地元なじみ。
「え」
「部活の後だって疲れてようが会いたいし。藤沢が塾の日だって、会えるなら終わるの全然待ってられる。引かれるかもしれないけど……正直全然足りない」
私も……と言いかけたところで、早川くんの言葉が続く。
「なのに……俺は藤沢に会えないのに、林は塾帰り一緒にいるし。しょうがないし分かってるけど。今日だって……」
「今日?」
「これも俺のことを考えてくれたのは分かってるけど……俺と付き合ってるの隠すのに林と2人でいてウワサになってるのは……やっぱ面白くなくて」
早川くんは膝に置いた肘に向かって、下向きに伏せている。
そのため表情は見えないけれど、悩んで苦しんで伝えてくれていることはよく分かる。
そうやって伝えてくれた早川くんの本音。
そんな想いをさせてしまっていたことに心がぎゅっとなる。
私もきちんと受け止めて、謝って。そして、伝えたい。
「早川くん……ごめんね」
「あ、いや!藤沢を責めてるわけじゃ」
早川くんは慌てて顔を上げて、私の方を見る。
「うん、分かってる。けど、他の人といるのを見て嫌な気持ちになるのは、私もよく分かるから」
「え?」
「私も塾帰り駅で見かけてね。さっきのさくらちゃんと一緒にいて声かけられなくて。私が勝手にひよっちゃっただけなんだけど」
「え、別にさく……」
「私だってずっと、もっと会いたいって思ってた。部活後も塾の後も。遠慮しちゃったのも同じ」
言いながら泣きそうになってしまう。
泣いちゃダメだと言い聞かせるようにぐっとこらえ、努めて冷静に話す。
「付き合ってることだって言いたかったよ、でも早川くんの学校で勝手に言っていいのかなって迷っちゃって。さっきのさくらちゃんにだって……私が彼女だって言いたかった」
「藤沢……」
「わ、私だって……名前で呼び合いたいのに……さくらちゃんのことは名前なのに、私は藤沢で」
「え、待って」
「お揃いだって、私だってしたいよ」
「ちょっと待って」
「今日だって……あまり来てほしそうじゃないし。クリスマスだって全然そんな話にならないし……」
ダメだ、止まらない。
分かってる、全部話せば解決することだって。
付き合ってること言っていい?って聞けばよかっただけだし、名前で呼んでって言えばいい。私だって呼べばいい。
お揃いだってクリスマスだって……全部、話せばよかっただけのことだったんだ。
こんな八つ当たりみたいなこと言ってしまう自分が嫌だ。
恥ずかしくて、怖くて、早川くんの顔を見ることが出来ない。
この間たった数秒なのかもしれないけれど、沈黙が怖くて、何か話さないとって焦ってしまう。
「わ、わた……」
「待って。朱莉」
気づけば、早川くんに抱きしめられていた。