離れた後の恋の仕方
電車が自宅の最寄り駅に到着し、改札を出て歩いて自宅に向かいながらさっきの出来事を振り返る。
荒木不動産屋に入るまでは一美のお母さんからの一発を覚悟をしていたけど、実際はお父さんからの一発で、とても重みがあった。
俺に対して沢山言いたいことがあっただろうに、あの右手1つのお見舞いで終えた事に、この人はこの先も越えられないなと思う。
良いな…、俺にも親父がいるけれど、お父さんの元で育った仁や三斗が超羨ましくて、少し妬ける。
もうすぐで自宅だなと歩いていたら、家の前に祐一が立っていて、俺に右手を上げた。
「おかえり」
「ただいま。療養中なのに、大丈夫?」
「俺のことより稔だろ。ご両親には会えた?」
「…………お父さんから右手を一発、後頭部にお見舞いされた」
俺が顛末を話すと祐一は神妙な表情になる。
「近くで車を停めてるから、ドライブをしようよ」
「良いの?」
「勿論。この家で聞くよりいいだろ」
「………有難う」
祐一と一緒に自宅から離れて時間制の駐車場に行き、祐一の車の助手席に座り、車は都内を走り、高速道路のレーンに入る。
「夕飯がまだだろ?サービスエリアで食べよう」
「そうだな。手土産の和菓子しか食べてない」
俺は助手席の背もたれに深く身体を沈ませ、ようやく緊張して張り詰めた空気から解放された……。
「お母さんからの一発を覚悟していたけどさ」
「うん」
「振り上げた左手をお父さんが掴んで、空いている右手で俺の後頭部を思いっきり叩(はた)いた」
「避けなかったんだ」
「当たり前じゃん。その一発に色んな思いが込められていたし、一発で終わらせたお父さんが凄いよ」
俺は高速道路から見える車窓の景色に視線を向ける。
「俺の親父には無い温かさを持っていて、仁達が超羨ましい」
「…………」
無い物ねだりって分かっていて、祐一は無言で運転を続ける。
「最後は俺達の今後の事を見守るって」
「そっか…」
「帰りもさ、お父さんが南◯駅まで付き添ってくれて…」
「うん」
「『君なら大丈夫だ』って…、あんなに傷つけてし…た…に…」
思い出すだけで視界が滲み、鼻を何度も啜る。
「稔、頑張ったね。お疲れ様」
「…ああ」
「お、サービスエリアが見えてきた」
祐一はサービスエリアの駐車場に車を停車して、2人で降りてフードコートに行き、和菓子しか食べてないからご飯系としてオムライスを頼み、祐一はラーメンを選んで、食事を受け取って空いているテーブル席で座って食べ始める。
「療養中はシンプルなご飯しか食べれなくて、こういうのを食べたかったんだ」
「味がしないのってテンションが下がるよな」
俺もスプーンでオムライスを掬って食べ、祐一も麺を啜ったり、スープを飲んだりと、2人で遅めの夕飯を食べる。
「次の通院で復帰の時期が分かるよ」
「兵藤が勤める病院にいたんだっけ?」
「うん。入院した日にわざわざ部屋まで来てくれてさ、白衣は似合っていたし、同室の人にも優しく接していたし、良いお医者さんって思った」
「ちゃんと夢を叶えて医者になったのは凄いよな。この前、後藤が創った雑誌のパーティーに行ったけど、同じ出版社業界に友達がいるのは嬉しいね」
俺はオムライスをバクッと食べる。
「後藤に会いたかったな」
「凄く頑張っているし、俺も3雑誌がもっと読者に手に取って欲しいね」
「仁君達はいつも頑張ってくれているね」
「うん。あ、聞いてよ、この間の部数会議でさ経理課のおっさんに仁がー…って事があって、最高の結末だった」
俺は“じゃんけん対決”の経緯を話すと、祐一は手に持っていたお箸を落とさないように握って笑いをこらえている。
「あの仁君がそういう事を言い出すなんて…くく…」
「面白いだろ?会議ではずっと黙ってやり過ごすのが多いのに、あの対決は祐一にも見て欲しかったぁ」
