離れた後の恋の仕方
◇佐藤のこと2
「メイクをする暇が無かったんだけど!!」
「ご免、ご免って」
助手席でムスッとしている一美のご機嫌を取りながらハンドルを握り、荒木不動産屋に向けて愛車を走らせる。
2人で部屋を出るまでたっぷりと繋がって、バタバタとしながら着替えてチェックアウトして、まだ出勤には間に合うけど、先ずは一美を送り届けなきゃ。
荒木不動産屋の近くに愛車を停めて降りて2人で荒木不動産屋に行き、ドアの前まで来て立ち止まった。
「お母さんって怒ってそうだな」
「そうかも…」
2人でドアをそ〜っと開けるとお父さんだけがお店の椅子に座っていて、静かに立ち上がり、俺達の所に来た。
「朝帰りをしてすいません」
俺は頭を下げる。
「頭を上げなさい」
ゆっくりと頭を上げると、お父さんが小さく溜め息を吐く。
「お母さんがここにいたら、2人ともげんこつだったぞ」
「もう、いい大人だかほっといてよ!」
「大人だったら親に怒られないようにするもんだ」
あー…、一美も自分の親とこんな感じで言い合うんだと思った。
「俺から朝帰りの提案をしたので、一美さんは悪くないです」
「ううん、私も『良いんじゃない?』って言ったから、稔だけが悪くないわ」
「いや、俺が」
お互い自分からだとぎゃあぎゃあと言い合っていたら、お父さんが両手でパチンっと俺達の言い合いを止めようと叩いた。
「朝から喧嘩は止めなさい。朝帰りするならきちんと身なりを整えなさい。2人共、それが出来ないなら、次の朝帰りはお母さんに出迎えさせるぞ」
お父さんが静かに俺達に注意するけど、“次の”って事は朝帰りはお父さん公認という事で良いのかな?今そんな事を聞いたら、お父さんの右手でお見舞いされそうだから聞かないでおこう。
「申し訳ございません」
「ご免なさい…」
俺達は素直に謝り、35のいい(?)大人2人が怒られた朝帰りだった。
「帰ります」
俺はお父さんに頭を下げて荒木不動産屋から出て行き、愛車に乗って自宅に帰り、シャワーを浴びて身なりをリセットする。
折角一美と触れ合ったのにシャワーの水圧であの感触が流されて行き、くそ…。
シャワーを終えて脱衣所でタオルでガシガシと拭いて、タオルを腰に巻いてドタドタと階段を上がって自分の部屋に入り、クローゼットから新しい下着とスーツ、ワイシャツを取り出して着替え始め、直ぐ様部屋を出て1階のリビングに行く。
キッチンには母親がいて、俺に気づくとジロリと見てくる。
「35にもなって朝帰りなんて、恥ずかしい」
ここでも親の説教かよと思ったけど、『親は娘が幾つになっても心配するものなの!』って、一美のお母さんの言葉を思い出し、俺が悪いよな…。
「ご免」
俺がボソっと謝ると母親はぷいっと顔を背け、キッチンのコンロにあるお鍋に入っているお玉からスープを掬い、お椀に注ぎ、お箸とお椀を持ってダイニングにある机の上に置いた。
「一口だけでも飲みなさい」
「ありがと」
俺はダイニングの椅子に座ってお椀を手に持って中を見ると、味噌汁に人参と玉ねぎが入っていたのでぐびっと飲むと、出汁もきいていて美味しい。
「…美味い」
俺は小さく呟き、お箸で具材を挟んで食べれば人参の固さが丁度良い。黙々と食べていたら親父が入ってきて、対面の席に座って新聞を広げ、母親は親父の前に湯飲みを置き、ダイニングを経由して部屋を出て行った。
「佐藤の件はどうなんだ」
広がった新聞の向こうから親父の小言が聞こえる。
「明日のバイク便が来るまでが最終的な締め切りになるから、待つ事を見守る」
仁が、スポーツ部のメンバーが佐藤を待つ事を選び、それを見守ることが俺のできることで、こういう出来事はこの1回で終わってほしい。
俺は味噌汁を食べ終わって席を立ち、お椀を食洗機に入れてダイニングを経由して部屋を出て行った。
自分の部屋に戻り、バックを持って1階に戻って玄関に行き、靴を履いて自宅を出て最寄り駅に向かった。
