離れた後の恋の仕方
午前中は書店周りをしている神田に作って貰った資料に視線を落とし、新規と既に四つ葉の雑誌を置かせてもらっている書店のリストを見比べて、神田からの話を聞く。
「新規の書店についてですが、1つは駅前の商業施設のリニューアルオープンと一緒に開店を目指している大型書店がありまして、この最寄り駅は2つの路線があるので人の流れも良く、商業施設に流れる可能性があります。2つ目はショッピングモール内に開店予定がありますが、郊外地域の為、最寄り駅はバス、または車での来店になるので、集客効果は曜日によってばらつきそうです」
「郊外地域と駅前差はデカいけど、そこに入る書店が居続けてくれないと俺達の雑誌が置かれないからなぁ」
闇雲に置く場所を広げても手に取ってくれる保証が持てないから新規開拓も慎重になるし、かといって既存で置かせてもらっている場所もいつまで置いてくれるか…。
「忙しい中で現状を教えてくれてありがとね。書店周りで人員を増やしたいのなら俺が人事に相談するし、皆の待遇も良くしたいからいつでも専務室に来て」
「ありがとうございます!あ、この間の部数会議での“じゃんけん対決”ですけど、営業課でお留守番していたメンバーも姫川編集長達のじゃんけんを見たかったって話していました」
「あれは最高の結末だったし、荒木が珍しく提案したから面白かった」
「そうですよね。僕もあの場にいましたが、荒木編集長に負けた三井部長の真っ赤な顔が覚えてます」
神田が“じゃんけん対決”の事を話題に出すと、近くで聞いている橘も少し笑いを堪えている。
「それでは僕はもう戻ります」
「うん、ありがと〜」
神田が専務室を出ていくと橘はコホンと咳払いして席を立って手を俺の前に立つ。
「この後はタウン情報部との会議で、1時間の枠となっています」
「オッケー。橘はここで今度荒木に頼む出張のホテルのリストアップと予算について纏めてもらっていいかな?候補の地域はこの前話した場所でお願い。それを元に経理の木暮に予算を相談する」
「かしこまりました」
「お願いね〜」
俺は橘に仕事を任せて専務室を出て行き、使用していない小さめな会議室に行き、ドアをノックして開けて入ると、姫川と九条ちゃんは既に会議室にいた。
「お待たせ」
「そんなに待ってねぇ」
「お疲れ様です」
俺は2人が座っている席の対面に座り、姫川が机の上に数枚の資料を出したので、俺は手に取ってじっくりと黙読する。
その資料はこの前の部数会議で読んだ資料のバージョンアップをした内容で、姫川の街歩きの候補地を見つける視点が凄い。
「いつも思うけど、ほんと見つけるのが上手いよな」
「これでも10年近く歩いてんだ。ただ最近はネット上で先に投稿する奴らもいるから、店との交渉が難しいと感じる」
姫川が言うにはスマホの普及で一般人が手軽に投稿が出来るから、先にネット上で人気になって取材が難航しているみたいだ。
「SNSを見て“その街を歩きたい”というのはいいけどよ、俺は『Focus』を読んでもらって訪れてくれる事を望んでいるし、書くことに妥協はしたくねぇ」
実際に書いた記事を読むと以前タウン情報部にいた他の奴らとは違って“歩きたい”と思える言葉が伝わるし、この辺りは俺は仁の表現力とは違う魅力を感じている。
「姫川が書く言葉、俺は好きだし、実際俺も『Focus』を読んでランタンのイベントをやっている場所に行ったよ。一緒に行った人が喜んでいて、今度季刊の場所に行ってみようってなった」
俺は一美と訪れた事を話し、その先のお出かけについてを話したら、九条ちゃんはぱぁっと嬉しそうにする。
「是非!とても素敵な場所ですし、いっぱい歩いて下さい!」
「美味しいお店ある?」
