偽りのお見合いだとバレたのに、溺愛されています
「え…?」
「明日は外出しよう。
人の家って緊張するでしょ。
家に帰って少し休んで。明日迎えにいくから」
ーまだ夜の19時なのに。
いつも榊さんと外食するときはもっと遅い。
私のことを気遣ってくれたのは有り難かったが、
私はもっといたいのに、榊さんはそうじゃないのかな。
何も言わずに俯いた私に、
「大丈夫?」と榊さんが心配そうにみてきた。
「…まだ一緒にいたいです」
今日頭の中で色々考えたが、
考えても伝わらない。
恥ずかしいけど、頑張って声に出した。
榊さんは少し驚いて手で顔を隠した。
少し顔が赤くなっているようにもみえたが、
すぐ隠したので良く見えなかった。
「困ったな…」
おそらく私に聞こえないくらい小声で呟いたつもりだったと思うが、聞こえてしまった。
ー迷惑だったかな。
榊さんが帰って欲しいだけだったのかも。疲れているかもしれないし。
「すみません。困らせてしまって」
私は恥ずかしくなり榊さんに背を向けて、帰りの支度を始めた。
「いや、困ってなんかないよ」
私が榊さんの独り言を聞こえたのに気付いていないのかもしれない。
必死に弁解してくれたが、
榊さんの方を向くと泣いてしまいそうだった。
「大丈夫です」
私は榊さんの方を見ないようにして、玄関に早歩きで向かった。
「ま、待って。
俺も車の準備するから」
「大丈夫です。歩いて帰れますよ」
「歩いてなんて帰らせられないよ」
ーまだ19時だから暗くないし平気なのに…
榊さんに強めに言われて、
何も言えなかった。
「ごめん、そんな顔をさせたい訳じゃないんだ…」
私の顔をみて、
榊さんが申し訳なさそうにしている。
ーただ帰りたくなくてごねて、
困らせるなんて…
子供みたい。
「すみません」
「いや、楓さんは悪くないよ。
カッコ悪いから言いたくなかったんだけど、俺がこのままだと限界そうで」
「一緒にいるとしんどいってことですか?」