離れた後の恋の仕方
一美のお父さんのお願いでマンションの展示場に行くことになり、一美と共に建設予定のマンションの展示場になっている場所へと向かう。
「階数はタワーというより、8階建ての日当たり良好、最寄りのスーパーには徒歩5分、小学校への通学に10分以内として建設予定ですって」
「俺が住む都心だとタワーが多いし、南◯駅近辺の物件としては丁度良い高さだな」
歩きながら展示場について話をする。
「自分が住んでいる街がどんどん変わっていくのを見ると、少し寂しいわ」
「ずっと住んでいればそうか」
「うん。私が2歳の頃にお父さんが南◯駅近辺に不動産屋を開業して、そこからずっとよ」
一美が真っ直ぐ前を見ながら話す顔は寂しげで、俺は左手で一美の右手を握り、俺も真っ直ぐ前を見ながら歩く。
「思い出がいっぱいある場所って良いと思う」
「ありがとう。そろそろ展示場の場所がー…、あれだわ」
一美が指で展示場のノボリを指し、へぇ、意外と人も集まっていて、そういえばあまり住宅展示場に来た事が無いし、さっきお店で一美に言った『将来一緒に住む時の間取りの参考』って本心なんだよね。
その新しい住まいで一美とじぃさん、ばあさんになっても一緒で過ごせるって最高だし、その時の仁達はどんな風に…、その未来に向けて進むためには俺の母親の事と、四つ葉をバカでかくしなくちゃ。
展示場の入り口には受付の腕章をしたスーツ姿の女性が立っており、俺達に気づくと近づいてきた。
「こんにちは!ご来場、有難うございます」
「こんにちは。新居を検討していて、見学をしても良いですか?」
「是非!此方の机にて受付をお願いします」
俺が女性に申し出をすると、その人は満面の営業スマイルで受付場所まで俺達を誘導し、案内されたテーブル席に座る。
「先ずは簡単なアンケートのご記入をお願いします。そしてご記入が終わりましたら、お声掛けをお願いします」
女性は1枚の用紙とペンを置き、一度離れ、一美がペンを手に取ってアンケート用紙に記入をし始め、俺は記入が終わるまで待つ。
「ん〜、来場の目的…」
一美がその項目の記入欄の所でペンが止まっている。
「『将来一緒に住む時の参考に』って書かないの?」
「しつこい!」
一美はペンを握ったまま俺に顔を向けて怒るけど、そんなに強く言わなくてもいいのに。
「バカ正直にお父さんのお願いって書けないだろ?」
「………確かにそうだけど…、まだ稔と一緒に住むなんー…」
一美はハッとして言葉を止めて、すぐ顔をアンケート用紙の方に向ける。そんな気まずい顔をしちゃって…一緒に住むまでの道のりはまだまだ先のようだと心の中で呟く。
「ご免…」
「いーや。とりあえず、今回は『両親の老後の住まいの検討』って書いておこうよ。お父さんのお願いに近いし」
「うん、そうするわ」
記入欄に訪れた理由を書き、俺は一美が書き終わった所で受付の女性を呼び、女性はアンケート用紙を黙読してニコッと微笑む。
「ご家族の将来を見据えているなんて、お優しいですね。案内の担当者をお呼びしますので、お待ちください」
「………」
「………」
受付の女性が立ち去り、俺達の間は無言になるけど、さっきの事を気にしてんだろうな。
「みのー…」
「高坂さん!ご来場、有難うございます!」
「どーも」
一美が言いかけた途中で現れたのは仙道一さんで、まさか本人が登場するとは…、しかも凄く嬉しそうにしているから、俺も営業スマイルで挨拶する。
「本日は僕がご案内致しますので、よろしくお願いします」
「今日は彼女のご両親の住まいについてだから、良い間取りってある?」
「ございます!この展示場にはファミリー向け、シニア向けの間取りもございますので、後者の間取りをご紹介します」
仙道さんがパンフレットを手に取って席を立ち、俺達も仙道さんの誘導で展示場の中を入り、一美の表情も気まずさから少しだけ変わって、内装をじぃっと見る。
「此方のパンフレットをどうぞ」
「ありがとうございます」
「先ず玄関からですが、シニア向けの場合、靴を脱ぐ場合に高さがありますと躓いたりしますのでー…」
仙道さんは一美にパンフレットを渡し、そして玄関、帰宅後の動線を意識した間取り、お手洗い等、シニア向けの間取りを1つ1つ丁寧に俺達に案内してくれて、一美もプライベートと言うよりも不動産屋の表情で細かく設備を見ていた。
「お風呂ですけど、父が腰を痛めていますので滑って転倒のリスクを減らしたいので、滑りにくいタイルに変更は出来ますか?」
「出来ます。滑りにくい素材も幾つかございますし、お掃除の際も水はけが良いものなどご検討出来ます」
「ありがとうございます。実際にお風呂場の設備も見ていいですか?」
「どうぞ」
一美はお風呂場の中に入って隅々まで見ていて、俺と仙道さんはその様子を脱衣所の所から見守る。
「早速この展示場にお越しいただいて有難うございます」
「彼女の付き添いで来たんですけど、仙道さんがいる展示場だとは思わなかったです」
「偶然だったんですね」
「ええ。でも素敵な間取りですし、彼女のご両親も喜ぶと思います」
「有難うございます!高坂さんも彼女さんとお住まいを探すときは是非」
「その時が来るのを俺も期待してます」
「え?!」
