離れた後の恋の仕方
午後になっても目を通す資料の紙束の多さに小さく溜め息を吐きつつ、気になる箇所は資料を作った本人を専務室に呼び出して確認し、橘が秘書席でそのやり取りをパソコンで記録してもらう。
言った言わないの水掛け論を防ぐのもあるし、残して後になって見直しが出来るからだ。
「備品自体の価格が高騰していますので、別の通販会社で発注すべきではないかと三井部長が申していました。此方が総務課で取り寄せたカタログです」
総務課の木村がドサドサと俺の机の上に置き、俺は1冊のカタログを手に取ってぱらっと捲る。
「総務課で備品の発注をしてもらっているけど、毎日発注をしているの?」
「星野さんに在庫の確認をしてもらっていますが、毎日発注ではないです。ただ印刷用の紙は減りが早いので、用紙だけ半年分一括で注文してもいいのではと総務課の課長も仰ってます」
「だよねぇ。編集部なんて下書き、訂正、また印刷して繰り返し、時々赤ペンでまた訂正して印刷だから、ちまちま発注するよりいいかもな。話しを聞かせてくれて、ありがと。もう戻っていいよ」
「はい、失礼します」
木村が専務室を出て行き、俺は橘に顔を向ける。
「今の会話の記録は出来た?」
「はい」
「ありがと。次は人事との会議だっけ?」
「そうです。浅野さんが作られた中途採用の文面を確認です」
「じゃあ、行きますかぁ」
橘と一緒に専務室を出て階段を下り、1階の人事課に入って浅野と打ち合わせの席に座る。
「中途採用の文面としてですが、前回の星野さんの場合は募集が総務や事務でしたので、簡素な職務内容と、持ってるとよい資格の欄を載せていました。ファッション部の中途採用となりますと、水瀬編集長からの希望で『課題としてファッションコーデのページを制作・面接時に提出』と入れて欲しいとのことです」
「入れたい理由は水瀬から聞いている?」
「水瀬編集長は『その人のページを作る技術が分かるし、『Clover』に合っているか判断しやすい』とのことでした」
成る程ねぇ、水瀬なりにその人の持っている技術の事を考えているんだ。
「忙しい中で見せてくれてありがとう。浅野から社長に内容を確認してもらって、了承を得たら面接の日取りを抑えたうえでWebサイトに掲載だ」
「かしこまりました。良い人材の橋渡しを出来る様に進めます」
「ありがと。橘、次のスケジュールに進もうか」
「はい。この後はー…」
定時になるまで仕事をこなし、橘を上がらせて専務室には俺だけになる。
昨日はというか朝帰りしちゃったのもあったから、流石に一美を誘うのも駄目だから1人寂しく夕飯でも食べて帰るか。
その前に机の上に置いてある自分のノートパソコンの電源を入れて、検索Webサイトのページを開き、例のバレーボール選手の記事を閲覧し、記事によれば逮捕は確実で起訴も含めたらこの選手の活躍はもう見れない事が確実で、ほんと佐藤の頑張りを台無しにしてくれちゃって。
サマーリーグの公式サイトもチェックして、田所が物凄く気合いを入れて取り組んでいるのを見ているから、田所含め他のメンバー達も佐藤の二の舞いになって欲しくない。
自分の記憶を巡ってスポーツ部の取材班が其々担当している分野の情報を閲覧し、問題が無いなら良いけど、今回は仁と水野が自分で書くってことで何とか発行までいけそうだ。
いつも田所と比較されがちな水野だけど、今回は自分で書くってやる気になっていたし、ファッション部もメンズモデルを起用したり、姫川も九条ちゃんを信頼して記事を任せている。
姫川達が編集長になって大分時間が経って、その間は色んな社員が編集部に入れ替わりで来るけど、去るものは追わず、残ったメンバーが四つ葉の雑誌を作ってくれるのが嬉しい。これから中途採用で入るまだ見ぬ社員もどんな人物で四つ葉を盛り上げてくれるか、凄く楽しみだ。
俺は自分の机の引き出しから1つの紙束を取り出し、そこには俺が考えている四つ葉の今後についてで、これは俺と祐一しか知らない近い未来の四つ葉の構想の事を書いてある。
親父の進退が決まったらずっと温めている新しい雑誌の創刊の着手、人事改革として俺が目をかけている木暮、神田、浅野の抜擢、総務の木村はあと少し経験をさせてからの昇格だな。
『俺の隣で見て欲しい』ー…、その改革を俺の隣で見守って欲しいのは見合い相手でも四つ葉の女性社員じゃなくて一美で、ここで“Scoperta”を“休刊”になんてさせてたまるかよ。
仁の手腕にかかっているけれど、俺も初代編集長としてやれるサポートは自分の時間を削ってまでもする。
紙束を引き出しに戻して帰り支度をし、四つ葉を出てビルを見上げると2階の編集部に灯りがついていて、みんな遅くまで頑張ってくれて頼もしいな。