電車に乗って中吊り広告にちらっと視線を向けると、週刊誌の中吊りには例のバレーボール選手の過去の素行等が暴露系として見出しに書かれ、よくもまぁ過去のことまで調べるな。
こういう風に書かれてしまうのは選手本人が原因だが、ずっと追いかけていた佐藤の頑張りを見守ってきたから、佐藤本人は俺達が想像しているよりもショックはデカいだろう。
俺と会えばバレーボールのことを楽しそうに話すし、時間に不規則な仕事だけど弱音はあまり吐かずにB班を纏めてくれているのを仁から聞いていたから、佐藤がどう答えをだしてくれるか…、電車が藍山駅について改札を出ると田所の姿が見えたので、俺は肩をポンっと叩いて隣に並ぶ。
「よっ」
「おはようございます」
「佐藤はどう?」
四つ葉に向かいながら佐藤の事について話す。
「原稿をビリビリに破いた日、あいつの家に行って4時間は話しをして、『1人にして』って言われましたけど、明日のバイク便の時間は伝えています」
田所はそう話すけど表情は暗く、同期でずっと一緒にスポーツ部を引っ張っているから色んな思いが駆け巡っているんだろう。俺は田所の頭にポンっと右手を置いた。
「田所が信じているなら、それを待とう」
「信じていますし、あいつが戻って来たらいっぱい宿題を出して下さい!」
「良いよ〜。きっと荒木がたっぷりと出すし、俺も佐藤にちょ~っとお話をするし」
俺が特大スマイルで言うと、田所がビクッとした表情になるけど、普通に笑っているだけなのにな。
「田所のサマーリーグ、6月号もだけど7月号は読み応えたっぷりに書いてくれるんだろ?」
「ええ。部数会議で荒木編集長が仰っていたように購買意欲を持つよう6月号と7月号はバランスも考え、7月号は必ず1番目の位置に持っていきます」
田所が自信たっぷりに“Scoperta”の事を話すので、逞しいな。四つ葉のビルに入り、階段を上がって三階で田所と別れて専務室に入った。
「ご免、ご免って」
助手席でムスッとしている一美のご機嫌を取りながらハンドルを握り、荒木不動産屋に向けて愛車を走らせる。
2人で部屋を出るまでたっぷりと繋がって、バタバタとしながら着替えてチェックアウトして、まだ出勤には間に合うけど、先ずは一美を送り届けなきゃ。
荒木不動産屋の近くに愛車を停めて降りて2人で荒木不動産屋に行き、ドアの前まで来て立ち止まった。
「お母さんって怒ってそうだな」
「そうかも…」
2人でドアをそ〜っと開けるとお父さんだけがお店の椅子に座っていて、静かに立ち上がり、俺達の所に来た。
「朝帰りをしてすいません」
俺は頭を下げる。
「頭を上げなさい」
ゆっくりと頭を上げると、お父さんが小さく溜め息を吐く。
「お母さんがここにいたら、2人ともげんこつだったぞ」
「もう、いい大人だかほっといてよ!」
「大人だったら親に怒られないようにするもんだ」
あー…、一美も自分の親とこんな感じで言い合うんだと思った。
「俺から朝帰りの提案をしたので、一美さんは悪くないです」
「ううん、私も『良いんじゃない?』って言ったから、稔だけが悪くないわ」
「いや、俺が」
お互い自分からだとぎゃあぎゃあと言い合っていたら、お父さんが両手でパチンっと俺達の言い合いを止めようと叩いた。
「朝から喧嘩は止めなさい。朝帰りするならきちんと身なりを整えなさい。2人共、それが出来ないなら、次の朝帰りはお母さんに出迎えさせるぞ」
お父さんが静かに俺達に注意するけど、“次の”って事は朝帰りはお父さん公認という事で良いのかな?今そんな事を聞いたら、お父さんの右手でお見舞いされそうだから聞かないでおこう。
「申し訳ございません」
「ご免なさい…」
俺達は素直に謝り、35のいい(?)大人2人が怒られた朝帰りだった。
「帰ります」
