お試し婚のはずが、いつの間にか溺愛されています!~二度も婚約破棄された外科医は受付事務員に愛を捧ぐ~
 今日の自分の昼休みは、十四時からだった。
 お弁当を食べる前に城高山先生の病院専用のスマホに電話をすると、すぐに出た。
 ほとんど使用しない一番奥手にある会議室で会うことにしたので、私は急いで向かうと城高山先生は先に着いていた。
「今日も忙しそうだな」
「月曜ですから。午前中は特に忙しかったですよ」
 そんな何気ない会話を重ねるうちに、私の中の緊張は、少しずつほどけていく。

「……ここなら、誰も来ません。話ってなんですか?」
 私がそう言うと、城高山先生は周囲を一度確認してから、静かに頷いた。

「助かる。君の立場を悪くしたくない」
 その言葉に、私は少しだけ肩の力を抜く。
 医師と受付事務――
 公になれば、無用な噂が立つのは目に見えていた。
 二人は、壁際に並んで立ち、距離を保ったまま話す。
 声も自然と小さくなる。

「先生が頻繁に受付に来ると、ものすごく目立ちますから」
「分かっている。だから、こうして時間をもらうのも、本当は迷っていた」
 それでも、城高山先生は私の元へと足を運ぶのをやめなかった。
 仕事の話、病院の雑談、他愛ない会話。
 短時間で切り上げ、深追いはしない。
 その慎重さが、かえって私の警戒心を解いていった。

「……前より、話しやすくなりました」
 ぽつりと言うと、城高山先生は小さく微笑む。
「それなら良かった。なら、もう一度だけ、婚約を前提とした交際の話をしてもいいか」
 私は一瞬迷い、周囲を見渡してから頷く。
 城高山先生は声を落とし、真剣な表情になる。

「勝浦さんの元へ通えば通うほど、もっと会いたくなってしまう。これが、本気で好きだという証しなんだろうな」
「……」
 城高山先生にそんな風に言われて、嫌がる人は居ないと思う。ただ、私は雲の上の存在だと思って、日々過ごしてきたから……好きなのかどうか分からない。
< 17 / 62 >

この作品をシェア

pagetop