離れた後の恋の仕方
1日の業務をこなし、橘を上がらせて俺も一美に会うために帰り支度をし、四つ葉を出て藍山駅に向かい、そこから電車で三斗の店の最寄り駅に向かう。
駅について歩き、【Bar Jewelrys】の鉄の扉を開けるとシェイカーを振る三斗と視線が合った。
「この後に店番をしている一美に会うから、差し入れでつまみを作ってもらっても良い?」
「良いよ」
三斗がシェイカーからグラスにアルコールを注ぎ、それは綺麗なオレンジ色で、グラスに蜜柑をさしてお客さんに持っていった。
俺はカウンター席の1番端に座り、三斗の様子を眺めていたら鉄の扉が開き、姫川が入ってきて、俺の隣に座る。
「お疲れ〜」
「ああ。歩き疲れて喉がすげぇ渇いてる」
「街歩きも順調の様だね」
「部数会議で決めた数の結果を出してぇし、九条も取材先の人とのやり取りも慣れてきている」
「どうぞ」
三斗が姫川の前に泡がいっぱいのアルコール、俺には烏龍のグラスを差し出した。
「今日は飲まねぇのかよ」
「この後さ、会いに行く人がいるからお酒は無しにしないと」
「…………女か」
「ご想像に任せ〜」
「けっ」
俺が言わないでいると姫川は拗ねるけど、お酒を飲んだ後に会って触れても嬉しくないし、一美との時間を大切にしたいからお酒は飲まないで過ごす。
「烏龍の業務用を探すのも大変なんだぞ」
「分かってるよ。でも探してくれるのは三斗らしいじゃん」
「ふん。ほら出来たから、持っていって」
三斗がつまみをテイクアウトの包装箱に幾つか包み、ビニール袋に入れて差し出したので、俺はスーツの内ポケットから財布を取り出して紙幣を数枚をカウンター席の上に置いた。
「いらないって」
「ちゃんと受け取って。三斗の料理を只で貰うほど俺は馬鹿じゃないし、自分の料理を大事にしてよ」
「………ありがと」
三斗は最初は渋っていたけど、三斗の料理は本当に美味しいし、これを只でなんて貰えるわけない。俺の言葉に三斗が嬉しそうにする顔が1番だし、俺はビニール袋を手に取って席を立つ。
「先に行くね。姫川もまた四つ葉で」
「おう」
俺は店を出てスマホでタクシーを手配し、近くの道路で配車されたタクシーに乗り、荒木不動産屋に向けてタクシーが走り出した。
ぼうっと車窓の景色を眺め、もうすぐ荒木不動産屋に着くな。
やがてタクシーが荒木不動産屋の前に停車して、俺は精算して降りて、入り口の前に立ち、ふぅっと一息をついて入り口のドアを開けて中に入った。
部屋の中に入って受付にいる一美が俺に気づき、席を立って俺の側に来る。
「来てくれて、ありがとう。後10分で終わるから、リビングの方で待っていて」
「うん。先にお邪魔します」
俺は三斗が作ってくれたつまみが入ったビニール袋を手に先にリビングの方へ通してもらい、ダイニングの机の上に袋をガサっと置いて、椅子に座る。
スーツの内ポケットに入れたスマホを取り出して、一美が来るまでは3雑誌の口コミを見たり、気になる雑誌の出版社の企業広報を読んだりして過ごしていると、リビングのドアが開いて一美が入ってきて俺の対面に座った。
「お待たせ」
「そんなに待っていないし、三斗の料理を食べよう」
「ええ」
一美はビニール袋から包装箱を取り出して、2人で箱の中身を見て、おぉと声が出る。
あの短時間で彩りよく盛り付けをして、ちゃんと野菜もあったりするから、三斗の料理のセンスが良いね。
両手を合わせて、同時に「頂きます」と言い、一口食べればマジで「美味しい」の言葉しか出ない。
一美も美味しそうに三斗の料理を食べていて、ぱっと見はいつもの一美だけど、仙道さんの事がよぎって、聞かずに過ごす。
「お茶、作るわ」
「ありがと」
一美がキッチンでお茶の用意して、俺も食べ終わって中身が空になった包装箱を片付けてビニール袋に突っ込む。