「ヨシハラのおじいさんがいる定食屋がおすすめで、高坂専務も美味しいお魚に衝撃を受けますよ!お刺身定食を食べて欲しいです」
九条ちゃんが嬉しそうにそのお店をプレゼンするので、一美と出掛ける時は訪れてみようかな。
「楽しみにするよ。それに7月号の九条ちゃんの記事もね〜」
「うっ…、が、頑張ります」
俺が特大スマイルで期待すると、九条ちゃんは苦笑する。
「俺はまだ高坂に話しがあるから先に戻って、街歩きの準備をしておけ」
「分かりました。先に準備します」
九条ちゃんが先に会議室を出ていくと、姫川がふぅっと息を吐く。
「溜め息ついちゃって。夜にもつ煮の店で聞くよ?」
「いかねぇ。昨日弟から九条の四つ葉での仕事を聞かれたて、『九条と一緒になりたきゃ、九条の仕事を受け入れろ』って電話口で説教した」
「あー…、こればっかりは九条ちゃんの気持ちが一番だよ」
「ああ。結婚しても、離婚した俺の親父とおふくろの様になって欲しくねぇ」
姫川がブスッとしながら話すけど、姫川の背景ってあまり聞いたことがなくて、そっか…、俺と一美が離れたきっかけを思い出す。
「今から話すのは参考程度にして」
「何だよ?お前の惚気話か?」
「いーや。俺さ、5年前に“凄く大切な人”と結婚しようかとしていたんだけど、家の都合でその人の人生を一度台無しにした事があったんだ」
「は?」
「その人もさ、自分の仕事に誇りを持っていて、俺も譲れないものもあって。だから九条ちゃんの選ぶ道については、弟さんもだけど姫川も一緒に考えてあげなよ。きっと2人は姫川の言葉も思いもきちんと聞いてくれると確信がもてる」
「………だな」
俺が一美と離れた理由の一部を話すと、姫川は間を空けてポツリと呟いた。
「高坂と女の話をするとは思わなかったな」
「いいじゃん。恋バナ大歓迎だし、いい子が四つ葉に来たら姫川の良さを俺がアピールするよ」
「うざってぇ」
2人だけの会議室に笑いが続いた。
「新規の書店についてですが、1つは駅前の商業施設のリニューアルオープンと一緒に開店を目指している大型書店がありまして、この最寄り駅は2つの路線があるので人の流れも良く、商業施設に流れる可能性があります。2つ目はショッピングモール内に開店予定がありますが、郊外地域の為、最寄り駅はバス、または車での来店になるので、集客効果は曜日によってばらつきそうです」
「郊外地域と駅前差はデカいけど、そこに入る書店が居続けてくれないと俺達の雑誌が置かれないからなぁ」
闇雲に置く場所を広げても手に取ってくれる保証が持てないから新規開拓も慎重になるし、かといって既存で置かせてもらっている場所もいつまで置いてくれるか…。
「忙しい中で現状を教えてくれてありがとね。書店周りで人員を増やしたいのなら俺が人事に相談するし、皆の待遇も良くしたいからいつでも専務室に来て」
「ありがとうございます!あ、この間の部数会議での“じゃんけん対決”ですけど、営業課でお留守番していたメンバーも姫川編集長達のじゃんけんを見たかったって話していました」
「あれは最高の結末だったし、荒木が珍しく提案したから面白かった」
「そうですよね。僕もあの場にいましたが、荒木編集長に負けた三井部長の真っ赤な顔が覚えてます」
神田が“じゃんけん対決”の事を話題に出すと、近くで聞いている橘も少し笑いを堪えている。
「それでは僕はもう戻ります」
「うん、ありがと〜」
神田が専務室を出ていくと橘はコホンと咳払いして席を立って手を俺の前に立つ。
「この後はタウン情報部との会議で、1時間の枠となっています」
「オッケー。橘はここで今度荒木に頼む出張のホテルのリストアップと予算について纏めてもらっていいかな?候補の地域はこの前話した場所でお願い。それを元に経理の木暮に予算を相談する」