「三井部長も相当悔しがっていただろ?」
「ブスッとしていて、取り巻き野郎達が必死にご機嫌を取っていた」
2人で笑い、食器を片付けてフードコートを出て車に乗り、高速道路を走り出す。
「療養中なのに、有難う」
「一美君のご両親に会うって聞いて、ずっと気になっていたし、電話よりも会って聞きたかったから」
「祐一のそういう所、俺は良いと思う」
「有難う。次は稔のご両親だね」
「親父より母親がなぁ」
一美のお父さんも俺の母親の事を気にするくらい、母親って手強いからな。
「確かに。未だ見合いを進めてくるんでしょ?」
「いい加減、諦めろよって思う」
「俺もそう思う」
2人で同時にはぁっと溜め息を吐いて、車が自宅の前に停車し、俺は祐一の方に顔を向ける。
「復帰する日が決まったら連絡して。復帰祝いに美味しいもつ煮を食べに行こうよ」
「うん、連絡する」
俺は車から降りて祐一を見送り、玄関に入って階段を上がって自分の部屋に入り、ベットにドサっと横になった。
「疲れた」
やっとご両親に会えて俺達の事を言えて、精神的にまだ疲れが取れないな。
するとスーツの内ポケットに閉まってあるスマホの着信音で身体を起こし、スマホを取って画面を見たら『着信:一美』だったので、通話ボタンを押す。
「もしも〜し、家に帰っているよ」
『うん…、今日はお父さん達に会ってくれてありがと…』
「どーいたしまして。帰りに祐一に会ってさ、祐一も俺達のことを聞いてホッとしていた」
『私達は色んな人達に気にかけて貰えてるわね』
「ああ、そうだな。でもこれで堂々と一美に会いに荒木不動産屋に行けるから、行って良かった」
『そうね』
「とびっきり美味しいカフェラテを飲みに行けなかったから、早速だけど明日はどう?一美の行きたい場所にも行こうよ」
『ありがとう』
「それじゃあ待ち合わせはー…」
俺達は明日の待ち合わせについて、沢山話しながら決めていった。
荒木不動産屋に入るまでは一美のお母さんからの一発を覚悟をしていたけど、実際はお父さんからの一発で、とても重みがあった。
俺に対して沢山言いたいことがあっただろうに、あの右手1つのお見舞いで終えた事に、この人はこの先も越えられないなと思う。
良いな…、俺にも親父がいるけれど、お父さんの元で育った仁や三斗が超羨ましくて、少し妬ける。
もうすぐで自宅だなと歩いていたら、家の前に祐一が立っていて、俺に右手を上げた。
「おかえり」
「ただいま。療養中なのに、大丈夫?」
「俺のことより稔だろ。ご両親には会えた?」
「…………お父さんから右手を一発、後頭部にお見舞いされた」
俺が顛末を話すと祐一は神妙な表情になる。
「近くで車を停めてるから、ドライブをしようよ」
「良いの?」
「勿論。この家で聞くよりいいだろ」
「………有難う」
祐一と一緒に自宅から離れて時間制の駐車場に行き、祐一の車の助手席に座り、車は都内を走り、高速道路のレーンに入る。
「夕飯がまだだろ?サービスエリアで食べよう」
「そうだな。手土産の和菓子しか食べてない」
俺は助手席の背もたれに深く身体を沈ませ、ようやく緊張して張り詰めた空気から解放された……。
「お母さんからの一発を覚悟していたけどさ」
「うん」
「振り上げた左手をお父さんが掴んで、空いている右手で俺の後頭部を思いっきり叩(はた)いた」
「避けなかったんだ」
「当たり前じゃん。その一発に色んな思いが込められていたし、一発で終わらせたお父さんが凄いよ」
俺は高速道路から見える車窓の景色に視線を向ける。
「俺の親父には無い温かさを持っていて、仁達が超羨ましい」
「…………」
無い物ねだりって分かっていて、祐一は無言で運転を続ける。
「最後は俺達の今後の事を見守るって」
「そっか…」
