離れた後の恋の仕方
丸一日のタスクをこなし、今は四つ葉の飲み会に橘と共に参加をしている。

「お疲れ様ー」
「今日も頑張った〜」

所々でグラスがぶつかり合う音がし、俺も最初の1杯をついでもらい、グビグビと飲む。

「橘さんもどうぞ」
「ありがとうございます」

橘も営業から差し出された瓶から注がれる飲み物を飲んでいたり、お酌をする。

「橘さんもこっちに来て飲みませんか?」
「女子トークしましょうよ」
「でも…」

ファッション部の女子社員から呼ばれた橘は俺をちらっと確認する。

「俺を気にしないで良いし、いっぱい女子トークしてきなよ」
「……ありがとうございます」

橘は俺の元から離れ、ファッション部の女子社員の輪に混じり、良いねぇ、普段俺の専務室にしかいないから他の課の連中と交流を取って欲しい。

俺達が飲みを楽しんでいると個室のドアが開かれ、スポーツ部の田所と水野に秋山、石毛が入って来て、俺と営業がいる輪に来た。

「お疲れ様です」
「うん、田所達は今日もいい取材が出来た?」
「ぼちぼちです。サマーリーグ用の写真も撮れて、山田が一生懸命に選んでくれています」

俺の隣に田所が座り、営業の近くに秋山と石毛、水野も続いて座って、注文用のタブレットで飲み物をどんどん注文していき、店員が頼まれた飲み物のグラスを幾つか持ってきて机の上に置かれた。

「スポーツ部が来たから、もう一回乾杯するか」

俺はワイングラスにアルコールを注ぎ、改めてグラスを持った。

「スポーツ部もお疲れ!」
「やっと飲める!」

俺が音頭を取ると石毛は嬉しそうにジョッキを掲げて飲み、スポーツ部は取材していると観客が飲んでいるアルコールに目が行くから物凄く我慢しているって言っていたし、秋山も飲むスピードが早い。

「秋山のスピードは相変わらずだな」
「ずっと外で撮影だと喉が乾きますって。次もジョッキにしますし、石毛さんも飲みますか?」
「うん、そうする」

俺が秋山に聞くと、秋山はそう答え、タブレットで操作する。

「高坂専務もどうですか?」
「俺もワインにするよ」
「了解です。つまみは適当に頼みますね」
「ありがと〜」

秋山が慣れた手つきでタブレットを操作する。

「最近、秘書の橘さんも頑張っていますね。無茶振りとかしていないですか?」
「無茶振りはしていないよぉ。でも自分なりに他の課の動向を調べたり、俺のお願いで書店で直感で選んだ雑誌の決め手についてはいい目を持っているなって思ったよ」
「へぇ、そうなんですね」

営業の若手が橘の話をし始め、俺も橘の事を話すと、水野は橘の方を見る表情が微笑ましさを含んでいる。

暫く田所達とスポーツの話題で盛り上がっていると、経理課の輪から女性社員達が俺らの所に来た。

「高坂専務、聞いてください!」
「ん?どうした?」
「今日、木暮さんの所に荒木編集長が伝票を出しに来たんですけど、いつもの白シャツじゃなくてジャケット姿だったんです!」
「黒に水色のシャツで、とてもクールで素敵で!普段白シャツなのに、黒ジャケットは反則です!!」
「私なんて写真を撮っておきたかったくらいですよ」

経理課の女性社員達が言うのには、伝票の取り纏めをしている木暮がいつもスポーツ部が遅く提出するので頭を抱えそうになっていた所に仁が来たらしく、しかも経理課はスポーツ部との絡みも少ないから滅多に現れない仁が来たことで女性社員達の視線を独り占めにしたらしい。

「普段“ツチノコ扱い”とされていますから、白シャツじゃなくてジャケット姿なんてレアですよ!」
「入社式の後の歓迎会で来た時のスーツ姿も激レアじゃない?」
「確かに!ファッション部も入ってきた瞬間、手に持っていたファイルを落としたって言ってたもん」
「分かる!あ〜、スポーツ部の皆さんが一緒に働けて羨ましいですよ」

女性社員達が次々と仁の事を話をし始めていて、石毛は苦笑している。

「俺達だって会える時とそうじゃないのもあって、今日も会えていないですよ」

田所がジョッキ片手にそう言うけど、相変わらず仁は不在がちなんだ。でも俺みたいにサボっている訳じゃないから、良いけどね。

「荒木編集長って彼女っているんですかね?」
「いたらいたらで納得だけど、知りたくは無いよぉ」
「高坂専務は荒木編集長と恋バナとかしないんですか?好みのタイプとか知っていますか?」
「ん〜、仁に彼女がいるのって知らないし、いてもあいつはしれっと入籍はして事後報告でしてきそうだな。ま、俺の方が魅力的だしそこは譲んないけどね」
「も〜、高坂専務ってば」

その後は仁の話題で盛り上がり、お会計は俺が済ませて居酒屋を出た。

「高坂専務、ありがとうございました!」
「お礼は日々の仕事で返してね〜」
「あはは…」

社員達から礼を言われ、俺も特大のスマイルで言い返したら皆は苦笑して、橘はファッション部の社員達と一緒に駅に向かい、田所達は2軒目に行くとのことで、俺達は居酒屋の前で解散した。
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