偽りのお見合いだとバレたのに、溺愛されています

「あの、榊さんてモテますよね?」

母が黙り込んだ代わりに、
今まで何も喋らなかった正樹が話し始めた。

「モテないよ」

榊さんがにこやかに答える。

ー嘘だ。
前にモテるのがめんどくさくてお見合いを受けたと言っていたはず。

でも、恋人と家族に言われたらそう答えるしかないよな…

正樹はやはり榊さんの発言に納得していないようだった。

「なんで姉なんですか?」

多分ずっと疑問に思っていたことだろう。

なんで選び放題の榊さんが私を選んだのか…疑問に思うのは普通だと思う。

ーでも、答えにくい質問を…
榊さんに申し訳ない。

こっそり隣の榊さんの顔を覗き込むと、想像と違ってにこやかな表情だった。

「楓さんを好きな理由は沢山あるのですが、まず笑顔ですね。
とても素敵な笑顔に惹き付けられました。
次にやっぱり優しいところです。家族思いでもあり、友達思いなところが素敵だなと思って。
他にも…」

「あ、あの榊さんもう充分わかりました」

すごく饒舌に私の好きなところを話すので、恥ずかしくなって必死に止めた。

榊さんは「まだまだあるのに…」と少し不服そうだった。

「なんだ、本当に姉ちゃんのこと好きなんだ…」

正樹が少し呆気をとられたように、
でも先ほどの疑いの目は無くなったようだった。

「すみません、姉が騙されてるんじゃないかと思って…」

「いやいや、大丈夫だよ。
お姉さん思いなんだね。」

「ありがとうございます。
姉ちゃん男運なくて、昔付き合っていた人もあんま良い奴じゃなかったので…」

「ちょっと、正樹!」

ー余計なことを言わないで!
必死に止めたが、榊さんに聞こえたはず。

榊さんを見ると、
一瞬不機嫌になった気がしたが、
いつもの微笑みに戻っていた。

大丈夫かな?
気にしてないのかな?

「とりあえず、楓が愛されているようで良かったわ。
結婚ももちろん賛成だからね。
何があっても二人の味方だから、いつでも頼ってね。」

「ありがとうございます。
早速なのですが、この婚姻届の証人の欄にご記入頂いてもいいですか?」

「もちろん!すぐ書くわ」

婚姻届に記入してもらって、
私たちは実家をあとにした。

榊さんが帰る頃には、
母はまた目をキラキラにし、
正樹も嬉しそうにしてくれていた。

「またいつでも来てね。」

「ありがとうございます。また伺います。
今度はお義母さんの肌に合いそうな化粧品をお持ちしますね。」

「まあ、嬉しいわ」

バッチリ母の気持ちを掴んでいた。



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