離れた後の恋の仕方
青木印刷所への挨拶が終わり、俺はスマホで喫茶店で待機している橘に連絡して俺達の所に戻るように言い、この後のスケジュールは創刊記念パーティーだ。

「俺は橘と記念パーティーに行くから、親父は四つ葉に戻るんだろ」
「ああ。経理部長の三井と昼を食べる約束をしている」
「あのムカつくおっさんとよく一緒に食べれるな」
「元々ああいう性格だが数字は誰よりも強いし、三井じゃなきゃとっくに四つ葉の資金は底をついている」
「俺が社長になったら、別の経理の奴に任せていいよな」
「お前の人選ならそうすればいいが、三井の後任は相当なプレッシャーになるぞ」
「メンタルが強くないとね。そこは1人、信用できるヤツが経理にいるし、今度親父に紹介する」
「分かった。時間は手短に」
「任せてよ。橘も来るから、もう行く」

俺は親父と青木印刷所の前で別れ、橘と一緒に最寄り駅に歩いて向かう。

「これから行く大手出版社のファッション雑誌の創刊記念パーティーだけど、1時間ほどで出る」
「かしこまりました。最後まで滞在されると思いましたが、そうではないんですね」
「最後までいたってつまらない話や顔色ばっか伺って疲れるし、橘も実際に見たら俺や祐一が早めに出たい気持ちが分かるよ」
「そうなんですか?」
「そうだよ。1ミリも興味ない話とかされてみ?四つ葉に帰って3雑誌を読む方がよっぽどマシに思えるよ」

俺がそう話すと橘は苦笑し、俺は駅前のロータリーに停車しているタクシーに手を上げると後部座席が開き、橘を奥に座らせて自分も乗る。

「✕✕ホテルまで。住所はー…です」
「かしこまりました」

運転手に住所を告げ、タクシーが走り出すと俺は思いっきり腕を伸ばしたり座席の背もたれに体を深く沈めた。

「お疲れのようですね」
「親父と一緒だとね。リラックスが出来る時間は必要だよ。橘も祐一の代理を引き受けてくれてありがとね」
「叔父が戻ってくる迄の間ですが」
「それでもさ、四つ葉の事を少しでも好きになってくれたら嬉しいよ。歓迎会では社員達と話せた?」
「少しは…」
「そっかぁ、皆いい奴だし、気になるメンズもいた?」
「えっ…、あー…、それは…」

何気なく聞いた質問に橘は動揺するけど、お?もしかしてと思うけどー…。

「俺は社内恋愛はオッケー派だけど、くれぐれも慎重にね。前に痛い目にあった奴もいてさ、相手と上手く行くと良いね」
「高坂専務こそ」
「そうだよねぇ、応援してて」

語尾に♪マークをつけるように言うと、橘は呆れた顔でいる。

そっかぁ、橘も四つ葉の社員に惚れてるのか。

経理課の若手?営業の奴らも捨てがたいし、総務課の木村も割と人気だし、編集部だとファッション部の副編、タウン情報部は姫川は無しだろ、スポーツ部は田所、秋山、伊東と高橋ー…、あ、水野もプロを目指していたから体格が良いし、秋山といつも一緒にいる所を見た女性社員達がこっそり2人の写真を撮っているくらい、スポーツ部のメンズ達はいい男揃いだよな。

でも群を抜いているのが編集長の仁で、あいつの人気は俺の次に凄いけど、当の本人は相手から好きになられる事に興味ないし、その逆で誰かを好きになったってあまり聞かないというか、こういった恋バナってしたことがない。

いつも俺の恋バナに付き合ってくれるけど、向こうは無いから、何処かで出来たらと思うけど、どうだか。

「間もなく着きます」

運転手の言葉で意識を変え、さ、手短に挨拶して帰るとしますか。

タクシーは会場となっているホテル前に到着した。
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