依依恋恋

自然教室

入学式が終わり、1ヶ月ほど経った。クラスのなかでもそれぞれが友達を作って話しているなか、私は小学校のころから仲が良かった船井良菜(ふないらな)、羽瀬環奈(はせかんな)とともに過ごしていた。新しい友達を作るのが嫌なわけではないけど、別に作らなくてもいいかもと思い今に至る。

「良菜〜、マジで今日の数学何言われてるか分からんかった笑」
「うちも分かってない笑笑」
「なんで苦手な教科に限って当たると〜」

授業の合間の休み時間。良菜にすぐ駆け寄って話しかける。担任の蒲池先生は数学担当の先生で、よく私の事を当ててくる。発表が嫌なわけではないけれど、内容が頭に入ってないから、発表が出来ない。小学校の算数で止まってる私は中学校の内容なんて全く分からない。

教室では、男子は男子のグループ、女子は女子のグループで話してたり、トイレに行ったりと自由に過ごしている。

「花田さん居るー?」

廊下から私を呼ぶ声がする。保体担当の植田先生だ。私はクラスの保体委員長をしている。学級委員長をしたかったのだが、立候補者が多く、ジャンケンをしたのだけれど、負けてしまった。高校に行くことを目的に成績を良くしておかないとだから、とりあえず保体の委員長をした。

「はい、どうされましたか?」

私は、植田先生のもとに行き、話をする。

「放課後の体育大会の話し合いは4組でするから、他のクラスの委員にも伝えておいてくれん?」
「分かりました。4組で行うだけ伝えておきますね」
「ありがと、じゃあ頼んどきます」

先生からの要件を聞き、隣のクラスの委員に伝えに行く。私1人で行ってもいいけど、気が乗らなかったので、同じ委員の山田大河(やまだたいが)君にも頼むことにした。

「山田くん、放課後の体育大会の話し合いが4組で行うって他のクラスにも伝えてくれん?」
「りょー」

仲の良い友達と話していた山田くんはとりあえず返事をしてくれた。山田くんは同じ委員ということもあって席が隣。あんまり話すのが得意ではないから、必要以上は話したことがない。ただ、話してて優しいということは分かるから、仲良くさせてもらってる。

5時間目の授業が終わり、放課後。保体委員の話し合い。
体育大会の話し合いだったはずが、クラスでの授業態度の反省会になってしまった。私のクラスは比較的授業には真面目に参加してくれているということもあり、居残りになることはなかった。

「明日から、1年生は自然教室やけん保体委員の仕事は2年生、3年生がサポートするように、以上」

保体委員会の担当の先生の話が終わり、今日の会議は終わり。明日から自分たちの仕事を先輩たちが賄ってくれるから、私は挨拶だけして教室を出た。

「花田〜、一緒帰ろ」

誘ってくれたのは山田くん。山田くんは住んでるのが私の家の前のマンションだから、よく一緒に帰っている。

「いいよー」

靴箱で靴を履き替えながら、山田くんの背中を追いかける。離れていたら分からないけど、山田くんは身長が高い。話すのに見上げないと目が合わない。

他愛もない話をしながら、帰っているといつもの30分が凄く短く感じる。友達と帰ることが少ないから、余計嬉しかった。

家の前の信号を渡ると山田くんとはお別れ。この瞬間が最近は苦痛に感じてしまう。

「じゃあね、山田くん。明日からの自然教室頑張ろうね」
「もちろん!じゃあな、花田」

山田くんとお別れして、自分の家を目指して歩く。明日からは自然教室に行く。県外の少年自然の家に行くらしい。荷物は事前確認があったから、今日持って行った。明日は水筒とか手荷物が必要なだけ。

家に入って、お風呂に入ったり諸々してから私は布団に入った。弟たちには明日から自然教室だって伝えている。1番下の弟は寂しいと言って聞かなかったので、久しぶりに一緒に寝た。

荷物を持って、玄関の鍵を閉める。弟たちはまだ寝てるから静かに家を出た。いつもより早く起きたから眠たい気がする。ちらほら、同学年が見えてきた。私たち1年生は自然教室でバスに乗るから、朝がいつもより早い。私に関しては、保体班の班長ということもあり、みんなより少しだけ早めに行く必要があった。

