離れた後の恋の仕方
会食をする料亭の前にタクシーが停車し、俺は精算して降りると、橘はこの料亭の佇まいに緊張しているのが分かる。
そういえば去年総務課と俺と青木印刷所の接待で此処に来た時も、総務課の星野さんは緊張していたっけ。
「普段はコンビニのお昼等なので、緊張します」
「そう思うのはしょうがないけど、此処の料理は美味しいから橘も気に入ると思うよ。じゃあ、行くよ〜」
俺が先に向かうと着物を来た女性従業員が入り口に立っており、俺達に微笑む。
「お待ちしておりました、先方の方達は未だですのでお先にお部屋までご案内します」
「ありがとう。こちらは俺の仕事をいつも助けてくれる秘書なので、とびっきり美味しいお昼をお願いね」
「かしこまりました。お任せください」
俺は従業員に橘のお昼を頼み、中に入って靴を脱ぎ、橘は待機室になっている部屋に通され、俺はその隣の和室に入った。
和室の中は座布団が4枚で、こじんまりとした会食なんだなと思いながら親父たちの到着を待つことにし、先に下座の座布団に座る。
この料亭で食事をするのって青木印刷所との接待以来だし、懐かしいな。
あの時は星野さんが元カレに危ない目に合うかもと思って助け、その後は三斗のお店に行って星野さんから水瀬に会いに行くよう、姫川と仁、三斗達と一緒に彼女の背中を押したっけ。
水瀬に会いにBarを出て行った星野さんの姿を見守りながら思ったのは、『俺と一美の様になって欲しくない』ー…という気持ちがあって、2人が上手く行った時は超嬉しかった。
和室の襖が開いて親父が入ってきて、俺の右隣に座る。
「今日“も”見合いかと思った」
「今日“は”ただの食事だ」
親父がそういうとまた襖が開いて、配膳をする従業員がお茶菓子と湯呑みを乗せたお盆を手に持ちながら入り、静かに机の上に置いて親父、俺の順に湯呑みとお茶菓子を置くと和室を出て行った。
「『Focus』によく広告を出している住宅展示場を運営している会社があるだろう」
「あるね。関東の地域を中心に戸建ての住宅展示場を作っていて、今日の会食の相手がそうなの?」
「ああ。今度はマンションの展示場を始めるらしく、その話もしたいらしい」
「手広くするねぇ」
「生き残る為には色んな手段を模索するだろう。お前もふらふら出かけていないで、次の展望は考えておらんのか」
親父は湯呑みを手にして茶を啜る。
「考えているけど、仕事のストレスを解消する為にふらふらするんだろ」
俺も湯呑みを持ってお茶を飲んでいると襖が開いてスーツ姿の男性2人が入ってきたので、湯呑みを机の上に置いて姿勢を正す。
俺の対面は若い男性が座り、年齢は20代って橘が言っていたけど、木暮や木村と歳が近そうだ。
「お忙しい中、お時間を頂きましてありがとう御座います。隣にいるのは息子の仙道一(せんどうはじめ)です」
「一です。今は営業の部署で勉強をさせていただいています」
一さんがスーツの内ポケットに手を入れて名刺ケースを取り出し、俺も自分のスーツの内ポケットから名刺ケースを取り出してお互いの名刺を交換した。
「挨拶は此処までで、早速食事をしましょう」
そこからはお昼を食べながら仙道さん達が手掛ける展示場の話や『Focus』の話を交えて会食が進み、食後の甘味と新しく淹れてもらったお茶を嗜む。
「今は一にマンションの展示場を担当させていまして、広告について後日一から四つ葉さんに伺わせて頂きます」
「かしこまりました。経理に木暮という社員がいまして、彼に仙道さんの事を伝えます」
「ありがとうございます」
俺が仙道さんに木暮の事を伝えると、一さんも礼儀正しくお辞儀するので、真面目な青年って感じがするな。
親父と仙道さんはお手洗いに行くために席を外し、俺と一さんだけになる。
「この間、四つ葉さんのスポーツ雑誌を読みました」
「有難うございます。素晴らしいメンバー達が奮闘して作っているので、こうして手に取って読んでいただけるのが嬉しいです」
「様々なスポーツを取り上げていてどれも読み応えがあり、写真も素敵な物が多いですね」
「そうなんですよ。部下達には“自分の目”で撮るように伝えていますので、俺も部下達が撮った写真を見るのが楽しみなんです」
「専属のカメラマンではなくて、本人が撮るんですね」
一さんは目を輝かせながら“Scoperta”の話を聞き、俺も話しがいがあるなと思いながら“Scoperta”や2つの雑誌について話していると、親父達が戻ってきた。
「随分盛り上がっているな」
「四つ葉さんの雑誌の話をしていたんだけど、凄く楽しかった」
一さんは楽しそうに仙道さんに言うのをみると、こっちも嬉しいね。
「読んでいただいているのが伝わりましたし、今後発売される雑誌を楽しみにしていて下さい」
「はい!今度僕が担当するマンションの展示場にお越しください。是非ご案内をしたいです」
「ええ、是非」
2人で右手で差し出して握手し、先に仙道さん達が退出し、俺は和室を出て隣の待機室のドアを開けて橘を呼ぶ。
「ランチは美味しかった?」
「はい、取引先の秘書さんとご一緒でいただきました」
「ゆっくり出来てなにより。四つ葉に戻ろうか」
「かしこまりました」
「私はまだ行くところがあるから、此処で失礼する」
「へいへい」
