離れた後の恋の仕方
やがて一美が顔を上げ、視線が絡み合い、俺は顔を近づけると一美は瞼を綴じ、俺は一美のおでこに唇を付けてそっと唇を離すと、一美は瞼を開けて恨めしそうに俺をじぃっと見ちゃって。
「ご希望に沿って、“ここ”が良かった?」
俺は右手の親指で一美の唇をなぞると、一美は瞳が揺れる。
「な?!」
「外だし、これでもすっげー我慢してるんだけど」
本当なら唇を重ねたかったけど、今はそうじゃないし、唇を重ねられる日はまだ先だと思う。
「我慢というのが生々しいんだけど」
「そこは男子なんで」
「ほんと、稔って面白い」
「面白いかぁ。優しいね、じゃなくて?」
冗談を言い合うと、一美の表情も良くなってきてる。
「3年位前にね、向こうが荒木不動産屋に部屋を探しに来たの」
「狙って?」
「偶然。家業を話していなかったから、本当に偶然だったの」
そこから一美は当時の事を話し、向こうも独身でいたから復縁を何度も告げられたけど、一美は頑として首を縦に振らなかったとのことで、その理由は期待しても良いのか。
「縦に振らなかった理由、聞いても良い?」
「私の性格、分かっているでしょ?」
「まぁね。これでも今彼なんで」
「今彼ねぇ」
「え?違うの?!」
「ん〜、どうでしょうねぇ」
一美がいたずらっぽく言うけど、そんなすんなりに彼氏のポジションには戻れないか。
「稔こそ、離れていた間は言い寄ってきた人はいるんでしょ?」
「ここでそれを聞くのかぁ。よく四つ葉の社員達から『高坂専務、素敵ですぅ』とか言われるよ」
「本当に?社交辞令を真に受けてるでしょ?」
「本当だって〜」
一美の表情は俺の好きな可愛い笑顔だし、それを見れただけでも満足だ。
すると一美はベンチから立って、俺に振り向いた。
「ねぇ、稔」
「ん〜、どうした?」
「…………ありがとう。もう“元カレ”のこと、大丈夫」
大丈夫って言うけど…、俺もベンチから立つ。
「これからは俺がその“元カレ”を消し去るくらい上書きするから、覚悟して」
「うん、上書きして」
「勿論」
俺は缶を手放して一美を抱き締めると、一美も俺の背中に手を回し、缶が2個落ちる音がした。
「今日みたく、いつでも甘えてよ」
「うん」
「本当に大丈夫って言うまで側にいるからさ」
「……うん、あり…と…」
背中に回された一美の手の力が強まってスーツがグシャってなるけど、今はどうだっていい。
一美は大丈夫って言うけれど、“凄く大切な人”の心にこんなにも残るのがその“元カレ”だったのが悔しくて切なくて、でもそれを伝えることは絶対に出来ないから、その気持ちが溢れないように蓋をかけ、俺は一美の背中を優しく叩き、一美は俺の胸元に顔を深く埋めた。
暫くして一美の手の力が弱くなって、俺も抱きしめていた腕をそっとほどき、地面に落ちた缶を2つ拾ってゴミ箱に入れた。
「駅まで送る」
「うん、ありがと」
手を握り、公園から出て駅に向かう。
「今度、仕事終わりに一美の所に行っても良い?」
「良いけど、お父さん達がいない日にしたいわ」
「そうする。左手が飛んできたら嫌だし」
「そうね。お母さんの左手、私より強いもの」
お互い笑い、駅が見えてきて、一美が先に改札に入ったのを見送り、俺はタクシーを捕まえて家に向かう中で、車窓からの景色をぼうっと眺める。
『最低でしょ?』
一美の心が少しでも穏やかになるのなら、どんどん俺を利用していいし、この役目は誰にも獲られたくないし、譲るつもりもない。
佐々木とは面と向かって言い合えたけど、“元カレ”とはあれっきり見ることはないが、心に残っていると手強そうだし、上書きするって言ったけど時間はかかるかも。
小さく溜め息を吐いていたらスマホが揺れたので取り出すと、仁からメッセージを受け取ったので開いた。
『3日後、おっさんを黙らせる様にする』
お?珍しくかなり強気になっているから、どうしたんだ?まぁ、やる気になって良いけど。
