偽りのお見合いだとバレたのに、溺愛されています

ーこんなに長時間一緒にいるとしんどくて、もう限界ってことかな。

榊さんを困らせたくないのに、
気付いたら涙が流れていた。

「ち、違うよ」

榊さんが焦って涙を拭いてくれて、
抱き締めてくれた。

私は抱きしめ返していいのかわらかず、
早く機嫌を直して、この場から立ち去りたかった。

「楓に触れたくなって、
それを我慢できなくて限界ってこと…」

「え?」

思わず榊さんの顔を見上げたが、
抱き締められたままで、
顔を確認することができなかった。

気付かなかったが、
抱き締められて、榊さんの心臓の音が聞こえてきたが、
私と一緒ですごく心臓がドキドキしているようだった。


「でも、楓はまだそんなつもりないでしょ?
今日もたまに暗い顔をしてたし…、ちゃんと楓の気持ちの準備ができるまで待つからね」

榊さんは少し離れて、
髪を撫でて宥めてくれた。

「だから今日は送るよ。
俺だって楓とまだ一緒にいたいから。
明日また楽しみにしてる」

「…嫌です」

「えっ…さっきの話聞いてたかな?」

「わ、私準備できてます!」

榊さんは驚いて何も言わない。

「今日暗かったのは、
夜ご飯が口に合うかなとか、
榊さんはずっと余裕だな、とかそんなこと考えていたんです。

そ、そんなこともちゃんと考えてました」

私は今日ずっと言いたかったことを全て言い切った。

自分の心の中なんてわからないんだから、恥ずかしいけど私も榊さんのように全部話した。

「本当にいいの?」

榊さんはさっきまでの恥ずかしそうな表情はなく、すこし妖艶な表情をして、近付いてきた。

いつもならドキドキしすぎて離れてしまいたくなったが、
私は離れず「はい!」と力強く返事をした。

榊さんは想像と違う返事だったのか、また驚いた顔をして、
「今日帰してあげられなくなるよ?」
と尋ねてきた。

少し試されている気もする。

「はい!」

また力強く返事をしたら、
榊さんが深く息を吸った。

「わかった…
じゃあ、また上がってくれるかな?
とりあえず、お風呂の準備するね」

榊さんはお風呂場に向かっていった。

私はまたリビングに戻り、
ドキドキしながら榊さんを待った。


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