先ずは明日、仁達と佐藤の出す結論を待つだけだ。
言った言わないの水掛け論を防ぐのもあるし、残して後になって見直しが出来るからだ。
「備品自体の価格が高騰していますので、別の通販会社で発注すべきではないかと三井部長が申していました。此方が総務課で取り寄せたカタログです」
総務課の木村がドサドサと俺の机の上に置き、俺は1冊のカタログを手に取ってぱらっと捲る。
「総務課で備品の発注をしてもらっているけど、毎日発注をしているの?」
「星野さんに在庫の確認をしてもらっていますが、毎日発注ではないです。ただ印刷用の紙は減りが早いので、用紙だけ半年分一括で注文してもいいのではと総務課の課長も仰ってます」
「だよねぇ。編集部なんて下書き、訂正、また印刷して繰り返し、時々赤ペンでまた訂正して印刷だから、ちまちま発注するよりいいかもな。話しを聞かせてくれて、ありがと。もう戻っていいよ」
「はい、失礼します」
木村が専務室を出て行き、俺は橘に顔を向ける。
「今の会話の記録は出来た?」
「はい」
「ありがと。次は人事との会議だっけ?」
「そうです。浅野さんが作られた中途採用の文面を確認です」
「じゃあ、行きますかぁ」
橘と一緒に専務室を出て階段を下り、1階の人事課に入って浅野と打ち合わせの席に座る。
「中途採用の文面としてですが、前回の星野さんの場合は募集が総務や事務でしたので、簡素な職務内容と、持ってるとよい資格の欄を載せていました。ファッション部の中途採用となりますと、水瀬編集長からの希望で『課題としてファッションコーデのページを制作・面接時に提出』と入れて欲しいとのことです」
「入れたい理由は水瀬から聞いている?」
「水瀬編集長は『その人のページを作る技術が分かるし、『Clover』に合っているか判断しやすい』とのことでした」
成る程ねぇ、水瀬なりにその人の持っている技術の事を考えているんだ。
「忙しい中で見せてくれてありがとう。浅野から社長に内容を確認してもらって、了承を得たら面接の日取りを抑えたうえでWebサイトに掲載だ」
「かしこまりました。良い人材の橋渡しを出来る様に進めます」
「ありがと。橘、次のスケジュールに進もうか」
「はい。この後はー…」
定時になるまで仕事をこなし、橘を上がらせて専務室には俺だけになる。
昨日はというか朝帰りしちゃったのもあったから、流石に一美を誘うのも駄目だから1人寂しく夕飯でも食べて帰るか。
その前に机の上に置いてある自分のノートパソコンの電源を入れて、検索Webサイトのページを開き、例のバレーボール選手の記事を閲覧し、記事によれば逮捕は確実で起訴も含めたらこの選手の活躍はもう見れない事が確実で、ほんと佐藤の頑張りを台無しにしてくれちゃって。
サマーリーグの公式サイトもチェックして、田所が物凄く気合いを入れて取り組んでいるのを見ているから、田所含め他のメンバー達も佐藤の二の舞いになって欲しくない。
自分の記憶を巡ってスポーツ部の取材班が其々担当している分野の情報を閲覧し、問題が無いなら良いけど、今回は仁と水野が自分で書くってことで何とか発行までいけそうだ。
いつも田所と比較されがちな水野だけど、今回は自分で書くってやる気になっていたし、ファッション部もメンズモデルを起用したり、姫川も九条ちゃんを信頼して記事を任せている。
姫川達が編集長になって大分時間が経って、その間は色んな社員が編集部に入れ替わりで来るけど、去るものは追わず、残ったメンバーが四つ葉の雑誌を作ってくれるのが嬉しい。これから中途採用で入るまだ見ぬ社員もどんな人物で四つ葉を盛り上げてくれるか、凄く楽しみだ。
俺は自分の机の引き出しから1つの紙束を取り出し、そこには俺が考えている四つ葉の今後についてで、これは俺と祐一しか知らない近い未来の四つ葉の構想の事を書いてある。
親父の進退が決まったらずっと温めている新しい雑誌の創刊の着手、人事改革として俺が目をかけている木暮、神田、浅野の抜擢、総務の木村はあと少し経験をさせてからの昇格だな。
『俺の隣で見て欲しい』ー…、その改革を俺の隣で見守って欲しいのは見合い相手でも四つ葉の女性社員じゃなくて一美で、ここで“Scoperta”を“休刊”になんてさせてたまるかよ。
仁の手腕にかかっているけれど、俺も初代編集長としてやれるサポートは自分の時間を削ってまでもする。
紙束を引き出しに戻して帰り支度をし、四つ葉を出てビルを見上げると2階の編集部に灯りがついていて、みんな遅くまで頑張ってくれて頼もしいな。
先ずは明日、仁達と佐藤の出す結論を待つだけだ。