離れた後の恋の仕方
姫川と会議室で九条ちゃんの事をじっくりと話し、姫川と一緒に会議室を出て廊下の階段の場所で別れ、俺は専務室に戻り、自分の席に座ると橘が紙束を手に取って俺の前に立った。
「荒木編集長が出張される宿泊施設のリストと、宿泊費用は平日を中心に絞りますとビジネスプランが多く該当しましたので、費用の比較を表に纏めました」
差し出された紙束を手に取ってじっくりと黙読すると、やっぱシングルであっても万単位で、素泊まりなら抑えられるけど、このご時世どこも高騰してるな。
するとスーツの内ポケットにしまってあるスマホが揺れて取り出し、画面に仁の名前が表示されたので、なんだ?
「もしも〜し。取材じゃなかったの?」
『終わった。そこに橘さんっている?』
「居るけど、代わろうか?」
俺はちらっと橘に顔を向けると、本人はかぁっと赤くなり、この2人は何かあったのか?
『いい。渡したい物があって、高坂さんもその場にいて欲しい』
「良いよ。待ってる」
仁との通話を終えてスマホを机の上に置いて、橘に視線を向ける。
「荒木が『渡したい物がある』って」
「あ…えっとー…」
「深掘りはしないけど、本人の要望で俺もここにいるから」
「…かしこまりました」
橘の表情が赤からいつもの様になり、橘は自分の席に戻り、俺はまた宿泊施設の用紙に目を通し、仁が取材で野球施設に行くなら移動の時間を考えて2カ所に絞ってみようかな。
やがて専務室のドアが開いて仁が入ってきて、俺じゃなく橘の前に立ち、バックから1冊の本を取り出して橘に差し出して、橘は仁に顔を見上げた。
「返す」
「え、でも…」
「これ、最後まで読んだ?」
「………」
あー…、やっちゃったな。普段の仁は相手に対して淡々とするのが多いのに、何故か橘に対してキツく言い始めて、橘の表情も段々と暗くというか、下手したらー…。
「ストップ!仁、それ以上はもう止めな」
俺は仁の口撃と態度を止めるように声をかけ、仁もハッとして我に返り、これ以上自分に関わらないように橘に伝えて本を置いて出て行った。
橘は机の上に置かれた本を手に取り、装丁を撫で、両手でぎゅうっと強く抱きしめて俯く。
「一緒に美味しいご飯でも食べに行こうか。ていうか、行くから出るよ〜」
俺はスマホをスーツの内ポケットにしまって席を立って橘の元に行き、本人の腕を掴んでグイッと引っ張ってそのまま専務室を出ていく。
「は、離して下さい!」
「やだね。そんな顔をしたままほっぽいて外でご飯を食べに行く俺じゃないよ?」
俺は橘に特大スマイルを向けると、橘は泣きながら口をへの字にする。
「……そう…ですね…」
「タクシーを呼ぶから、その本を大事に持ってようよ」
「………ありがとうございま…す」
「うん、いい返事」
2人で階段を降りながら、その間も橘は泣きながら何度も鼻を啜り、返された本を大事に抱えてる。
あ〜も〜仁の奴…、善意を受け取るかどうかはそれまでの過程によるけれど、こういう返し方は駄目だろ。
入社した時から四つ葉の女性社員から好意を寄せられるのは変わってないけど、いつも『興味ない』とか『好意を寄せられても』って返したりしているけど、今回は態度と口調が相当キツかった。
四つ葉を出て俺はスーツの内ポケットからスマホを取り出し、いつも使っている料亭の女将に連絡する。
「すいません。今から2人で伺っても宜しいですか?とびっきり美味しいご飯を部下に食べてもらいたくて」
俺の突然の願いに料亭の女将は快諾してくれて、俺は続けてタクシーを呼び、数分してタクシーが俺達の前に停車する。
後部座席が開いて橘に奥の席に座ってもらい、俺も乗り込んで運転手に行き先を告げて料亭に向かった。
その間はお互い何も話さず、タクシーが料亭について俺が精算して降りて、料亭の中に入ると女将が出迎えてくれる。
「お待ちしておりました」
「ありがとう。いつも頑張ってくれているこの子に、とびっきり美味しいご飯と食後のデザートも」
「お任せください。此方へ」
女将に案内されて個室に入り、対面で座って料理が運ばれるまでは出されたお茶を俺は啜り、橘は本を静かに机の上に置いた。
「さっきの荒木の態度、俺から謝るのは違うからしないけど、キツかったよな」
俺から話をし始めると、橘は横に顔を振る。
「……私が…悪いので…」
「そっか…。この本さ、橘は好きなの?」
「はい。叔父様の部屋にこの作家の本が数冊あって、勧められたんです。言葉の表現力もですが、相手の心情が丁寧に書かれて、その世界観に惹き込まれるんです」
橘はその作家の本の事を話し始め、それを読むことは凄く好きなんだと伝わってくるから、今回の事は相当こたえただろうな。
「この本…、実は自分から初めて買おうと決めていて、書店に行った時に偶然荒木編集長にお会いしたんです」
そこから橘は仁に会った経緯を話し、仁もその本を買おうとしたことから今回の流れになったそう。橘はまた本を手に取り、そっと抱きしめた。
「この本…荒木編集長よりも先に読了してみせます」
その表情はいつものクールな顔じゃなくて、目標を決意したように見えた。
「良いね。その意気だし、橘のその本を好きというのを大切にしてよ」
「……はい」
「お待たせしました」
橘は少し微笑み、美味しいご飯が運ばれたので、早速2人で食べ始める。
俺は四つ葉に戻ったら仁に説教だなと思いながら、橘とのお昼を楽しんだ。
「荒木編集長が出張される宿泊施設のリストと、宿泊費用は平日を中心に絞りますとビジネスプランが多く該当しましたので、費用の比較を表に纏めました」
差し出された紙束を手に取ってじっくりと黙読すると、やっぱシングルであっても万単位で、素泊まりなら抑えられるけど、このご時世どこも高騰してるな。
するとスーツの内ポケットにしまってあるスマホが揺れて取り出し、画面に仁の名前が表示されたので、なんだ?
