お試し婚のはずが、いつの間にか溺愛されています!~二度も婚約破棄された外科医は受付事務員に愛を捧ぐ~
「やはり、忙しいですか……」
片山さんがしょんぼりした顔をする。
「確認して参りますので、お時間をいただけますでしょうか」
「はい、待ってます」
話によると片山さんは明後日には引っ越しをするそうで、しばらくこの付近には帰ってこないそうだ。そのため、引っ越し前に先生にお礼を言いたくて訪ねてきたらしい。
外科にも出向いて確認をしたが、緊急な手術や処置は入っていないそうだ。手術中や処置中以外なら、いつもすぐに電話に出てくれるのに折り返しもないなんて……!
どうしたんだろう? トラブルでもあったのかな? と城高山先生を探して院内を歩き回った。
すると、人気のない廊下の隅で男性が言い争っている声が聞こえた。
「また、先方から縁談の断りが入ったぞ」
柱の影からこっそり覗いて見ると、言い争っている人物は城高山先生と彼の父である院長だった。低くて怒りを含んだ院長の声が、廊下に響いている。
「そうみたいですね。こちらの非はなかったと自分では思っていますが……」
それに答える城高山先生の声は抑えられていて、感情を押し殺しているように聞こえる。
「本当に馬鹿なんだな、お前は!」
院長は感情的になっているのか、吐き捨てるように言った。
「お前に非があるから断られた。それが理由だろう?」
その言葉に、私は思わず息を呑んだ。
柱の影に半身を隠したまま、心臓の鼓動が早くなる。