地元なじみ。
*平塚薫の人間観察日記*受験期の憂鬱
「ひなた!待てって!」

俺、平塚薫は走っている。
休憩室から出て行ったひなたの背中を追いかけるためだ。

「……なに」
「少しでいいから、時間くれ。話そう」

塾の外の道路沿いで立ち止まる。
車道と歩道の仕切りになっているポールのようなものに腰かけながらひなたと向かい合う。

「さっきの話だけど……」
「そのままだよ。勉強しないとヤバい。けどみんなといるとまあ……楽しくて勉強が疎かになる。だから少し1人で集中する。それだけ」

照れ屋であまり自分のことを話さないひなたの口から、俺らといると楽しいって言葉が出て、こんな時なのに少し嬉しくなっている。
……いや、このみんなっていうのは俺らではなく、藤沢だけが該当する可能性もあるか。

「たまには、みんなで一緒もいいんじゃない?お互い刺激もらえたりさ」
「いや……一緒にいると、戻れなくなる」
「……それは、藤沢のことを言ってる?」
「……」

今までなら否定していたのに。
黙り込むのがもう、肯定を示しているようなものだ。

「でもひなた、ずっとそうするの?」
「え?」
「受験が終わって高校生になったって、テストはあるし、何なら大学受験だって。ずっと……藤沢とこのままいくの?」
「それは……」
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