俺はお父さんに頭を下げて荒木不動産屋から出て行き、愛車に乗って自宅に帰り、シャワーを浴びて身なりをリセットする。
折角一美と触れ合ったのにシャワーの水圧であの感触が流されて行き、くそ…。
シャワーを終えて脱衣所でタオルでガシガシと拭いて、タオルを腰に巻いてドタドタと階段を上がって自分の部屋に入り、クローゼットから新しい下着とスーツ、ワイシャツを取り出して着替え始め、直ぐ様部屋を出て1階のリビングに行く。
キッチンには母親がいて、俺に気づくとジロリと見てくる。
「35にもなって朝帰りなんて、恥ずかしい」
ここでも親の説教かよと思ったけど、『親は娘が幾つになっても心配するものなの!』って、一美のお母さんの言葉を思い出し、俺が悪いよな…。
「ご免」
俺がボソっと謝ると母親はぷいっと顔を背け、キッチンのコンロにあるお鍋に入っているお玉からスープを掬い、お椀に注ぎ、お箸とお椀を持ってダイニングにある机の上に置いた。
「一口だけでも飲みなさい」
「ありがと」
俺はダイニングの椅子に座ってお椀を手に持って中を見ると、味噌汁に人参と玉ねぎが入っていたのでぐびっと飲むと、出汁もきいていて美味しい。
「…美味い」
俺は小さく呟き、お箸で具材を挟んで食べれば人参の固さが丁度良い。黙々と食べていたら親父が入ってきて、対面の席に座って新聞を広げ、母親は親父の前に湯飲みを置き、ダイニングを経由して部屋を出て行った。
「佐藤の件はどうなんだ」
広がった新聞の向こうから親父の小言が聞こえる。
「明日のバイク便が来るまでが最終的な締め切りになるから、待つ事を見守る」
仁が、スポーツ部のメンバーが佐藤を待つ事を選び、それを見守ることが俺のできることで、こういう出来事はこの1回で終わってほしい。
俺は味噌汁を食べ終わって席を立ち、お椀を食洗機に入れてダイニングを経由して部屋を出て行った。
自分の部屋に戻り、バックを持って1階に戻って玄関に行き、靴を履いて自宅を出て最寄り駅に向かった。
電車に乗って中吊り広告にちらっと視線を向けると、週刊誌の中吊りには例のバレーボール選手の過去の素行等が暴露系として見出しに書かれ、よくもまぁ過去のことまで調べるな。
こういう風に書かれてしまうのは選手本人が原因だが、ずっと追いかけていた佐藤の頑張りを見守ってきたから、佐藤本人は俺達が想像しているよりもショックはデカいだろう。
俺と会えばバレーボールのことを楽しそうに話すし、時間に不規則な仕事だけど弱音はあまり吐かずにB班を纏めてくれているのを仁から聞いていたから、佐藤がどう答えをだしてくれるか…、電車が藍山駅について改札を出ると田所の姿が見えたので、俺は肩をポンっと叩いて隣に並ぶ。
「よっ」
「おはようございます」
「佐藤はどう?」
四つ葉に向かいながら佐藤の事について話す。
「原稿をビリビリに破いた日、あいつの家に行って4時間は話しをして、『1人にして』って言われましたけど、明日のバイク便の時間は伝えています」
田所はそう話すけど表情は暗く、同期でずっと一緒にスポーツ部を引っ張っているから色んな思いが駆け巡っているんだろう。俺は田所の頭にポンっと右手を置いた。
「田所が信じているなら、それを待とう」
「信じていますし、あいつが戻って来たらいっぱい宿題を出して下さい!」
「良いよ〜。きっと荒木がたっぷりと出すし、俺も佐藤にちょ~っとお話をするし」
俺が特大スマイルで言うと、田所がビクッとした表情になるけど、普通に笑っているだけなのにな。
「田所のサマーリーグ、6月号もだけど7月号は読み応えたっぷりに書いてくれるんだろ?」
「ええ。部数会議で荒木編集長が仰っていたように購買意欲を持つよう6月号と7月号はバランスも考え、7月号は必ず1番目の位置に持っていきます」
田所が自信たっぷりに“Scoperta”の事を話すので、逞しいな。四つ葉のビルに入り、階段を上がって三階で田所と別れて専務室に入った。