地元なじみ。
「そいえば、茅ヶ崎にも言うんだよね?」
「うん、そうしたいけど……?」
「いや……あの人……三島の彼女ってだけで怖いのに」
「なんでよ」
「藤沢を傷つけたからか、俺への視線も口調も厳しいんだよ。完全敵認定されてる」
「あはは」
梓ちゃんらしい態度に思わず笑ってしまう。
そんな話をしながら、私たちは今、元来た道を歩いている。
帰りがたかったけれど、さすがに時間も時間なので帰ることにした。
けれど、こうする前にもまた押し問答があり……
というのも、さっきまでの場所のすぐ先に早川くんが乗るバス停があるのだ。
それなのに一旦私の家の方まで来て、また同じ道を通ってバス停まで戻るなんて非効率にも程があると思い、あの場での解散を提案した。
私は自転車に乗ればすぐなのだし。
けれど、早川くんは送るの一点張り。
早々にケンカはしたくないとお互い思ったようで、さっきの交差点まで一緒にいるということで落ち着いた。
確かにもう少し長く一緒に居られて嬉しいけれど、無理はして欲しくないし、早川くんばかりに背負って欲しくない。
ずっと一緒にいるために、こういう気持ちも次から伝えたい。
「本当にここでいいの?」
楽しい時間はあっという間。
さっきの交差点に着いてしまった。
「うん。ここまで来てくれてありがとう」
「気をつけてよ」
「早川くんもね」
寂しいけれど、私たちには明日以降もずっとある。
そんな嬉しさを抱え、自転車にまたがる。
「じゃ……」
「あのさ、多分誤解してるだろうけど……」
「?」
「心配なのはもちろんだけど、少しでも一緒にいたいって思いが……あり……ました……」
言いながら照れたのか、早川くんの声がだんだん声が小さくなっていった。
本当に本当に愛おしい。
「うん、私もだよ。ありがとう」
「とりあえず……連絡します」
「無理しないでね、苦手だろうってわかってるから」
私に見透かされたのが悔しいのか、照れながらも少し不満気な顔をしている。
「振り返らないでね、自転車危ないから」
「あっ、そうだよね」
「姿が見えなくなるまで見張ってるから」
「え、早川くんもバス停向かってよ」
「いいから」
名残惜しいけれど、顔を見てじゃあねと言って今度こそペダルを漕ぐ。
ものすごく後ろが気になるけれど、振り返らない。
この先いつでも会えるんだ。
いつもより長い距離に感じた後、早川くんからは見えなくなる角を曲がった。
いつもの一本道。
違うのは、早川くんの彼女になれたこと。
火照った頬で風を受けながら、頭上には星空が輝いていた。