一美がマグカップを2人分を持って席に戻ってきて、また対面でお茶を飲みながら、昨日の事を思い返した。
『………告白された…』
電話での声は明らかにか細くて、きっと表情も目の前の明るい一美じゃなくて、泣きそうな表情だったんだろうなと、自分勝手な想像をした。
一美はマグカップを置いて俺の顔をじぃっと見るので、俺もマグカップを置く。
「そんな風に見つめられると照れちゃうな〜」
「は、はぁ?」
俺がわざとらしく言うと、一美は面を食らったような表情になる。
「もう…、いい歳しているのに、そんな事を言うのも変わらないわね」
「いーでしょ。じぃさんになっても言うし」
「言っていそう」
2人で笑っていると一美が視線をマグカップに落とし、両手でマグカップを握ると、俺達の空間が少し緊張するのが分かる。
「……昨日、告白されたって言ったじゃない?」
「うん」
「こんないい歳したおばさんみたいな年齢の私に告白するなんて、想像も無かったから驚いたわ」
「一美がおばさんなら、俺だっておじさんだろ」
お互い35も過ぎて、四捨五入したら40という数字になるから、おじさんおばさんと言われると切ないな。
「告白、断ってくれなきゃ俺が1番嫌だよ」
「うん…。好きだって言われて嬉しいのは稔だけよ」
「嬉しい事を言ってくれちゃって。今、俺達だけしかいないのに煽らないでよ」
此処が夜景の見える部屋だったら問答無用で押し倒すのに、流石に“凄く大切な人”の家で手を出すのはいかない。
「お願いだから、恥ずかしい事は言わないでよ。左手をお見舞いするわよ!」
「わぉ、それは勘弁して」
一美は口では厳しい言い方だけど、照れた顔が可愛い。
一美が仙道さんの事を話してくれたから、俺もちゃんと仕事上の事を話さないとな。
「仙道さんだけど、実はさ、『Focus』に広告を出して貰っている取引先の人なんだ」
「そうなの?だから展示場で稔と結構話していたのね」
「うん。一美から展示場に誘われる前に会食をした事があって、まさかマンションの展示場の担当者だとは思わなかったけど。世間は狭いな」
「そうね。じゃあ、今後も仙道さんとは会うよね?」
一美は少し不安げな表情する。
「仕事は仕事だし、そこは俺だっていい歳した大人だからきちんとするよ」
「そう…」
「まぁ、広告をありがとうございますのお礼状に、い~っぱい一筆を書いたから、向こうも一美の事を諦めるでしょ」
俺はマグカップを手に持ってお茶をごくごくと飲むと、一美は苦笑している。
「稔の事だから、何を書いたの?って聞いても言わないでしょ?」
「正解。聞いても答えないし、知ったらドン引きするよ」
俺は特大のスマイルでマグカップを置いたら、一美は察した表情をする。
「………聞かないでおく」
「その方が良い」
きっと知ったら本当にドン引きするし、いい歳した大人の嫉妬を知られたら嫌だ。
「そろそろお父さん達が戻るだろうから帰るし、1人で帰れるから大丈夫」
「分かったわ。今日はありがとう」
「どーいたしまして。今度は俺が誘うよ」
「うん」
俺はリビングを出た所で一美に見送られ、徒歩で南◯駅に向かい出した。
夜道を歩いている中で一美の質問を思い返し、『聞いても答えないでしょ?』ー…か…。
答えるわけないじゃん、だって嫉妬というか、ほぼ敬語なしで感情丸出しで書いたんだから。速達で出したし、必ず手元に渡っているはずだから既に読んでいるはず。
例え取引先の人であっても容赦しないし、水野の言葉を借りるなら1ミリも一美に近づいて欲しくない。俺と一美の間に入ってくる人は、どんどん遠ざけなきゃね。
俺は仙道さんにあてた一筆の文を思い返した。
『君が告白した女性は俺の“凄く大切な人”だから、俺達の間に入るんじゃねぇよ』
『広告の仕事はちゃんとするんで、そこは安心してね〜』
これでライバルの1人が脱落するなら大歓迎だし、こんな1面は一美にも仁達にも見せることはない。