『オッケー。3日後、会議室でね』
俺はそう手短に返信して、家に帰っていった。
「ご希望に沿って、“ここ”が良かった?」
俺は右手の親指で一美の唇をなぞると、一美は瞳が揺れる。
「な?!」
「外だし、これでもすっげー我慢してるんだけど」
本当なら唇を重ねたかったけど、今はそうじゃないし、唇を重ねられる日はまだ先だと思う。
「我慢というのが生々しいんだけど」
「そこは男子なんで」
「ほんと、稔って面白い」
「面白いかぁ。優しいね、じゃなくて?」
冗談を言い合うと、一美の表情も良くなってきてる。
「3年位前にね、向こうが荒木不動産屋に部屋を探しに来たの」
「狙って?」
「偶然。家業を話していなかったから、本当に偶然だったの」
そこから一美は当時の事を話し、向こうも独身でいたから復縁を何度も告げられたけど、一美は頑として首を縦に振らなかったとのことで、その理由は期待しても良いのか。
「縦に振らなかった理由、聞いても良い?」
「私の性格、分かっているでしょ?」
「まぁね。これでも今彼なんで」
「今彼ねぇ」
「え?違うの?!」
「ん〜、どうでしょうねぇ」
一美がいたずらっぽく言うけど、そんなすんなりに彼氏のポジションには戻れないか。
「稔こそ、離れていた間は言い寄ってきた人はいるんでしょ?」
「ここでそれを聞くのかぁ。よく四つ葉の社員達から『高坂専務、素敵ですぅ』とか言われるよ」
「本当に?社交辞令を真に受けてるでしょ?」
「本当だって〜」
一美の表情は俺の好きな可愛い笑顔だし、それを見れただけでも満足だ。
すると一美はベンチから立って、俺に振り向いた。
「ねぇ、稔」
「ん〜、どうした?」
「…………ありがとう。もう“元カレ”のこと、大丈夫」
大丈夫って言うけど…、俺もベンチから立つ。
「これからは俺がその“元カレ”を消し去るくらい上書きするから、覚悟して」
「うん、上書きして」
「勿論」
俺は缶を手放して一美を抱き締めると、一美も俺の背中に手を回し、缶が2個落ちる音がした。
「今日みたく、いつでも甘えてよ」
「うん」
「本当に大丈夫って言うまで側にいるからさ」
「……うん、あり…と…」
背中に回された一美の手の力が強まってスーツがグシャってなるけど、今はどうだっていい。
一美は大丈夫って言うけれど、“凄く大切な人”の心にこんなにも残るのがその“元カレ”だったのが悔しくて切なくて、でもそれを伝えることは絶対に出来ないから、その気持ちが溢れないように蓋をかけ、俺は一美の背中を優しく叩き、一美は俺の胸元に顔を深く埋めた。
暫くして一美の手の力が弱くなって、俺も抱きしめていた腕をそっとほどき、地面に落ちた缶を2つ拾ってゴミ箱に入れた。
「駅まで送る」
「うん、ありがと」
手を握り、公園から出て駅に向かう。
「今度、仕事終わりに一美の所に行っても良い?」
「良いけど、お父さん達がいない日にしたいわ」
「そうする。左手が飛んできたら嫌だし」
「そうね。お母さんの左手、私より強いもの」
お互い笑い、駅が見えてきて、一美が先に改札に入ったのを見送り、俺はタクシーを捕まえて家に向かう中で、車窓からの景色をぼうっと眺める。
『最低でしょ?』
一美の心が少しでも穏やかになるのなら、どんどん俺を利用していいし、この役目は誰にも獲られたくないし、譲るつもりもない。
佐々木とは面と向かって言い合えたけど、“元カレ”とはあれっきり見ることはないが、心に残っていると手強そうだし、上書きするって言ったけど時間はかかるかも。
小さく溜め息を吐いていたらスマホが揺れたので取り出すと、仁からメッセージを受け取ったので開いた。
『3日後、おっさんを黙らせる様にする』
お?珍しくかなり強気になっているから、どうしたんだ?まぁ、やる気になって良いけど。
『オッケー。3日後、会議室でね』
俺はそう手短に返信して、家に帰っていった。