学校の正門をくぐり、教室に必要な名簿を取りにいく。班長としての仕事もあるけれど、1人の生徒としての仕事もある。自然教室は楽しみだけど、大変なんだろうなと思いながら集合場所の体育館に向かう。

8時になると、全てのクラスのメンバーが揃っていた。健康観察や、最後の持ち物チェックをしてバスに乗る。私は健康観察簿を保健室に持っていく。

バスが学校の校庭に到着した。班ごとに乗車していく。班長がそれぞれの班のメンバーを確認していく。私も自分の班のメンバーが揃っているかを確認して、担任に報告する。報告が終わるとあとは出発を待つだけ。

バスが動き出すと同時にクラスのみんなはそれぞれの友達と話し始めた。私は昨日、弟たちの夜ご飯を作ったりして夜寝ることが出来なかった。バスに揺られながら、私はそっと目を閉じた。

次に目を覚ましたのは宿泊する少年自然の家だった。寝ている人もいれば、話している人もいる。ほんとに自由だなって思ってしまった。

バスが停車し、ぞろぞろと降りていく。運転手に挨拶をして、自分たちの荷物を持ち講堂に集まる。これから、少年自然の家の人から施設の過ごし方や、ベットメイキングのやり方を説明される。

説明は30分ほどで終わった。それぞれの部屋に行き、荷物を置く。このままゆっくりしたい気持ちもあったが、次の集合時間が迫っていた。私は同じ部屋の人に声をかける。

「ちょっと急がんと、間に合わないよ」
「っち」

私なりに言葉を選んだつもりだった。舌打ちしたのは同じクラスの古村雫(こむらしずく)ちゃん。何かケンカしたわけでもないけど、私の行動が気に触れるみたい。入学してから話しかけているが、全然返してくれない。一方的に嫌われてしまっている。私も好きではないけど、舌打ちされると流石に悲しい。

集合時間に遅れることなく私たち、保体班は集合することが出来た。私たちは出来たけれど、他の班は出来なかった。人間だから失敗することもあると思うけれど、流石に遅れて来て、友達と話してるはキレちゃう。

先生からのお叱りが終わり、これから体育大会に向けて合同練習をしていく。種目の大縄と全体行動の練習の繰り返し。体力の問題よりも精神的にキツくなる。

練習が終わり、施設のご飯を食べていく。食欲が無いわけではないけど、この後行われる班長会議が恐怖で上手く喉を通らなかった。怒られるのは分かりきっている。初日から遅れたりしているわけだから、流石に怒られないわけがない。

食事を終え、入浴まで済ませてから班長会議の場所に向かう。怒られることはみんな分かっていることだから、空気が重い。

「班長が気を引き締めておかないと、班員は何にもしない、それでおいてクラスがまとまることはありません。明日からのそれぞれの行動に期待します」

学年主任の先生からの一言で今日の会議は終わった。頷く部分が多くてどうしようもない。自分の班のことで精一杯なのに、クラスを見ろとまで言われたら壊れてしまうなんて思いながら自分の就寝する部屋に戻る。

部屋に入ると中が凄く賑やかだった。まあ、楽しんでいるんだろうなって思っていた。私は離れた場所で今日の反省点のメモをしていると、鳴るはずのない音が聞こえた。古村さんがスマホを持ってきていたのだ。持ってくるのは禁止とあれだけ言われていたのに、でも私は注意出来なかった。私も間違えてトランプを持って来てしまっていたからだ。注意するとこは諦めて、私は寝る準備をした。

私の寝る部屋には静かな女の子もいた。寝る前には流石にやめてくれるだろうと期待していたが、音が止まることはなかった。

自然教室の2日目。私は左目に違和感を覚えながら起床した。起床すると同時に友達から

「青葉、目がめっちゃ腫れてるけど大丈夫…?」

何となく分かってはいたけど、やっぱり腫れていた。持参していた手鏡を取り出し、自分の目で確認する。虫に噛まれたような腫れ方だった。多分、ブヨだな。私は山によく行っていたから刺されたことがある。一応、保険の先生に報告をしておいた。