「かしこまりました」
「お願いね〜」
俺は橘に仕事を任せて専務室を出て行き、使用していない小さめな会議室に行き、ドアをノックして開けて入ると、姫川と九条ちゃんは既に会議室にいた。
「お待たせ」
「そんなに待ってねぇ」
「お疲れ様です」
俺は2人が座っている席の対面に座り、姫川が机の上に数枚の資料を出したので、俺は手に取ってじっくりと黙読する。
その資料はこの前の部数会議で読んだ資料のバージョンアップをした内容で、姫川の街歩きの候補地を見つける視点が凄い。
「いつも思うけど、ほんと見つけるのが上手いよな」
「これでも10年近く歩いてんだ。ただ最近はネット上で先に投稿する奴らもいるから、店との交渉が難しいと感じる」
姫川が言うにはスマホの普及で一般人が手軽に投稿が出来るから、先にネット上で人気になって取材が難航しているみたいだ。
「SNSを見て“その街を歩きたい”というのはいいけどよ、俺は『Focus』を読んでもらって訪れてくれる事を望んでいるし、書くことに妥協はしたくねぇ」
実際に書いた記事を読むと以前タウン情報部にいた他の奴らとは違って“歩きたい”と思える言葉が伝わるし、この辺りは俺は仁の表現力とは違う魅力を感じている。
「姫川が書く言葉、俺は好きだし、実際俺も『Focus』を読んでランタンのイベントをやっている場所に行ったよ。一緒に行った人が喜んでいて、今度季刊の場所に行ってみようってなった」
俺は一美と訪れた事を話し、その先のお出かけについてを話したら、九条ちゃんはぱぁっと嬉しそうにする。
「是非!とても素敵な場所ですし、いっぱい歩いて下さい!」
「美味しいお店ある?」
「ヨシハラのおじいさんがいる定食屋がおすすめで、高坂専務も美味しいお魚に衝撃を受けますよ!お刺身定食を食べて欲しいです」
九条ちゃんが嬉しそうにそのお店をプレゼンするので、一美と出掛ける時は訪れてみようかな。
「楽しみにするよ。それに7月号の九条ちゃんの記事もね〜」
「うっ…、が、頑張ります」
俺が特大スマイルで期待すると、九条ちゃんは苦笑する。
「俺はまだ高坂に話しがあるから先に戻って、街歩きの準備をしておけ」
「分かりました。先に準備します」
九条ちゃんが先に会議室を出ていくと、姫川がふぅっと息を吐く。
「溜め息ついちゃって。夜にもつ煮の店で聞くよ?」
「いかねぇ。昨日弟から九条の四つ葉での仕事を聞かれたて、『九条と一緒になりたきゃ、九条の仕事を受け入れろ』って電話口で説教した」
「あー…、こればっかりは九条ちゃんの気持ちが一番だよ」
「ああ。結婚しても、離婚した俺の親父とおふくろの様になって欲しくねぇ」
姫川がブスッとしながら話すけど、姫川の背景ってあまり聞いたことがなくて、そっか…、俺と一美が離れたきっかけを思い出す。
「今から話すのは参考程度にして」
「何だよ?お前の惚気話か?」
「いーや。俺さ、5年前に“凄く大切な人”と結婚しようかとしていたんだけど、家の都合でその人の人生を一度台無しにした事があったんだ」
「は?」
「その人もさ、自分の仕事に誇りを持っていて、俺も譲れないものもあって。だから九条ちゃんの選ぶ道については、弟さんもだけど姫川も一緒に考えてあげなよ。きっと2人は姫川の言葉も思いもきちんと聞いてくれると確信がもてる」
「………だな」
俺が一美と離れた理由の一部を話すと、姫川は間を空けてポツリと呟いた。
「高坂と女の話をするとは思わなかったな」
「いいじゃん。恋バナ大歓迎だし、いい子が四つ葉に来たら姫川の良さを俺がアピールするよ」
「うざってぇ」
2人だけの会議室に笑いが続いた。