地元なじみ。
さらに2週間後――塾の国語の授業。
「はい、そこまで!隣と交換して丸付けな~。あっ、今日でこの席最後だからな、次回席替えするぞ~」
塾に入って1カ月。次は初めての席替えらしい。
5年生クラスは20人弱。きっと隣の席は早川くんではない人になるのだろう。
最後か……やっと緊張感がほぐれてきたのにな。
交換した早川くんの解答用紙を丸付けしながら、そんなことを少しだけ思った。
未だにちゃんとした会話はほとんどないけれど、挨拶をしたり、テストを交換する時に「ありがとう」くらいのやり取りはするようになっていた。
あ、100点……しかも字が前よりきれいになってる。
点数の隣にそっと、小さな花丸を付けて早川くんに戻した。
なんでかはわからないけれど、書きたくなったから。
「ふっ……何これ」
それを見た早川くんが笑っている。
ちょっと恥ずかしくなりながら私は答えた。
「字、きれいだなって。あと……今までの感謝を込めて!」
「字は、そっちがきれいだったから。俺もちゃんと書こうと思って」
「わ、私……?」
早川くんは少し私の席の方に体を寄せて、私の手元にある解答用紙に何かを書き始めた。
頭が影になっていて、何を書いているのかはまだ見えない。
書き終わったみたいで、早川くんが元の位置に戻った。
手元に視線を落とすと、私の解答用紙にも大きな花丸が書いてある。
いびつで勢いのある、なんとなくだけど男の子が書いた花丸。
「まぁ、おんなじ理由」
字がきれいってこと?感謝を込めてってこと?
どっちなのかわからないけれど、なんだか嬉しくて、私はそのいびつな花丸をジーっと見つめる。
「とか言って、またすぐ隣になるかもよ」
早川くんがちょびっとだけ意地悪そうに、ニヤリと笑った。
その顔がなんだかすごく印象に残った。