そう腹黒い部分を抱きながら、自分の家へと帰っていった。
駅について歩き、【Bar Jewelrys】の鉄の扉を開けるとシェイカーを振る三斗と視線が合った。
「この後に店番をしている一美に会うから、差し入れでつまみを作ってもらっても良い?」
「良いよ」
三斗がシェイカーからグラスにアルコールを注ぎ、それは綺麗なオレンジ色で、グラスに蜜柑をさしてお客さんに持っていった。
俺はカウンター席の1番端に座り、三斗の様子を眺めていたら鉄の扉が開き、姫川が入ってきて、俺の隣に座る。
「お疲れ〜」
「ああ。歩き疲れて喉がすげぇ渇いてる」
「街歩きも順調の様だね」
「部数会議で決めた数の結果を出してぇし、九条も取材先の人とのやり取りも慣れてきている」
「どうぞ」
三斗が姫川の前に泡がいっぱいのアルコール、俺には烏龍のグラスを差し出した。
「今日は飲まねぇのかよ」
「この後さ、会いに行く人がいるからお酒は無しにしないと」
「…………女か」
「ご想像に任せ〜」
「けっ」
俺が言わないでいると姫川は拗ねるけど、お酒を飲んだ後に会って触れても嬉しくないし、一美との時間を大切にしたいからお酒は飲まないで過ごす。
「烏龍の業務用を探すのも大変なんだぞ」
「分かってるよ。でも探してくれるのは三斗らしいじゃん」
「ふん。ほら出来たから、持っていって」
三斗がつまみをテイクアウトの包装箱に幾つか包み、ビニール袋に入れて差し出したので、俺はスーツの内ポケットから財布を取り出して紙幣を数枚をカウンター席の上に置いた。
「いらないって」
「ちゃんと受け取って。三斗の料理を只で貰うほど俺は馬鹿じゃないし、自分の料理を大事にしてよ」
「………ありがと」
三斗は最初は渋っていたけど、三斗の料理は本当に美味しいし、これを只でなんて貰えるわけない。俺の言葉に三斗が嬉しそうにする顔が1番だし、俺はビニール袋を手に取って席を立つ。
「先に行くね。姫川もまた四つ葉で」
「おう」
俺は店を出てスマホでタクシーを手配し、近くの道路で配車されたタクシーに乗り、荒木不動産屋に向けてタクシーが走り出した。
ぼうっと車窓の景色を眺め、もうすぐ荒木不動産屋に着くな。
やがてタクシーが荒木不動産屋の前に停車して、俺は精算して降りて、入り口の前に立ち、ふぅっと一息をついて入り口のドアを開けて中に入った。
部屋の中に入って受付にいる一美が俺に気づき、席を立って俺の側に来る。
「来てくれて、ありがとう。後10分で終わるから、リビングの方で待っていて」
「うん。先にお邪魔します」
俺は三斗が作ってくれたつまみが入ったビニール袋を手に先にリビングの方へ通してもらい、ダイニングの机の上に袋をガサっと置いて、椅子に座る。
スーツの内ポケットに入れたスマホを取り出して、一美が来るまでは3雑誌の口コミを見たり、気になる雑誌の出版社の企業広報を読んだりして過ごしていると、リビングのドアが開いて一美が入ってきて俺の対面に座った。
「お待たせ」
「そんなに待っていないし、三斗の料理を食べよう」
「ええ」
一美はビニール袋から包装箱を取り出して、2人で箱の中身を見て、おぉと声が出る。
あの短時間で彩りよく盛り付けをして、ちゃんと野菜もあったりするから、三斗の料理のセンスが良いね。
両手を合わせて、同時に「頂きます」と言い、一口食べればマジで「美味しい」の言葉しか出ない。
一美も美味しそうに三斗の料理を食べていて、ぱっと見はいつもの一美だけど、仙道さんの事がよぎって、聞かずに過ごす。
「お茶、作るわ」
「ありがと」
一美がキッチンでお茶の用意して、俺も食べ終わって中身が空になった包装箱を片付けてビニール袋に突っ込む。
一美がマグカップを2人分を持って席に戻ってきて、また対面でお茶を飲みながら、昨日の事を思い返した。
『………告白された…』