「もしも〜し。取材じゃなかったの?」
『終わった。そこに橘さんっている?』
「居るけど、代わろうか?」
俺はちらっと橘に顔を向けると、本人はかぁっと赤くなり、この2人は何かあったのか?
『いい。渡したい物があって、高坂さんもその場にいて欲しい』
「良いよ。待ってる」
仁との通話を終えてスマホを机の上に置いて、橘に視線を向ける。
「荒木が『渡したい物がある』って」
「あ…えっとー…」
「深掘りはしないけど、本人の要望で俺もここにいるから」
「…かしこまりました」
橘の表情が赤からいつもの様になり、橘は自分の席に戻り、俺はまた宿泊施設の用紙に目を通し、仁が取材で野球施設に行くなら移動の時間を考えて2カ所に絞ってみようかな。
やがて専務室のドアが開いて仁が入ってきて、俺じゃなく橘の前に立ち、バックから1冊の本を取り出して橘に差し出して、橘は仁に顔を見上げた。
「返す」
「え、でも…」
「これ、最後まで読んだ?」
「………」
あー…、やっちゃったな。普段の仁は相手に対して淡々とするのが多いのに、何故か橘に対してキツく言い始めて、橘の表情も段々と暗くというか、下手したらー…。
「ストップ!仁、それ以上はもう止めな」
俺は仁の口撃と態度を止めるように声をかけ、仁もハッとして我に返り、これ以上自分に関わらないように橘に伝えて本を置いて出て行った。
橘は机の上に置かれた本を手に取り、装丁を撫で、両手でぎゅうっと強く抱きしめて俯く。
「一緒に美味しいご飯でも食べに行こうか。ていうか、行くから出るよ〜」
俺はスマホをスーツの内ポケットにしまって席を立って橘の元に行き、本人の腕を掴んでグイッと引っ張ってそのまま専務室を出ていく。
「は、離して下さい!」
「やだね。そんな顔をしたままほっぽいて外でご飯を食べに行く俺じゃないよ?」
俺は橘に特大スマイルを向けると、橘は泣きながら口をへの字にする。
「……そう…ですね…」
「タクシーを呼ぶから、その本を大事に持ってようよ」
「………ありがとうございま…す」
「うん、いい返事」
2人で階段を降りながら、その間も橘は泣きながら何度も鼻を啜り、返された本を大事に抱えてる。
あ〜も〜仁の奴…、善意を受け取るかどうかはそれまでの過程によるけれど、こういう返し方は駄目だろ。
入社した時から四つ葉の女性社員から好意を寄せられるのは変わってないけど、いつも『興味ない』とか『好意を寄せられても』って返したりしているけど、今回は態度と口調が相当キツかった。
四つ葉を出て俺はスーツの内ポケットからスマホを取り出し、いつも使っている料亭の女将に連絡する。
「すいません。今から2人で伺っても宜しいですか?とびっきり美味しいご飯を部下に食べてもらいたくて」
俺の突然の願いに料亭の女将は快諾してくれて、俺は続けてタクシーを呼び、数分してタクシーが俺達の前に停車する。
後部座席が開いて橘に奥の席に座ってもらい、俺も乗り込んで運転手に行き先を告げて料亭に向かった。
その間はお互い何も話さず、タクシーが料亭について俺が精算して降りて、料亭の中に入ると女将が出迎えてくれる。
「お待ちしておりました」
「ありがとう。いつも頑張ってくれているこの子に、とびっきり美味しいご飯と食後のデザートも」
「お任せください。此方へ」
女将に案内されて個室に入り、対面で座って料理が運ばれるまでは出されたお茶を俺は啜り、橘は本を静かに机の上に置いた。
「さっきの荒木の態度、俺から謝るのは違うからしないけど、キツかったよな」
俺から話をし始めると、橘は横に顔を振る。
「……私が…悪いので…」
「そっか…。この本さ、橘は好きなの?」
「はい。叔父様の部屋にこの作家の本が数冊あって、勧められたんです。言葉の表現力もですが、相手の心情が丁寧に書かれて、その世界観に惹き込まれるんです」
橘はその作家の本の事を話し始め、それを読むことは凄く好きなんだと伝わってくるから、今回の事は相当こたえただろうな。
「この本…、実は自分から初めて買おうと決めていて、書店に行った時に偶然荒木編集長にお会いしたんです」
そこから橘は仁に会った経緯を話し、仁もその本を買おうとしたことから今回の流れになったそう。橘はまた本を手に取り、そっと抱きしめた。
「この本…荒木編集長よりも先に読了してみせます」
その表情はいつものクールな顔じゃなくて、目標を決意したように見えた。
「良いね。その意気だし、橘のその本を好きというのを大切にしてよ」
「……はい」
「お待たせしました」
橘は少し微笑み、美味しいご飯が運ばれたので、早速2人で食べ始める。
俺は四つ葉に戻ったら仁に説教だなと思いながら、橘とのお昼を楽しんだ。