離れた後の恋の仕方
一美に会う時間になるまではがむしゃらに仕事のタクスをこなし、待ち合わせの時間に間に合うように四つ葉を出て、藍山駅から電車に乗ってK駅で降りる。

改札を出て一美の姿を探し、スーツ姿の一美が俺に気付いてこっちにきた。

「お疲れ様」
「うん。今日は急な連絡なのにありがと」
「ううん。ご飯は食べてないでしょ?」
「食べてない」
「稔は食べたいとしたら、どんな気分?」
「静かっていうよりかは、賑わってる方が気が楽かも」

静かだと自分の気持ちが沈みそうで、出来るだけ賑わっているほうが気持ちも沈まなくて良いかもしれない。

「………何かあったんでしょ?」
「バレた?」

俺はヘラっとすると、一美がムスッとする。

「あのねぇ…、5年も離れていたけど、その前から稔と過ごした時間はかなり長いんだし、わざとヘラっとしても、何かあったってわかるわよ」
「………ご免」

俺が小さな声で謝ると、一美が左手で俺の右腕をガシッと掴み、スタスタと商店街を歩きだし、え?何?!何処に連れて行く気?

「何処に行く気?」
「とにかくこっち!!」

一美はどんどん歩き、俺は何とか歩幅を合わせながら歩き、景色も商店街の賑わいから住宅街になっていって、時間制の駐車場に辿り着き、1台の車の前に止まった。

「今日は車で来てるから、乗って」

一美は左手を離すと運転席側に回ってドアを開けて中に乗り込み、俺はまだ呆気に捉えているとエンジンがかかり、マズイ、このままだと本当に置いてかれると思って、慌てて助手席のドアを開けて乗った。

「とりあえず、此処から離れて運転するわよ」
「ああ」

車が時間制の駐車場の出口に向かい、一美が精算してまた車が走り出す。

「………」
「………」

ずっとお互いが無言で、どうやって話をきり出そうか、信号機が黄色から赤に切り替わり、車が一度停車する。

「あのさ…」
「うん」
「ある企業からパーティーの招待状を受け取った」

信号機が青に切り替わって、車がまた走り出す。

「パーティーだなんて、相変わらず優雅な時間を過ごすのね」
「只の優雅なパーティーだったらね、良いんだけど」
「…………」

俺がそう言うと一美は無言になり、ハンドルを握っている手の力が込められたのが分かる。

車はどんどん暗闇の中を走り続け、そしてまた信号機が赤になって停まった。

「何処か車を停められる公園を探してもらってもいい?」
「勿論」

一美のお願いならば、直ぐ様調べるさ。スーツの内ポケットにしまったスマホを取り出して、現在地から車を停められそうな場所を探し、矢印が河川敷の方向をさしたので、俺が口頭で道順を伝え、車はその河川敷近くの公共駐車場の様な所で停車した。

エンジンが止まり、一美はシートベルトを外したので俺も外し、2人でふぅっと息を吐く。

「きちんと参加を断ったし、相手にも電話で一美の事を伝えた」
「そう……」

お互い顔は見合わせず、ただ前を見ながら話す。

「一美がさ、仙道さんからの告白を俺にきちんと話してくれただろ?」
「ええ」
「俺だけ何も言わないのは駄目だし、話してくれなかったのはしたくないんだ」

俺は顔を一美に向けると、一美は俺の方に顔を向けないで、右側の方へ顔を向けていた。

「ねぇ、一美」
「………」
「こっちを向いて」
「………」

一美は無言で顔を横に振るから、泣いている?ー…かもしれなくて、自分の左手を伸ばして一美の頬に添えてグイッと自分の方に向かわせたら、一美は下唇をギュッと噛んでいて、瞼を閉じている。

そんな顔にさせてしまったのは俺のプライベートな部分で胸がチクッと痛んだけど、一美の心だって痛いはずだ。

「傷つけて…ご免」
「嬉しいのと…」
「え?…」
「稔が参加を断った事…嬉しいのと、やっぱりまだ誘われる事があるんだって…」
「うん。でももう受けないって決めたし、実際に断ったよ」

一美の瞼がゆっくりと開き、口がへの字になる。

「前に稔が『断ってくれなきゃ困る』って、今なら分かるわ」
「でしょ?」

俺は小さく笑うと、一美が俺の左手に右手を重ねて瞼を閉じ、一美の手が、心が手を介して伝わってきて、さっきの痛みが浄化される。

俺はそのまま顔を近づけて瞼を閉じて一美の唇に自分の唇を重ねると、一美の体がビクッとしたのが伝わり、もっと求めたくなってスイッチを入れ、唇を重ねながら両腕で一美の体を掴み、俺の方に引き寄せ、俺を跨るような姿勢にした。

少し唇が離れてもまた重ねて求め合い、俺はネクタイをグイッとほどき、ワイシャツのボタンを2つ外し、スーツの上をバサっと脱ぐ。

その間も唇は離れる事は無く、口の中で熱を絡み合わせながら両手で一美のスーツの上を脱がせ、一美は俺の首に両腕を回し、さらに俺達の距離が縮まった。

唇を重ね、やばいなー…、俺はぷはっと唇を離して一美を見上げる。

「ご免…、限界かも」

本当なら夜景の見える部屋で一美に触れたいのに、左手で一美の綺麗な脚を優しく撫でると、一美は俺の胸元に顔を寄せて、俺を抱き締める腕の力が強くなる。

「………私も」
「うん」

一美が顔を上げて、視線が絡む。

「稔に触れて欲しい…」
「喜んで」
「ん…」

また唇を重ね、助手席の軋む音がギシッと鳴った。
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