にするけど、四つ葉では“編集長モード”に切り替えるので、敬語が多くなる。
「最近、副編集長と話しているのが読者アンケートの声で『カップルの着回しコーデ』の声があり、現在男性のモデルは起用してこなかったので、このタイミングでどうかなと思っています」
「メンズかぁ。読者層とマッチするメンズっている?芸能人枠になると先方からの要望というか、細かい制約があるから慎重にしないとだよ」
水瀬達が新しい形を模索するのは分かるし、芸能人だとイメージ戦略があるから慎重になるざる得ないんだよね。
「いきなり芸能人より現在起用している女性モデルの事務所にメンズ枠があって、うちの副編と一緒に提案してみよう思うので、この資料を読んで貰えますか?」
水瀬は事前に準備をしていたのか俺に数枚束になった資料を差し出し、どれどれとじぃっと読む。
資料にはここ半年の『Clover』と他社のファッション雑誌のモデルの違いを比較したもので、確かにうちはほぼ女性だしメンズって昨年の季刊でちょろっとしか出てないな。
「メンズを起用したとして、それはレギュラー?それと単発?」
「単発で考えていて、レギュラーですと企画に合わない場合もあるので、其々のページにあったモデルをどうかなと。副編も同じ意見です」
「そうなの?」
水瀬の意見を聞いて、俺は副編に顔を向ける。
「ええ。1人に絞るよりも、スーツが似合う、カジュアルが似合う等、男性も合う合わないがありますので、其々を推しています」
「成る程ねぇ。ね、橘はここまで聞いてどう思った?」
今度は橘に顔を向けると、俺以外の3人はえっ?!という顔をする。
「わ、私の意見ですか?」
「そっ。橘も四つ葉の一員だし、聞かせてよ」
「相変わらず巻き込むのが大好きですね」
橘は動揺し、水瀬は俺の他人を巻き込む術を知っているから苦笑する。
「いいじゃん。俺よりも橘が読者層の年齢が少し近いんだから」
「そうですね…、私は自分の着回しコーデに役に立つページなら読みますけど、もしお付き合いする人が出来たら、相手の服装がどんなかを知っておくと自分はどんな服装にしたらいいかの参考にはなると思います。ー…で、いいでしょうか?」
橘が意見を伝えると副編は直ぐ様メモを取り、ニコッと微笑む。
「ありがとうございます!次の部数会議迄にもう少し内容を見つめ直します」
「そうだね。こうして意見を聞くともっとアプローチが出来そうなので、凄く助かりました」
「こちらこそ…」
副編と水瀬の2人は前向きにとらえ、橘も少しホッとしたような表情でいる。
「次の部数会議は夏に向けて6月号と7月号について話し合うし、あの経理課のおっさんに負けないようにね」
「すんなりいかないのが辛いですよ」
「まー…あの性格はね。他に話すことはある?」
「そうですね。7月号は浴衣の特集なので、久しぶりに屋外での撮影予定です」
「お、良いねぇ」
水瀬も経理課のおっさんに対して愚痴る気持ちが分かるし、浴衣か…、一美の浴衣姿を久しぶりに見たいなと思った。
「俺達からの話は以上です」
「オッケー。色々聞けて良かったし、あ、水瀬はここに残って。橘は先に戻っていいよ」
「分かりました」
「俺も失礼します」
橘と副編は先に出て行き、会議室は俺と水瀬だけになった。
「次はどんな無茶振りの話を?」
「そんなに警戒しないでよ。無茶振りじゃなくてさ、この前はお泊まり保育をさせて貰ってありがとう」
「ううん。高坂さんとじっくり話すのってBar以外で無かったし、凄く新鮮だったよ」
今は2人だけだから口調も友人モードになる。
「水瀬の部屋ってお洒落な家具があって、流石ファッション部の編集長だと思った」
「ちょっと背伸びしてソファは拘ったよ。次は姫川達も一緒にね」
「そうだな。クッション投げの対決はしたいし、次は美味しいワインと、水瀬が好きそうな和菓子系のお店を知ったから楽しみにしてよ」
「楽しみにする」
「あ、今日の夜に“凄く大切な人”と5年ぶりのデートなんだ」
「良いね。楽しんでね」
「おう」
デート前のわくわくさが我慢できなくて、水瀬に話すと本人は嬉しい様に微笑んでくれて、俺もニカッとする。
2人で会議室を出て行き、俺は専務室に戻り、昼食を食べて午後の仕事も張り切った。
営業と新しい書店に挨拶周りをし、何処の書店もうちみたいな規模の出版社を置いてもらうには売り上げの実績を見られるので営業も俺も資料を見せつつ売り込みを頑張る。
数店舗を周り、時間は夕方になって四つ葉に戻り、橘と明日のスケジュールを確認して先に橘を上がらせた。
俺は次の部数会議で書店周りの事や6月号と7月号の事をどうやって聞けていくか考えるけど、おっさんがなぁ、編集長3人組に部数会議でのおっさんの事をメッセージで送ると、返事が届いたので開く。
『あのおっさん、早く退職しねぇのか?』
『ネチネチ言うのは流石に飽きるよ』
姫川と水瀬はこう言った返事だけど、仁は既読だけで返事がない。また会議が終わるのをただ待つだけか…、たまにはあのおっさんに反抗してみろよって思うけど、仁は感情をあまり出さないからあのおっさんに言われっぱなしになるんだよ。
あー、経理課の若手に交代させたい。
腕時計を見るとそろそろ行かないと、待たせたら駄目だし、行くか。
俺は改めて荷物を纏め、専務室に置いた自分用の衣装棚の鏡でスーツに皺がないか、髪も手ぐしで整えて5年ぶりのデートに向けて専務室を出て行った。