電話での声は明らかにか細くて、きっと表情も目の前の明るい一美じゃなくて、泣きそうな表情だったんだろうなと、自分勝手な想像をした。
一美はマグカップを置いて俺の顔をじぃっと見るので、俺もマグカップを置く。
「そんな風に見つめられると照れちゃうな〜」
「は、はぁ?」
俺がわざとらしく言うと、一美は面を食らったような表情になる。
「もう…、いい歳しているのに、そんな事を言うのも変わらないわね」
「いーでしょ。じぃさんになっても言うし」
「言っていそう」
2人で笑っていると一美が視線をマグカップに落とし、両手でマグカップを握ると、俺達の空間が少し緊張するのが分かる。
「……昨日、告白されたって言ったじゃない?」
「うん」
「こんないい歳したおばさんみたいな年齢の私に告白するなんて、想像も無かったから驚いたわ」
「一美がおばさんなら、俺だっておじさんだろ」
お互い35も過ぎて、四捨五入したら40という数字になるから、おじさんおばさんと言われると切ないな。
「告白、断ってくれなきゃ俺が1番嫌だよ」
「うん…。好きだって言われて嬉しいのは稔だけよ」
「嬉しい事を言ってくれちゃって。今、俺達だけしかいないのに煽らないでよ」
此処が夜景の見える部屋だったら問答無用で押し倒すのに、流石に“凄く大切な人”の家で手を出すのはいかない。
「お願いだから、恥ずかしい事は言わないでよ。左手をお見舞いするわよ!」
「わぉ、それは勘弁して」
一美は口では厳しい言い方だけど、照れた顔が可愛い。
一美が仙道さんの事を話してくれたから、俺もちゃんと仕事上の事を話さないとな。
「仙道さんだけど、実はさ、『Focus』に広告を出して貰っている取引先の人なんだ」
「そうなの?だから展示場で稔と結構話していたのね」
「うん。一美から展示場に誘われる前に会食をした事があって、まさかマンションの展示場の担当者だとは思わなかったけど。世間は狭いな」
「そうね。じゃあ、今後も仙道さんとは会うよね?」
一美は少し不安げな表情する。
「仕事は仕事だし、そこは俺だっていい歳した大人だからきちんとするよ」
「そう…」
「まぁ、広告をありがとうございますのお礼状に、い~っぱい一筆を書いたから、向こうも一美の事を諦めるでしょ」
俺はマグカップを手に持ってお茶をごくごくと飲むと、一美は苦笑している。
「稔の事だから、何を書いたの?って聞いても言わないでしょ?」
「正解。聞いても答えないし、知ったらドン引きするよ」
俺は特大のスマイルでマグカップを置いたら、一美は察した表情をする。
「………聞かないでおく」
「その方が良い」
きっと知ったら本当にドン引きするし、いい歳した大人の嫉妬を知られたら嫌だ。
「そろそろお父さん達が戻るだろうから帰るし、1人で帰れるから大丈夫」
「分かったわ。今日はありがとう」
「どーいたしまして。今度は俺が誘うよ」
「うん」
俺はリビングを出た所で一美に見送られ、徒歩で南◯駅に向かい出した。
夜道を歩いている中で一美の質問を思い返し、『聞いても答えないでしょ?』ー…か…。
答えるわけないじゃん、だって嫉妬というか、ほぼ敬語なしで感情丸出しで書いたんだから。速達で出したし、必ず手元に渡っているはずだから既に読んでいるはず。
例え取引先の人であっても容赦しないし、水野の言葉を借りるなら1ミリも一美に近づいて欲しくない。俺と一美の間に入ってくる人は、どんどん遠ざけなきゃね。
俺は仙道さんにあてた一筆の文を思い返した。
『君が告白した女性は俺の“凄く大切な人”だから、俺達の間に入るんじゃねぇよ』
『広告の仕事はちゃんとするんで、そこは安心してね〜』
これでライバルの1人が脱落するなら大歓迎だし、こんな1面は一美にも仁達にも見せることはない。
そう腹黒い部分を抱きながら、自分の家へと帰っていった。