「帰りもさ、お父さんが南◯駅まで付き添ってくれて…」
「うん」
「『君なら大丈夫だ』って…、あんなに傷つけてし…た…に…」
思い出すだけで視界が滲み、鼻を何度も啜る。
「稔、頑張ったね。お疲れ様」
「…ああ」
「お、サービスエリアが見えてきた」
祐一はサービスエリアの駐車場に車を停車して、2人で降りてフードコートに行き、和菓子しか食べてないからご飯系としてオムライスを頼み、祐一はラーメンを選んで、食事を受け取って空いているテーブル席で座って食べ始める。
「療養中はシンプルなご飯しか食べれなくて、こういうのを食べたかったんだ」
「味がしないのってテンションが下がるよな」
俺もスプーンでオムライスを掬って食べ、祐一も麺を啜ったり、スープを飲んだりと、2人で遅めの夕飯を食べる。
「次の通院で復帰の時期が分かるよ」
「兵藤が勤める病院にいたんだっけ?」
「うん。入院した日にわざわざ部屋まで来てくれてさ、白衣は似合っていたし、同室の人にも優しく接していたし、良いお医者さんって思った」
「ちゃんと夢を叶えて医者になったのは凄いよな。この前、後藤が創った雑誌のパーティーに行ったけど、同じ出版社業界に友達がいるのは嬉しいね」
俺はオムライスをバクッと食べる。
「後藤に会いたかったな」
「凄く頑張っているし、俺も3雑誌がもっと読者に手に取って欲しいね」
「仁君達はいつも頑張ってくれているね」
「うん。あ、聞いてよ、この間の部数会議でさ経理課のおっさんに仁がー…って事があって、最高の結末だった」
俺は“じゃんけん対決”の経緯を話すと、祐一は手に持っていたお箸を落とさないように握って笑いをこらえている。
「あの仁君がそういう事を言い出すなんて…くく…」
「面白いだろ?会議ではずっと黙ってやり過ごすのが多いのに、あの対決は祐一にも見て欲しかったぁ」
「三井部長も相当悔しがっていただろ?」
「ブスッとしていて、取り巻き野郎達が必死にご機嫌を取っていた」
2人で笑い、食器を片付けてフードコートを出て車に乗り、高速道路を走り出す。
「療養中なのに、有難う」
「一美君のご両親に会うって聞いて、ずっと気になっていたし、電話よりも会って聞きたかったから」
「祐一のそういう所、俺は良いと思う」
「有難う。次は稔のご両親だね」
「親父より母親がなぁ」
一美のお父さんも俺の母親の事を気にするくらい、母親って手強いからな。
「確かに。未だ見合いを進めてくるんでしょ?」
「いい加減、諦めろよって思う」
「俺もそう思う」
2人で同時にはぁっと溜め息を吐いて、車が自宅の前に停車し、俺は祐一の方に顔を向ける。
「復帰する日が決まったら連絡して。復帰祝いに美味しいもつ煮を食べに行こうよ」
「うん、連絡する」
俺は車から降りて祐一を見送り、玄関に入って階段を上がって自分の部屋に入り、ベットにドサっと横になった。
「疲れた」
やっとご両親に会えて俺達の事を言えて、精神的にまだ疲れが取れないな。
するとスーツの内ポケットに閉まってあるスマホの着信音で身体を起こし、スマホを取って画面を見たら『着信:一美』だったので、通話ボタンを押す。
「もしも〜し、家に帰っているよ」
『うん…、今日はお父さん達に会ってくれてありがと…』
「どーいたしまして。帰りに祐一に会ってさ、祐一も俺達のことを聞いてホッとしていた」
『私達は色んな人達に気にかけて貰えてるわね』
「ああ、そうだな。でもこれで堂々と一美に会いに荒木不動産屋に行けるから、行って良かった」
『そうね』
「とびっきり美味しいカフェラテを飲みに行けなかったから、早速だけど明日はどう?一美の行きたい場所にも行こうよ」
『ありがとう』
「それじゃあ待ち合わせはー…」
俺達は明日の待ち合わせについて、沢山話しながら決めていった。