離れた後の恋の仕方
“じゃんけん対決”の翌日、午前中はパソコンのメールソフトに送られてきたメールを1通ずつ内容を確認し返信をしていき、橘は総務課の星野さんから受け取った郵便物を確認している。
「書店からのお葉書が数十枚と、健康診断のお知らせ、後はホテルからの封筒が1通ですね」
「ありがと。このメールの返信が終わったら、其々の手紙を読むね」
「はい」
橘は席を立って俺の方に来ると専務室のドアが開いて、仁が入ってきた。
「これから鷲尾さんの所に行ってくる」
あれ?
「ねぇ、仁って何かあった?」
「………………別に」
「その間が気になるけど、無いならいいんだ」
「部数も決まったし、青木印刷所に間に合うようにする」
「うん、頼むね」
「分かった。行ってくる」
仁はそう言うと専務室を出て行き、何だろ、淡々とした言い方はいつもだけれど、な~んか雰囲気が違うような気がしたんだけどな。
「橘はさっきの仁を見て、どう思った?」
「え?あー…、受け答えはいつも通りの感じがしましたが」
「ふぅん、俺の気のせいかな」
「高坂専務は荒木編集長を下のお名前で呼ぶんですね」
「ああ、あいつに姉ちゃんがいるんだけど、それ経由で知り合って、向こうから『仁って呼んで』って言われているんだ。一応上司と部下の関係もあるから、荒木って呼ぶ時もあるけどね」
「そうなんですね」
俺が仁の事を話すと橘は少しだけ嬉しそうな表情をするので、お?もしかして…、いや、ここで聞くとなると余計なお世話か。
仁の様子がいつもと違うなって思ったのはそれから3日も続き、本人はあまり詮索されるのは嫌そうだけど、仕事で行き詰まっているなら解決しないといけないが…、久しぶりにサシで飲もうかな。
三斗の店だと話す気配もないだろうし、最近見つけたホテルの上層階にあるレストランでなら本人も話せると思う。このレストランは夜景が綺麗と聞くし、一美を誘って過ごしたいけど、先ずは下見したいし、仁を誘ってみようと決めた。
専務室で仕事をしてそろそろ昼だなと思い、先に橘を出て行かせ、今日は何を食べようかなと思っていたら、専務室のドアがノックされ、ドアが開くと水瀬が入ってくる。
「これからお昼なんだけど、【もりや】に行かない?仁もシンクロの取材の後から合流するって」
「行く!」
最近は1人のお昼だったし、編集長3人組と夜じゃなくてお昼に集まるのも良いな。
俺はるんるんで水瀬に連れられ一緒に【もりや】というお店に訪れ、良い雰囲気のお店で店員さんも明るく出迎えてくれ、先に席を取ってくれた姫川の隣に座り、対面の1つに水瀬が座った。
「そろそろ荒木も来る頃だろ」
「早朝からシンクロの取材で移動しているし、忙しそうだね」
姫川と水瀬は店員さんから出された湯呑みを持って、お茶を啜る。
「ねぇ、仁って最近編集部で会っている?」
俺の質問に姫川と水瀬が顔を見合わす。
「スポーツ部が3階に行ってから昼間は会わないけど、ここ最近は夕方とかには編集部に来て、自分の席で原稿を書いているよ」
「新人のガキも荒木に会っていないから、宿題を見てもらえてないって言ってたな」
「うん、言っていたね。宝条さんは入ったばかりなのに、遅くまで頑張ってくれてるよね」
「もう少し関わり方をきちんとしろって言いてぇ」
水瀬と姫川が仁の様子を話し、仁は俺より長く編集長になって8年は経つけど関わり方か…、姫川の方が仁と水瀬より先に入っているから編集部としての暦は長くて、色々な人物を見てきているからそう思うか。
すると【もりや】のドアが開いていつもの白シャツの仁が入って来て、俺の対面にドカっと座った。
「取材と見学、終わった」
「7月号のメインの1つにするんだっけ」
「そう。1年取材をさせてもらって、季刊からの成長を追った内容で攻める」
「1年もなんて凄いね」
「あの季刊から1年は経ったのかよ。早ぇな」
仁もお茶を啜り、4人で季刊の時期を思い出して同時にはぁと溜め息を吐く。
「あの時のスポーツ部の殆どは高坂さんの事を恨んだと思う」
「そう?めちゃ出来栄えが良かったじゃん」
「通常の雑誌の進行も重なっていたし、制作の中畑は直ぐにでも転職が出来る神殿に行きたいってボヤいていた」
「ファッション部も間違って原稿を取り違えそうになったし、同時進行はこりごりだよ」
「九条も女々しい言葉ばかりでいたが、最後までやりきってたから、大したもんだ」
仁と水瀬は愚痴っぽくなっているけど、姫川だけは九条ちゃんの事を労っていて、表情も相手を想っている様に見えた。
【もりや】のドアが開いて九条ちゃん、星野さんが入ってきて、最後に宝条さんまで入ってきて、この3人が一緒になんて珍しいな…、ん?仁は後ろを振り向かないでいるけど、少しそわそわしているように感じる。
「お昼を食べようよ」
水瀬の言葉で意識を切り替え、運ばれた料理は手作り感が伝わる温かい料理で、箸で摘んで口に運ぶと全身に美味しさが行き渡ってとても美味しい。
林さんが俺達が住む家に来る前は母親がよく作っていた味に近くて、とても懐かしいし、少し心がキュッと切なくなったけど、味はとても美味しくて一美にもここのお店に連れて来たいと思った。
「………」
仁は黙々と料理を口に運ぶのはいつも通りと言えるけど、空気がなぁ。何かあった?って質問しても『別に』って返ってきそうだし、姉の一美も仁の口数が少ない事に嘆いていたっけ。
俺達は先に食事を終え、星野さん達は美味しそうに料理を食べていて微笑ましいなぁ、この3人を見ていたら姉妹の様に見えてきて、兄弟とかいないひとりっ子の俺としては妹とか弟がいたら超溺愛しそう。
仁達は先に四つ葉に戻り、俺は【もりや】に残って宝条さんの隣に座り、入社してからの様子を聞く限り他のメンバーとも上手くやっているみたいでホッとした。
スポーツ部は男の比率が多いし、女子メンバーとなると制作の篠田がいるから宝条さん的にはホッとするのかもしれないな。
星野さん達は四つ葉で出会ったからメッセージグループを作ることで盛り上がり、俺は3人の雰囲気から『四つ葉の三姉妹』と言う名前を提案すると快諾され、3人は嬉しそうに盛り上がった。
四つ葉に戻って、夜は仁とサシで飲もうかなと思って会議室に行って本人を誘うも、『先約があるから無理』とピシャリとドアを閉められ、付き合い悪いなぁ。
スーツの内ポケットに閉まってあるスマホが揺れたので取り出したら、一美からメッセージを受け取っていたので即開く。
『今夜、お父さん達が出張でいないから家に来る?』
わ…、一美からのお誘いに仁から断られて凹んでいた気持ちが吹っ飛んだのって、俺って単純だな。
『行く!仕事を完璧に終わらせるから、終わったらすぐ行く!!』とメッセージと動物が走るスタンプを添えて返信し、るんるんで専務室に戻っていった。
「書店からのお葉書が数十枚と、健康診断のお知らせ、後はホテルからの封筒が1通ですね」
「ありがと。このメールの返信が終わったら、其々の手紙を読むね」
「はい」
橘は席を立って俺の方に来ると専務室のドアが開いて、仁が入ってきた。
「これから鷲尾さんの所に行ってくる」
あれ?
「ねぇ、仁って何かあった?」
「………………別に」
「その間が気になるけど、無いならいいんだ」
「部数も決まったし、青木印刷所に間に合うようにする」
「うん、頼むね」
「分かった。行ってくる」
仁はそう言うと専務室を出て行き、何だろ、淡々とした言い方はいつもだけれど、な~んか雰囲気が違うような気がしたんだけどな。
「橘はさっきの仁を見て、どう思った?」
「え?あー…、受け答えはいつも通りの感じがしましたが」
「ふぅん、俺の気のせいかな」
「高坂専務は荒木編集長を下のお名前で呼ぶんですね」
「ああ、あいつに姉ちゃんがいるんだけど、それ経由で知り合って、向こうから『仁って呼んで』って言われているんだ。一応上司と部下の関係もあるから、荒木って呼ぶ時もあるけどね」
「そうなんですね」
俺が仁の事を話すと橘は少しだけ嬉しそうな表情をするので、お?もしかして…、いや、ここで聞くとなると余計なお世話か。
仁の様子がいつもと違うなって思ったのはそれから3日も続き、本人はあまり詮索されるのは嫌そうだけど、仕事で行き詰まっているなら解決しないといけないが…、久しぶりにサシで飲もうかな。
三斗の店だと話す気配もないだろうし、最近見つけたホテルの上層階にあるレストランでなら本人も話せると思う。このレストランは夜景が綺麗と聞くし、一美を誘って過ごしたいけど、先ずは下見したいし、仁を誘ってみようと決めた。
専務室で仕事をしてそろそろ昼だなと思い、先に橘を出て行かせ、今日は何を食べようかなと思っていたら、専務室のドアがノックされ、ドアが開くと水瀬が入ってくる。
「これからお昼なんだけど、【もりや】に行かない?仁もシンクロの取材の後から合流するって」
「行く!」
最近は1人のお昼だったし、編集長3人組と夜じゃなくてお昼に集まるのも良いな。
俺はるんるんで水瀬に連れられ一緒に【もりや】というお店に訪れ、良い雰囲気のお店で店員さんも明るく出迎えてくれ、先に席を取ってくれた姫川の隣に座り、対面の1つに水瀬が座った。
「そろそろ荒木も来る頃だろ」
「早朝からシンクロの取材で移動しているし、忙しそうだね」
姫川と水瀬は店員さんから出された湯呑みを持って、お茶を啜る。
「ねぇ、仁って最近編集部で会っている?」
俺の質問に姫川と水瀬が顔を見合わす。
「スポーツ部が3階に行ってから昼間は会わないけど、ここ最近は夕方とかには編集部に来て、自分の席で原稿を書いているよ」
「新人のガキも荒木に会っていないから、宿題を見てもらえてないって言ってたな」
「うん、言っていたね。宝条さんは入ったばかりなのに、遅くまで頑張ってくれてるよね」
「もう少し関わり方をきちんとしろって言いてぇ」
水瀬と姫川が仁の様子を話し、仁は俺より長く編集長になって8年は経つけど関わり方か…、姫川の方が仁と水瀬より先に入っているから編集部としての暦は長くて、色々な人物を見てきているからそう思うか。
すると【もりや】のドアが開いていつもの白シャツの仁が入って来て、俺の対面にドカっと座った。
「取材と見学、終わった」
「7月号のメインの1つにするんだっけ」
「そう。1年取材をさせてもらって、季刊からの成長を追った内容で攻める」
「1年もなんて凄いね」
「あの季刊から1年は経ったのかよ。早ぇな」
仁もお茶を啜り、4人で季刊の時期を思い出して同時にはぁと溜め息を吐く。
「あの時のスポーツ部の殆どは高坂さんの事を恨んだと思う」
「そう?めちゃ出来栄えが良かったじゃん」
「通常の雑誌の進行も重なっていたし、制作の中畑は直ぐにでも転職が出来る神殿に行きたいってボヤいていた」
「ファッション部も間違って原稿を取り違えそうになったし、同時進行はこりごりだよ」
「九条も女々しい言葉ばかりでいたが、最後までやりきってたから、大したもんだ」
仁と水瀬は愚痴っぽくなっているけど、姫川だけは九条ちゃんの事を労っていて、表情も相手を想っている様に見えた。
【もりや】のドアが開いて九条ちゃん、星野さんが入ってきて、最後に宝条さんまで入ってきて、この3人が一緒になんて珍しいな…、ん?仁は後ろを振り向かないでいるけど、少しそわそわしているように感じる。
「お昼を食べようよ」
水瀬の言葉で意識を切り替え、運ばれた料理は手作り感が伝わる温かい料理で、箸で摘んで口に運ぶと全身に美味しさが行き渡ってとても美味しい。
林さんが俺達が住む家に来る前は母親がよく作っていた味に近くて、とても懐かしいし、少し心がキュッと切なくなったけど、味はとても美味しくて一美にもここのお店に連れて来たいと思った。
「………」
仁は黙々と料理を口に運ぶのはいつも通りと言えるけど、空気がなぁ。何かあった?って質問しても『別に』って返ってきそうだし、姉の一美も仁の口数が少ない事に嘆いていたっけ。
俺達は先に食事を終え、星野さん達は美味しそうに料理を食べていて微笑ましいなぁ、この3人を見ていたら姉妹の様に見えてきて、兄弟とかいないひとりっ子の俺としては妹とか弟がいたら超溺愛しそう。
仁達は先に四つ葉に戻り、俺は【もりや】に残って宝条さんの隣に座り、入社してからの様子を聞く限り他のメンバーとも上手くやっているみたいでホッとした。
スポーツ部は男の比率が多いし、女子メンバーとなると制作の篠田がいるから宝条さん的にはホッとするのかもしれないな。
星野さん達は四つ葉で出会ったからメッセージグループを作ることで盛り上がり、俺は3人の雰囲気から『四つ葉の三姉妹』と言う名前を提案すると快諾され、3人は嬉しそうに盛り上がった。
四つ葉に戻って、夜は仁とサシで飲もうかなと思って会議室に行って本人を誘うも、『先約があるから無理』とピシャリとドアを閉められ、付き合い悪いなぁ。
スーツの内ポケットに閉まってあるスマホが揺れたので取り出したら、一美からメッセージを受け取っていたので即開く。
『今夜、お父さん達が出張でいないから家に来る?』
わ…、一美からのお誘いに仁から断られて凹んでいた気持ちが吹っ飛んだのって、俺って単純だな。
『行く!仕事を完璧に終わらせるから、終わったらすぐ行く!!』とメッセージと動物が走るスタンプを添えて返信し、るんるんで専務室に戻っていった。