親父を見送り、俺も橘と一緒に四つ葉に戻り、3雑誌の進捗を確認しながら1日を終えた。
そういえば去年総務課と俺と青木印刷所の接待で此処に来た時も、総務課の星野さんは緊張していたっけ。
「普段はコンビニのお昼等なので、緊張します」
「そう思うのはしょうがないけど、此処の料理は美味しいから橘も気に入ると思うよ。じゃあ、行くよ〜」
俺が先に向かうと着物を来た女性従業員が入り口に立っており、俺達に微笑む。
「お待ちしておりました、先方の方達は未だですのでお先にお部屋までご案内します」
「ありがとう。こちらは俺の仕事をいつも助けてくれる秘書なので、とびっきり美味しいお昼をお願いね」
「かしこまりました。お任せください」
俺は従業員に橘のお昼を頼み、中に入って靴を脱ぎ、橘は待機室になっている部屋に通され、俺はその隣の和室に入った。
和室の中は座布団が4枚で、こじんまりとした会食なんだなと思いながら親父たちの到着を待つことにし、先に下座の座布団に座る。
この料亭で食事をするのって青木印刷所との接待以来だし、懐かしいな。
あの時は星野さんが元カレに危ない目に合うかもと思って助け、その後は三斗のお店に行って星野さんから水瀬に会いに行くよう、姫川と仁、三斗達と一緒に彼女の背中を押したっけ。
水瀬に会いにBarを出て行った星野さんの姿を見守りながら思ったのは、『俺と一美の様になって欲しくない』ー…という気持ちがあって、2人が上手く行った時は超嬉しかった。
和室の襖が開いて親父が入ってきて、俺の右隣に座る。
「今日“も”見合いかと思った」
「今日“は”ただの食事だ」
親父がそういうとまた襖が開いて、配膳をする従業員がお茶菓子と湯呑みを乗せたお盆を手に持ちながら入り、静かに机の上に置いて親父、俺の順に湯呑みとお茶菓子を置くと和室を出て行った。
「『Focus』によく広告を出している住宅展示場を運営している会社があるだろう」
「あるね。関東の地域を中心に戸建ての住宅展示場を作っていて、今日の会食の相手がそうなの?」
「ああ。今度はマンションの展示場を始めるらしく、その話もしたいらしい」
「手広くするねぇ」
「生き残る為には色んな手段を模索するだろう。お前もふらふら出かけていないで、次の展望は考えておらんのか」
親父は湯呑みを手にして茶を啜る。
「考えているけど、仕事のストレスを解消する為にふらふらするんだろ」
俺も湯呑みを持ってお茶を飲んでいると襖が開いてスーツ姿の男性2人が入ってきたので、湯呑みを机の上に置いて姿勢を正す。
俺の対面は若い男性が座り、年齢は20代って橘が言っていたけど、木暮や木村と歳が近そうだ。
「お忙しい中、お時間を頂きましてありがとう御座います。隣にいるのは息子の仙道一(せんどうはじめ)です」
「一です。今は営業の部署で勉強をさせていただいています」
一さんがスーツの内ポケットに手を入れて名刺ケースを取り出し、俺も自分のスーツの内ポケットから名刺ケースを取り出してお互いの名刺を交換した。
「挨拶は此処までで、早速食事をしましょう」
そこからはお昼を食べながら仙道さん達が手掛ける展示場の話や『Focus』の話を交えて会食が進み、食後の甘味と新しく淹れてもらったお茶を嗜む。
「今は一にマンションの展示場を担当させていまして、広告について後日一から四つ葉さんに伺わせて頂きます」
「かしこまりました。経理に木暮という社員がいまして、彼に仙道さんの事を伝えます」
「ありがとうございます」
俺が仙道さんに木暮の事を伝えると、一さんも礼儀正しくお辞儀するので、真面目な青年って感じがするな。
親父と仙道さんはお手洗いに行くために席を外し、俺と一さんだけになる。
「この間、四つ葉さんのスポーツ雑誌を読みました」
「有難うございます。素晴らしいメンバー達が奮闘して作っているので、こうして手に取って読んでいただけるのが嬉しいです」
「様々なスポーツを取り上げていてどれも読み応えがあり、写真も素敵な物が多いですね」
「そうなんですよ。部下達には“自分の目”で撮るように伝えていますので、俺も部下達が撮った写真を見るのが楽しみなんです」
「専属のカメラマンではなくて、本人が撮るんですね」
一さんは目を輝かせながら“Scoperta”の話を聞き、俺も話しがいがあるなと思いながら“Scoperta”や2つの雑誌について話していると、親父達が戻ってきた。
「随分盛り上がっているな」
「四つ葉さんの雑誌の話をしていたんだけど、凄く楽しかった」
一さんは楽しそうに仙道さんに言うのをみると、こっちも嬉しいね。
「読んでいただいているのが伝わりましたし、今後発売される雑誌を楽しみにしていて下さい」
「はい!今度僕が担当するマンションの展示場にお越しください。是非ご案内をしたいです」
「ええ、是非」
2人で右手で差し出して握手し、先に仙道さん達が退出し、俺は和室を出て隣の待機室のドアを開けて橘を呼ぶ。
「ランチは美味しかった?」
「はい、取引先の秘書さんとご一緒でいただきました」
「ゆっくり出来てなにより。四つ葉に戻ろうか」
「かしこまりました」
「私はまだ行くところがあるから、此処で失礼する」
「へいへい」
親父を見送り、俺も橘と一緒に四つ葉に戻り、3雑誌の進捗を確認しながら1日を終えた。