「あー、すいません。何でもないです」
俺は誤魔化してまた一美の見守りに徹した。
「階数はタワーというより、8階建ての日当たり良好、最寄りのスーパーには徒歩5分、小学校への通学に10分以内として建設予定ですって」
「俺が住む都心だとタワーが多いし、南◯駅近辺の物件としては丁度良い高さだな」
歩きながら展示場について話をする。
「自分が住んでいる街がどんどん変わっていくのを見ると、少し寂しいわ」
「ずっと住んでいればそうか」
「うん。私が2歳の頃にお父さんが南◯駅近辺に不動産屋を開業して、そこからずっとよ」
一美が真っ直ぐ前を見ながら話す顔は寂しげで、俺は左手で一美の右手を握り、俺も真っ直ぐ前を見ながら歩く。
「思い出がいっぱいある場所って良いと思う」
「ありがとう。そろそろ展示場の場所がー…、あれだわ」
一美が指で展示場のノボリを指し、へぇ、意外と人も集まっていて、そういえばあまり住宅展示場に来た事が無いし、さっきお店で一美に言った『将来一緒に住む時の間取りの参考』って本心なんだよね。
その新しい住まいで一美とじぃさん、ばあさんになっても一緒で過ごせるって最高だし、その時の仁達はどんな風に…、その未来に向けて進むためには俺の母親の事と、四つ葉をバカでかくしなくちゃ。
展示場の入り口には受付の腕章をしたスーツ姿の女性が立っており、俺達に気づくと近づいてきた。
「こんにちは!ご来場、有難うございます」
「こんにちは。新居を検討していて、見学をしても良いですか?」
「是非!此方の机にて受付をお願いします」
俺が女性に申し出をすると、その人は満面の営業スマイルで受付場所まで俺達を誘導し、案内されたテーブル席に座る。
「先ずは簡単なアンケートのご記入をお願いします。そしてご記入が終わりましたら、お声掛けをお願いします」
女性は1枚の用紙とペンを置き、一度離れ、一美がペンを手に取ってアンケート用紙に記入をし始め、俺は記入が終わるまで待つ。
「ん〜、来場の目的…」
一美がその項目の記入欄の所でペンが止まっている。
「『将来一緒に住む時の参考に』って書かないの?」
「しつこい!」
一美はペンを握ったまま俺に顔を向けて怒るけど、そんなに強く言わなくてもいいのに。
「バカ正直にお父さんのお願いって書けないだろ?」
「………確かにそうだけど…、まだ稔と一緒に住むなんー…」
一美はハッとして言葉を止めて、すぐ顔をアンケート用紙の方に向ける。そんな気まずい顔をしちゃって…一緒に住むまでの道のりはまだまだ先のようだと心の中で呟く。
「ご免…」
「いーや。とりあえず、今回は『両親の老後の住まいの検討』って書いておこうよ。お父さんのお願いに近いし」
「うん、そうするわ」
記入欄に訪れた理由を書き、俺は一美が書き終わった所で受付の女性を呼び、女性はアンケート用紙を黙読してニコッと微笑む。
「ご家族の将来を見据えているなんて、お優しいですね。案内の担当者をお呼びしますので、お待ちください」
「………」
「………」
受付の女性が立ち去り、俺達の間は無言になるけど、さっきの事を気にしてんだろうな。
「みのー…」
「高坂さん!ご来場、有難うございます!」
「どーも」
一美が言いかけた途中で現れたのは仙道一さんで、まさか本人が登場するとは…、しかも凄く嬉しそうにしているから、俺も営業スマイルで挨拶する。
「本日は僕がご案内致しますので、よろしくお願いします」
「今日は彼女のご両親の住まいについてだから、良い間取りってある?」
「ございます!この展示場にはファミリー向け、シニア向けの間取りもございますので、後者の間取りをご紹介します」
仙道さんがパンフレットを手に取って席を立ち、俺達も仙道さんの誘導で展示場の中を入り、一美の表情も気まずさから少しだけ変わって、内装をじぃっと見る。
「此方のパンフレットをどうぞ」
「ありがとうございます」
「先ず玄関からですが、シニア向けの場合、靴を脱ぐ場合に高さがありますと躓いたりしますのでー…」
仙道さんは一美にパンフレットを渡し、そして玄関、帰宅後の動線を意識した間取り、お手洗い等、シニア向けの間取りを1つ1つ丁寧に俺達に案内してくれて、一美もプライベートと言うよりも不動産屋の表情で細かく設備を見ていた。
「お風呂ですけど、父が腰を痛めていますので滑って転倒のリスクを減らしたいので、滑りにくいタイルに変更は出来ますか?」
「出来ます。滑りにくい素材も幾つかございますし、お掃除の際も水はけが良いものなどご検討出来ます」
「ありがとうございます。実際にお風呂場の設備も見ていいですか?」
「どうぞ」
一美はお風呂場の中に入って隅々まで見ていて、俺と仙道さんはその様子を脱衣所の所から見守る。
「早速この展示場にお越しいただいて有難うございます」
「彼女の付き添いで来たんですけど、仙道さんがいる展示場だとは思わなかったです」
「偶然だったんですね」
「ええ。でも素敵な間取りですし、彼女のご両親も喜ぶと思います」
「有難うございます!高坂さんも彼女さんとお住まいを探すときは是非」
「その時が来るのを俺も期待してます」
「え?!」
「あー、すいません。何でもないです」
俺は誤魔化してまた一美の見守りに徹した。