今日は合同練習ではなく、カッター教室だった。20人ずつぐらいで協力してカッターに乗る。

カッター教室が終わって宿泊施設に帰る頃には夕方になっていた。目の所の腫れは治まるどころか、どんどん酷くなっていた。目を開けることが出来なくなってきたので保険の先生に再度、報告をした。

「流石に腫れすぎてるから、病院行こう。それに、蜂かもしれないから」

酷くなっていく、私の顔を見ながら先生は慌てている。

「先生、蜂だったら私とっくに死んでます」

正論で返された先生はそれから病院に着くまでは話してくれなかった。カッター教室から帰ってきて、すぐに病院に向かった。私、1人が噛まれていたのではなく、数人いたみたい。そのなかでも酷い私を含めた3人が病院に行った。一緒に病院に行った子は2人とも同じ小学校出身だから、会話が盛り上がった。

病院に行って、診断されたのは虫刺されだった。まあ、そうだろうね。処方された目薬と塗り薬を使う。

宿泊施設に帰った私たちは、食事も入浴も終わっていなかったので、みんなに遅れて食事と入浴をした。

入浴が終わると担任の蒲池先生が待っていた。

「大丈夫か?」
「先生からは虫刺されと言われたので、痛みはないので多分大丈夫だと思います」

この時、私は古村さんがスマホを持ってきていることを思い出した。先生に伝えて嫌われるよりも、寝れないことの方が苦痛だった。

「先生、あのですね。同じ部屋の古村さんがスマホを持ってきていて、昨日も夜中まで使用してて。音ゲーをしてるみたいで、なかなか寝れなくて困ってるんですけど…」
「そーなん!!教えてくれてありがとう。明日対応するね」
「ありがとうございます」

明日対応されても、明日帰る日だから意味ないなって思ってしまったけれど、言ったのは私だ。先生にお礼を伝え、私は部屋に戻った。

昨日、遅かったせいで朝起きるのが辛かった。朝から古村さんは先生からの呼び出しを受けている。まあ、私が伝えたとは話してないから、分からないと思うけど。食事を済ませ、荷物の片付けをしていると呼ばれるはずないのに、先生に呼ばれた。

「花田さん、ちょっといい?」

何かしでかしたこともなかったから、あまり心配していなかった。学年主任の先生に呼び出され、個室に入る。

「古村さんのことありがとう。でさ、花田さんも持ってきたらダメな物を持ってるよね?」

先生からの謎の質問に私は驚いてしまった。確かにトランプを持ってきている。それは確かだ。でも、誰かに見せたわけでもないのに、なぜ?頭のなかでフル回転している。まあ、先生に話したのは古村だろうな。私が班長会議で居ない間に荷物を漁ったんだろう。

「はい、持ってますよ。でも、古村さんのように迷惑をかけているわけでもなく、直し込んでますけど?」
「持っていることに変わりはないので持ってきてください」

あーあ。没収だな。これまでの経験がそう悟っていた。別に没収されても私はあんまり困らないけど。

先生と話し終わり、最後に講堂に向かう。この後は施設の人に感謝の言葉を伝えて、荷物を持ってバスに乗る。長いようで短い自然教室だった。

講堂に行くと私は真っ先に山田くんのもとに向かった。途中で居なくなった上に、班長会議まで参加してもらって。お礼を言わないとと思っていたのだ。

「山田くん、昨日はありがとう。急にごめんね」
「俺はいいけど、大丈夫?」
「うん、大丈夫。虫刺されだったみたいだから」

まさか、心配してくれるなんて思っていなかったから、嬉しかった。

施設の人に感謝の言葉を伝え、バスに乗る。これから、学校に向けて帰る。私は行きと同じように眠りについた。

学校に到着すると、父が迎えに来てくれていた。目の腫れが凄いということで、迎えを呼んだらしい。まあ、私にはあんまり関係ないけど…。

「お迎えありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそご迷惑をおかけしました」

大人の関係って、難しくて冷たいなって思った。担任の先生と父が話しているなか、私は車に乗り込んで待つ。没収されたトランプは親が迎えにくるということもあり、返してもらうことが出来た。家に帰ってくると疲れがどっと出てしまった。
< 2 / 3 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop